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第一の計画

 やっぱり推理小説家としては、それらしいペンネームが必要であろう。

 江戸川乱歩の由来を、僕はもちろん知らない。

 彼の作品は、テレビドラマでしか見たことないから。

 あとは、松本清張とかかな。

 杉本濁縮とか、うーん、パッとしない。

 ダッシュク、って読みは良いけど。

 檜枝汚垂。

 ひのえだおたる。

 悪くないけど、良くもないな。

 だいいち清張さんは、関係ないや。

 やっぱり僕らしく、珍保。

 木曽川珍保。

 いや、矢作川源流が近いんだから、矢作川珍保。

 うん。

 乱歩さんとリズムが違うのが、良い。

 これだ。

 侮辱罪にあたるだろうか?

 推理小説に必要であろう分かり易い犯罪。

 骨子のひとつ、屋台骨。

 ようし、この一つ目の犯罪は景気づけ。

 どんどん行こうよ、お次はなんだい?

 そうそう。

 複数の登場人物が要る。

 三人称の。

 まずは珍保先生。

 彼には僕とは別の、推理小説家になってもらおう。

 僕みたいに追い詰められる何歩か手前の、このままじゃマズい「気がし始めている」鳴かず飛ばずの推理小説家。

 乱歩賞では一次選考を通過出来ずに居る。

 ようし、良いぞ。

 着想さえあれば、僕はいくらでも書けるんだ。

 珍保先生を慕うアマチュア作家。

 ペンネー厶は高嶺花。

 これも近くの高嶺山から。

 たかねやま、なんだけど、たかみねはな。

 うん、すごく良いじゃないか!

 珍保先生が犯す罪。

 それはもちろん、彼女が私的に送って来た原稿からの盗作だ。

 その筆力に任せた巧妙な、当事者以外誰も気付かない、しかしあからさまな盗作。

 彼女の純粋な美しい作品を薄めて、世俗の汚泥に浸して汚して効率よく組み込んだ、最悪な盗作。

 それで珍保先生、乱歩賞を見事に受賞しちゃう。

 さあ、そこから動き出す群像、潜む魑魅魍魎。

 ああ、しかし、僕にはこのふたり以外の事を書く事が出来ない。

 けれども、だから推理小説もどきを書くのが、断然面白くなって来た。

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