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有頂天。
その時の彼女。
運動神経ゼロな花は、ぴょんぴょん、しかし低く、何度もおかしな格好で飛び跳ねた。
悪徳のプリンス。
彼女にとって。
ほんとは純粋な、美しい男の人。
そうに決まってるのに、ペンネームは矢作川珍保。
もう。
たまらない。
わたし、不感症だし、不妊症だし、男の人きらい。
いや、めんどくさいんだ。
だけど、珍保先生。
あのひとだけは、違うんだ。
苦しいんだと思う。
無理して軽薄で、わざわざタブーに挑む作風で、売れないで居るんだ。
先生の顔も知らない。
だけど、わたしのお部屋、先生のポスターが天井にまで貼りつくされてるんだ。
厨二くんが立花孝のポスター貼るのとは、訳が違う。
先生なしには生きていけない。
そんな先生、なんと、わたしの先生を真似た作品にファンレターくれたんだ。
先生を知ったのは、とある文学賞で佳作だった「怪盗甘味と名探偵塩田」。
ショーゲキ的だったわ。
受賞作より、1万倍面白いのに。
世間は意地悪だよ。
いつか、正当な評価を得るその日まで、わたし、ひとりきりだって応援するんだ。
だから、先生の作品は全部読んだ。
しかも、わたしと繋がる為に、わざわざ3作も書き下ろしてくれたんだよ。
ありがたきしあわせ。
わたし、先生のお嫁さんになれるかな?
あ、もう、居るんだよね。
まみちゃんって、素敵な素敵な奥さんが。
離婚したって離れない、超純愛なふたり。
わたし、そんなとこも、大好きなんだ。
あ、お返事。
先生の「黒猫ヤマトは死んだのさ」に、早速ファンレター送っちゃお。






