表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

遠い小指

作者: 倉科さき

 胸に造花をつけた卒業生たちは、記念写真を撮ったり寄せ書きをしたり泣いていたり。みんなそれぞれの青春の終わりに夢中で、だからその中で彼女に声をかけたことはきっと誰にも気づかれていないはず。


 屋上で、なんてカッコつけたことはできないから教室の端で、スカーフが欲しいと願う。『第二ボタン』の友情版だと、陳腐な嘘を信じた彼女は「そんなこと」と笑いながらスカーフを外す。しゅるりと音を立てて彼女から離れる真っ赤なスカーフに心臓がおかしく跳ねた。

 緊張で少し震えた声で感謝を伝えると、丁度彼女のスマホが鳴る。画面を見て、初めて見る笑顔を浮かべて、あとなんか用事ある?と問いかける彼女。あるけど、言えない。その言葉すら胸にしまって、小さく頷く。


「じゃあ私、行くね」


 タタタッとローファーの音を響かせて、ひらりと短いスカートを靡かせて、全校生徒の誰よりも可愛いらしい顔で、彼女が行く先はきっと恋人のもとで。


 スカーフくらいじゃ、いくらほどいて糸にしたって、君の小指にはとどきっこない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ