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とべない天狗とひなの旅  作者: ちはやれいめい
結 㤅ノ章(アイノショウ)
137/145

拾参ノ弐 あやかしに襲われた村

 半刻ほど歩いて着いたのは、どこか暗い雰囲気をもつ村でした。


 人の住まう家と同じくらいの数、(うまや)も建っています。

 厩は馬を飼育するための小屋です。何戸も並んでいますが、小屋の主が住んでいないので、物寂しさがあります。


 収穫の時期を終えた畑も土がむきだし。緑がありません。出歩く人はいません。


 さびれた村の中を歩きながら、ナギは言います。


「ここは宮に馬を卸すことを生業としている村だそうです。三月(みつき)ほど前にあやかしの被害に遭ったばかりだと、師匠からの文にありました」


「なるほどな。どうりで陰気臭い」


『チチチチ。身もふたもないでさ』


 フェノエレーゼの歯に衣着せぬ物言いに、ナギも苦笑いです。


『きゅい~。あんたもう少し言葉を選びなさいな。元気ない村、いるだけで気が滅入る』


「お前の言い方も大差ないではないか」


 いつもなら「丸ちゃんたちは何を言っているの。教えて教えて」と一行の空気を明るく和やかにしてくれるヒナは眠ったまま。

 フェノエレーゼたちの空気は、村の陰気さにあてられ、トゲトゲしてしまいます。


 タビが何かニオイを感じ取って、前かがみになります。


『にゃ、あるじさま、あっち、人が何人かいる』


「でかしたぞ、タビ。まずその人に話を聞こう。医者の家を教えてもらわないと」


『ほめられた。オイラ、できるこにゃ』


 頭を撫でられて満足そうに喉を鳴らします。

 フェノエレーゼたちは急ぎ、集まっている老人たちに声をかけました。


「このあたりに医者はいないか。こいつが熱を出して、薬が必要なんだ」


 すると、それまで笑顔で談笑していた村人たちは顔色を変えました。


「ギ、ギ、ギ……馬魔(ギバ)!? おまん、薬って、まさか薬をそん馬魔につかうんか。なんておそがいこといっとん!!」


「は!? 馬魔? 私はただこいつを診て薬をくれと言っただけじゃないか!」


「おまんが負っているそれは、馬魔だら!」


 ヒナを指差して、まるで化物を見るかのように恐れ慄いた顔をします。老人の声を聞きつけて次々村人たちが家から出てきます。


「いやああああ! 馬魔よ!」


「なんで馬魔がおるんだ!」


 そして老人と同じように、ヒナを見て悲鳴を上げるのです。


 ヒナはどこからどう見ても人間の(わらわ)です。十にも満たない幼子を、なぜそこまで忌み嫌うのか。フェノエレーゼには理解できません。


「ええぃ! 馬魔なんぞわしらの村に連れてくるんでねぇ! ちゃっとけえれ!」


 次々に投げつけられるイシツブテ。

 ある者はクワを、またある者はカマをふりあげます。


「話を聞け。解熱の薬をくれるだけでいい。金なら払う」


「化け物を助けようとしてる奴なんかの言うことを信じるものか!」


「ま、待ってください! この子は馬魔ではありません。れっきとした人間です! お願いだから医師を」


「黙れ黙れ! さもないとナタくすげるぞ!」


「チッ。一旦引くぞ、ナギ」


 村人たちに追われ、フェノエレーゼとナギはヒナを連れて山に逃げました。


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