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 彼女は美しい。

 白くて、きっと柔らかいだろう。

 矢作川珍保は、彼女への欲情を抑え切れなかった。

 仮にも師弟。

 みたいなもの。

 いやいや、作家なんて有名無実。

 ほとんど自称。

 彼女以外に彼の駄作を楽しみにしてる読者など居るんだろうか?

 けれども珍保は幸せだった。

 深夜のアルバイトで生計を立て、その合間合間に少しずつ筆を進める。

 だからか、彼の作風は軽快ではあるかも知れない。

 内容なんて、無いようなもの。

 ペンネームからも察せられよう。

 そんな駄洒落めいた、くだらない短編を書き散らす。

 あちこちアルバイトする中での人間観察。

 その表層を落とし込むのが十八番。

 ミステリーはお手の物。

 深遠なテーマなどとはもとより無縁だから、いつしか中・長編の推理小説を得意とする様になり、毎年江戸川乱歩賞に応募しては選に漏れている。

 今年もダメだった。

 そんなある日、自信を付ける為に時々覗いていたフリー執筆サイトで彼女の作品に出会った。

「この子誰の子?」

 作者は高嶺花。

 それは、不妊症、不感症に悩む彼女の、それでも明るく真っ直ぐな、生き生きとした筆致で綴られた短いミステリー。

 その悩み故にたくさんの男達と関係を重ね、するはずのない妊娠を巡る、シリアスでコミカルな騒動が、出産から20年の時を経て娘が完璧な主人公のコピーに育つに至り、なんとそれが単為生殖であり、主人公と娘は人魚の姿に戻って海に帰っていくと云う結末を迎える。

 深い感銘を受けた珍保は自分もそのサイトに登録し、二、三の作品を急いで執筆した後彼女にファンレターでアプローチした。

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