ー最愛の人ー
幸栄組 準構成員
柏木 浩平
と、その彼女 巡 優芽
優芽が殺害されてから
早2年が経った。
優芽が生きてれば俺らは今22歳。
俺はただ、ただ、
何も考えずがむしゃらに仕事へ没頭した。
優芽の事を忘れたかのように
働き続けた。
そんな訳がない。
1日だって忘れるはずもない。
――
岐阜山中抗争事件
20XX年11月4日
岐阜県岐阜市で初代幸栄組南城会準構成員の
柏木浩平と自称二代目千田組昇龍会の構成員
身元不明の30~40代と見られる複数人の男との
抗争に巻き込まれた柏木浩平の交際相手の一般女性
巡 優芽さん(当時19歳)が抗争に巻き込まれ
銃で撃たれ死亡した事件。
――――
初代幸栄組南城会が所有する財産をめぐるトラブル
から幸栄組準構成員である柏木浩平の交際相手
巡 優芽さんを人質とし自称千田組構成員の男達
複数人が金品の要求をしたことに対し柏木浩平と
自称千田組構成員の男1人が交渉したが収拾が
付かなくなり千田組構成員複数人から襲われた
挙句、自称千田組構成員の男によって交際相手の
巡優芽さんが銃殺された。
――――
事件が起こる5日前から交際相手で当時19歳の
巡優芽さんの行方がわからないと幸栄組準構成員の
柏木浩平さんから捜索願が提出されており、
巡優芽さんと最後に連絡が取れたのは事件の前日で
茂徳 瑠衣という女性から
巡優芽さんの携帯で電話がかかってきたという。
柏木浩平と茂徳瑠衣は指定時刻に岐阜県中津川市の
某所で待ち合わせの約束をした。待ち合わせ先では
茂徳瑠衣という女性はおらず、覆面をした
自称千田組構成員の男達数名と縄で拘束されていた
巡優芽さんが現場にいたという。柏木浩平によると
和解を求めたが折り合いが付かず構成員の複数人に
襲われ、巡優芽さんは相手から銃で額を撃たれ
重傷を負い即死亡。柏木浩平さんも暴行を受け
重症だったが自力で病院へ向かい一命を取り留めた。
この抗争は愛知県内外各地に飛び火し、
千田組の昇龍会系への攻撃が激化した。
昇龍会系では数十人の行方不明者と死傷者が出た。
事件から1週間、現場の岐阜山中には
ブルーシートがかけられ、中では鑑識作業が
続けられていた。証拠が一切残っておらず
犯人もまだ見つかっていない。茂徳瑠衣という女
の身元を調べたら3年前に既に死去している
一般女性だった事が明らかになった。
二代目千田組昇龍会は、この事件をきっかけに解散。
元組長千田 守が暴力団として、
異例の謝罪会見を行った。容疑が疑われている
元構成員達は全員行方がわかっておらず、
事件が起きてから2年経った今も捜査は
続けられている。
――
俺は今、幸栄組の組長から情で
建設会社の社長として
なんとか食いつないでいる。
組長「今のお前は見るに堪えない。
優芽はお前の事を見守ってる。
そのままじゃ腐っちまうぞ。
元はと言えば俺がこんな仕事を
引き受けたのが発端だ。
断れば良かったと今では後悔している。
俺はお前を見捨てない。」
そんな事言われてもな…
プルルル…プルルル…
「はい。もしもし。」
「愛知県警の山田です。柏木浩平さんで
よろしかったですか?」
「はい。柏木です。」
「巡優芽さんの事件に関してですが、
事件から2年が経ちました。
被害届けを取り下げますか?」
「てめぇ…取り下げる訳ねぇだろ!!
死ぬ気で探せ!!
お前らが死ぬまで探せ!!!!!
そんな電話ならしてくるんじゃねぇよ!!!!!」
「…大変失礼いたしました。被害届けは
取り下げないという事で、引き続き捜査をして
参ります。」
「ふざっけんな!!!!」
ふざけてる。こいつらは人間じゃねぇ。
警察は使えない。
やる気がないのか?
金か?
俺だけの力じゃ何もしてやれないのか?
俺の時間はあの時から
止まったまんまなんだよ…
優芽…
高木さんが、刑事ならな…
きっと。きっと助けてくれただろう。
――
俺は生後半年ほどで施設に預けられて施設で育った。
施設には良い奴も悪い奴もいた。
小さい時からケンカばっかりしてた。
俺はどうしようもないほどヤンチャで
ルールの厳しい施設に嫌気がさして
施設を抜け出すことばっかり考えてた。
施設の外にはたくさんの感動と夢がある。
バイクだ。小さい時、夜中に外から
変な音の音楽が聞こえてきた。
パラリラパラリラ~
ブンブォォン
ゴゴゴゴゴゴゴ…
「何この音?」
「バイクだね。あんなの危ないし
かっこ悪いしうるさいし迷惑なだけよ。
ほら早く寝なさい。」
「バイク…」
その日からバイクの本を
探しては魅入った。
「コテくん、またバイクの本読んでるの??」
「うん!バイクってかっこいい」
「危ないだけよ。車の方が便利で安全だよ。」
「コテは車よりバイクの方が好きだなー」
小さい時に自分の浩平って名前を
ちゃんと言えなくて
こーへって言いたいのに口に出すとコテって
言ってたらしい。
俺のアダ名はコテになった。
毎日、毎日飽きもせず
自分より強く大きな男の子に
ケンカをふっかけては
ボコボコにされて泣いてた。
ケンカは弱かった。
俺が小学校1年の時に
福祉活動ってやつで
元犯罪者達が施設に来たんだ。
その時に居たおっさんが
いい歳してんのに
鍛えこまれた身体だった。
施設のやつらが数人で
ひぃひぃ言いながら重たい機材を
運んでる中
その傍らで、1人で軽々と持ち上げてんだ。
そのおっさんはふざけたやつだった。
あちぃーって言い出したと思ったら
上の服脱いでズボンも脱いで
股引で片付け作業始めたんだ。
「うげ。変態親父じゃん」
「なんだ坊主。俺は厚生した
ただの真面目な色男だぞ~」
「おっさん、何したの?」
「んー。暴走族してたんだよ。
で、暴力事件起こして
数十人半殺しにした。
てか、おっさんてやめね?
俺まだ22なんだけど。」
「えぇ!?おっさんまだ22なの!?!?
強かったんだ」
「ガキにまだ22とか言われる時代って…
因みに今も強いぞ~」
「じゃあ俺と勝負だ!おっさん!!」
「わっはっはっはっ!青二才が!
お前がでかくなって立派になったら
相手にしてやるわ」
おっさんは俺の頭をがしがしやると
また笑いだした。
「むぅ…おっさん名前なんていうんだよ」
「ばーか、ガキンチョが。
まずは自分の名前を
名乗ってから聞けよ」
「俺、コテ!」
「コテ?外国人か。」
「いや違う!多分日本人!」
「多分ってなんだ多分って」
「俺親いないからさ、誰の子供か
わかんねーの」
「…そうか。そりゃ悪かったな。
俺は、柴田 政宗。」
「しばたまさむね…
おっさんかっけぇ名前だな!」
「おう。あんまサボってるとあいつら
うるせーから。俺作業戻るわ」
「おう!またな!おっさん!!」
俺はこの時柴田さんに初めて会ったんだ。
柴田さんはまじでかっこよかった。
これは所謂一目惚れみたいなやつだ。
「なんでこんな強そうな人が犯罪者なんだろ」
その後も柴田さんたちは
ちょくちょくやってきた。
俺は変わらず、色々なやつに
ケンカふっかけてはボロボロになって
施設の奴らに
「またやってる。いい加減やめな。」
とか言われてたけど
全部無視して日々鍛えてた。
柴田のおっさん…
いや兄貴みたいにムキムキで
かっこいい男になるんだ!!
「なぁ、兄貴
どうやったらケンカって強くなるんだ?
俺、ケンカで勝った事がなくてさ」
「んー。そんな事言われてもなぁ
コツ?かなぁ。あとは気合い!!
ってか健全なガキにこんな話したら
怒られるって」
「コツってなんだよ!」
「例えば、力任せに向かうんじゃなくて
ここを殴られる!って思わせておいて
別の方向から殴りを入れるとか。
駆け引きも必要だな」
「なにそれズルいじゃん」
「正面突破は本当に力がないとな。
あとは何のためにケンカするのか。って事
お前は何のためにケンカしてる?」
「俺は、俺が強くなるため!
強いと認めさせるんだ!!」
「なんで強い男になりたい?」
「かっこいいから!」
「一理ある。一理あるが、力が強いだけの男がかっこいい訳では無い。弱者や大切な誰かを守るための心の強さこそが真の強くてかっこいい男だと俺は思う。ただ力が強いだけなら山のイノシシと同じだろ。」
「???」
「まぁ、まだガキには難しいか。とにかく、弱者や大切なものを守るために強くなれ。」
「うん!わかった!」
――
施設に新しい家族が来た。
いかにもヤンチャしてる奴だ。
頭は金髪で口とか耳にピアスがついてる。
施設のやつらと言い合いしてる。
今にも殴りかかりそう。
よく見たら施設の人間じゃなかった。
「兄貴だ!」
兄貴、また来たんだ!!!
俺は小学校5年生になっていた。
身長が伸びなくて悩んでた俺は
柴田さんにアドバイスをもらおうと
駆け寄った。
「兄貴~!!」
「お、コテ、でかくなったな~」
「えぇ!?俺、身長伸びなくて
悩んでるのに!」
「いやぁ初めて会った頃なんか
お前こんなんだっただろ!」
柴田さんは指で豆つまんでるような
ポーズで言ってきた。
「そんなちっさくねーし!!」
「わはは!」
「それよりさー、
この人と言い合いしてなかったー?」
新しく来た住人は俺を見下ろして睨みつけていた。
強そうだ!!
少年「なんだよガキ邪魔すんな。
このおっさん痛い目に合わさねぇと
俺は気がすまねぇんだよ」
どうやら2人は知り合いらしい。
柴「施設送りがムカついたか?」
少年「チッ。胸糞悪い。
てめぇタイマンしろや。
じじぃ!」
「兄ちゃんじゃ勝てないよ多分!
兄貴めちゃくちゃつえーもん」
少年「うるせーよクソガキが
おめぇからやってやるわ。
言葉使いも分かってねぇし
教育してやるよ!」
「やれるもんならやってみろよ!」
すぐさま少年は腕を大きく振り上げて
俺は殴られた。
「……ってぇ」
俺は渾身の回し蹴りを食らわしてやった。
蹴りは多少の身長差があっても顎に届くんだ。
「クソガキがァー!」
俺とその金髪野郎は揉みくちゃになった。
俺も負けたくなくて馬乗りになって
殴ったり、髪の毛をわしずかみにされて
頭突きされたり、血は飛び散るし
散々やり合った。でも俺は動けなくなった。
目の前が真っ白になって気絶した。
少年「ゼェゼェ…おい柴田のクソ野郎
俺とタイマンはれや…」
柴田「と、言われましてもねぇ…福祉活動の一環で
来てるからねぇ。俺さ、成人してから
ほとんど刑務所出たり入ったりなのよ。
今27歳なんだけどね。
もうすぐ子供が産まれるのよ。
ヤンチャするような歳じゃないんだよね。」
少年「うるせぇ!!!」
少年は無視して殴りかかった。柴田は立ち上がり少年の腕を掴むと一瞬にして少年は身動きが取れなくなった。
少年「…くそッ、くそくそくそッ」
柴田「君の親がうちの会社に放火して逃げたから捕まえて俺は警察に突き出した。まさか夫婦で放火してたなんて思わなくてね。君は親がムショから出てくるまでか成人になるまでは施設に行くしかなかったんだから仕方ないよね。」
少年「俺の自由を返せよ!!!」
施設の職員達が来た。
「柴田さん!!!何やってるんですか!!?
こんな小さな子供達に手を挙げるなんて!」
少年はニヤついた。
少年「そうだよ!こいつがこのガキ殴ったから俺は止めようとしたんだ!そしたら俺もこんな風に殴られた!追い出せよこんなやつ!!」
職員「…!?し、柴田さんもういいです。帰ってください。そんな人だと思いませんでした。」
柴田「……」
気絶してた俺は少しだけこんなやり取りが
聞こえてた。目が覚めたら夜で俺は施設のやつと
ご飯を食べながら柴田さんのことについて聞かれて
そんな事実はなかったと言った。
でも職員達は、信じなかった。
俺が柴田さんの事大好きだから庇ってるだけだ。と。
初めて会う少年が突然あんな大柄の男に
楯突くはずがないと言って聞かなかった。
柴田さんはこの日以来施設に来る事はなかった。
だから俺はこの施設を抜け出すことにした。
柴田さんに会いたい。ただそれだけだ。
なんで違う!って言わなかったのか。
その真実が知りたかったから。
しっかり念入りにチェックして逃げるルートを
何度も確認した。
逃げ出す事がバレないように普段は、
普通通りに過ごした。喧嘩は極力控えた。
逃げ出すのにボロボロじゃしんどいだろうから。
だけど、あの金髪の男は俺にちょっかいを
かけてきた。
足立 遊星
あの金髪の男の名前だ。年は俺の2つ上。
こいつはなんだかんだ、
本当はいいやつなんじゃないかと思ってた。
だけど、全然違った。
俺と遊星は目が合うと喧嘩してた。
お互いボロボロになっても諦めなかった。
俺はこいつを許さない。柴田さんに
会えなくなった原因はこいつなんだ。
そうはいっても毎日毎日ケンカも飽きる。
俺は遊星と口をきかなくなった。
ちょっかいをかけてこなくなったから、
もういいやと思った。
俺は15歳になった。身長も伸びて今じゃ
170cmもある。まだ伸びそうだな。
中学校で1番でかくなった。
脱走しようと計画を立ててから
もうかれこれ3年が経ってしまった。
何度も脱走しようとしたけど失敗。
仕事は16歳からしか出来ないらしい。
それを聞いて絶望して、諦めてしまった。
ここは18歳まで出られないらしいけど
仕事があれば16歳でも出ていいらしい。
あと1年で施設を出れるそんな時、
俺は見てしまった。
女子の泣き声のような声が聞こえて、
見に行ったらそこには遊星と遊星に
くっついてるやつら合わせて4人いた。
女子は服が引き裂かれて、ほとんど裸だった。
泥だらけだった。俺はあいつらが何をしてたのか、
すぐにわかった。
寄って集ってあの子を襲ったんだ。
俺はふと柴田さんの声を思い出した。
「弱者や大切なものを守るために強くなれ。」
あの女子は絶対弱者だ。弱い者を守る。
この事だと思った。今がその時なんだって。
女子は恐怖で震えて声も出なくなってた。
見てられなかった。
俺は後ろから思いっきり遊星の首を締めた。
背後に体重をかけたら重い音がした。ボキッて。
俺は遊星を1発で仕留めた。
他の3人なんてヒョロっちぃやつらだから
余裕で勝てた。
動かなくなった遊星に馬乗りになって
俺はひたすら殴り続けた。
物音を聞いた職員達が来て俺は抑えつけられた。
女子を連れて、倒れた連中を連れて
俺も連れられて、事情を話せと言われた。
見たもの全てを伝えた。
女子の顔までは見れなかったから、
誰かよく分かんなかった。
見た事あるようなないような。
遊星達は救急車で運ばれた。意識不明だって。
その日、施設に警察が来た。
だが職員達はあいつらを庇って子供同士のケンカだ。
と終わらせていた。
俺も話を聞かれたから全部言ったんだ。
襲われた女子を守る為にやったって。
でも俺だけ供述が違うと言われた。
嘘だと言われたんだ。
職員達はケンカの様子を見てたと。
証人は揃ってる。
本当の事を話しなさいと。
前から仲が悪くてケンカしてたんだよね。
夜中に呼び出されて、君は4人の男の子から
殴られて仕返しをしたと聞いているけどって。
意味がわからなかった。
女子は?ボロボロになってたあの子は
どうなったんだよ! って警察に聞いたら、
そんな被害を受けた女の子はいないと言われた。
はぁ?
はぁ!!?
はぁあああ!?!?
どういうことだよ…
なんでだよ
どうしたらそうなるんだよ…
あの女子はどこに行ったんだよ!!!!
俺はとにかくひたすら警察に
「話がおかしい。全然違う」
と何度も言った。
何時間経ったかわかんねーけど
ずっと訴え続けた。
「なんかわかんねぇけど職員達が
隠し事をしてる」とも。
警察が机をバンッと叩いて
「いちいち小賢しい嘘をつくな!」
って言ってきた。
めちゃくちゃムカついて
「俺がなんでわざわざ嘘つく必要あるんだよ!」
って言い返したら
「自分の正当性をアピールして
罪を軽くしようとしてんだろ」
だって。意味わからんし、アホくさい。
それでも俺は何回も何回も言ったんだ。
あまりにも俺の話を聞いてくれないから
俺は頭抱えて落ち込んで
深いため息をついた。
そしたら、さっきまでとは違う警察が来た。
高木「よぅ。俺は高木だ。
よろしくな柏木浩平くん
今からお前の話を最後にもう一度だけ聞く。
今までの話は嘘偽りのない事実か??」
「そうだよ!俺、嘘ついてねぇよ」
高木「だがな、全部の部屋を見てまわったんだ。
怪我をしている子やそれらしき子は居なかった。」
「じゃああの女子は誰だったんだよ…
暗くて、長い髪の毛で顔も隠れてて
よく見えなかった。
見えたのは頬と口元と顎。
涙は光で反射して光って見えた。
泣いてたのか泣いてなかったのか。
わからない。でも怯えてた。絶対に。
だから助けたのに。」
口元…
口元…
ホクロ…!
「なぁ、その女子顎にホクロがあったんだよ!!」
高木「おい、木津、顎にホクロのある、髪の毛の長い女の子を探せ。」
木津「はい!」
やっと動いてくれた。
「なあ、高木さん部屋もいいんだけど
登録者の記録で探してみてよ。
写真見たら俺、ピンとくるかも」
高木「うーん。わかった。そうしてみよう。
因みにお前は一応暴行罪で
初犯になると思うぞ」
「ゲッ」
高木「でも本当にその女の子がいるなら
情状酌量の余地あり。身を守る為の行為として
認められれば初犯はつかないだろう。
保護観くらいかな。」
「俺悪くねぇのに…」
高木「日本の法律は殴ったやつが悪いんだ。
でもそれもな被害者を増やさない為の
決まりなんだよ。」
「そっかー。でもさー
なんでもう1回話聞く気になったわけ?」
高木「救急隊から連絡があってな、
何度も殴った形跡があるってな。
相当な恨みがないと何度も何度も殴る事なんて
しない。だから一旦は施設の人間の話を信じた。
それでも、なんか引っかかって、
お前の事観察してた。お前の目は真っ直ぐだった。
嘘をついてる顔じゃねぇ。少年課は初めて来たが
まぁ勘だ。俺は元々刑事課にいてな、
色々な犯罪者見てきた。人を痛めつけるのが
好きな奴か、正義感で抑えきれなくなった奴、
復讐、恨み、妬み、色々な考えで犯罪は起きる。
お前はなにが理由で手をあげたんだ。」
「俺は、あの女子を守るためにやった…」
高木「正義感で抑えきれなくなった奴。だな。
嘘をつくやつは必ずどこかに癖がある。
長年見てきてわかる。」
「俺は嘘は言ってねえ。首絞めて落として殴った。
女子が震えてた。可哀想だった。
数人でたった1人の女の子に…
ふざけるなって思った。」
高木「そうだな。子供も大人も平気で嘘をつき、
自分を良くみせようとする。その被害者が
出てこなかったら、まぁお前は
演技派のサイコパスだな。」
「ただな、正直言うとさ、遊星に恨みはあったよ。
正義感だけで綺麗事言うつもりはねぇ。
俺は遊星は嫌いだ。今日の事で余計嫌いになった。」
高木「ふむ」
「俺ここで育ってさ、福祉活動って事で
ここに来てた元罪人の中でなんかすっげぇ
かっけぇ兄貴がいて。あんなにキラキラしたやつ
初めて見たんだ。でも、遊星のせいで兄貴は
二度とここに来れなくなったんだ。」
高木「誰だ?俺知ってるかもしれねぇな」
「柴田政宗って人だ。」
高木「…!!」
「知ってんの?」
高木「知ってるもなにもずっと出たり
入ったりしてるからなあいつ」
「柴田さん、まじでかっこいいんだよ。
あんな人が犯罪なんかやる訳ねぇって
俺は思ってる。」
高木「……柴田は、間違いなく重罪人だ。
期待をするな。」
「……絶対そんな訳ねぇ」
木津「高木さん!顎にホクロの黒髪の女の子の
登録がありました。でもこの写真だと
ショートヘアなのでよくわかりませんね。」
高木「それはいつの記録だ?」
木津「生後半年…からここにいるみたいです。」
高木「名前は?」
木津「巡 優芽というそうです。」
「え?誰だよそいつ。聞いた事ねぇ…」
高木「どういうことだ?
柏木くん、詳しく教えてくれ。」
「詳しくもなにも、俺は生まれた時から
ここにいるんだ。全員家族なんだから
名前だって知ってるし、顔だって見ればわかる。」
高木「この記録を確認してくれるか。」
「ん?見た事ねぇな…誰だこれ。」
高木「見た事ないか?よーく思い出してみろ」
うーーん
本当に知らない顔、知らない名前だった。
いや、ちょっと待てよ…
俺はもう一度写真を確認した。
今度はゆっくりとまじまじと見た。
「あ!!!!こいつ、精神科の先生の子供じゃん!!
名前は、確かゆずこしょう!
あーちげぇな 柚外 高尚だ。」
高木「精神科の先生?木津、役員名簿持ってこい。」
木津「はい。わかりました。」
その後は、木津さんが役員名簿を持ってきて精神科担当の役員を探した。
高木「柚外 高尚。顔はこれで間違いないか?」
「あ、そいつっす。」
高木「木津、今すぐ役員たちの部屋も探すぞ。」
木津「はい。」
高木さんと木津さんは2人で手分けして
施設全ての部屋を探した。
だが、巡 優芽らしき子は見つからなかった。
高木「木津、これは臭うぞ。やべぇ臭いだ。」
木津「高木さんがそんな事言うの珍しいですね。」
高木「近くの救急外来やってる病院探すか。」
そうして、2人は応援を呼び付近の病院を
探してもらった。だが、巡 優芽は
見つからなかったそうだ。
事件が起きてから数日が経って、
また高木さんたちはやってきた。
児童達に写真を見せて、目撃証言を集めた。
すると、1人の女の子が声をあげた。
「あ!ゆめおねぇちゃんだ!この前一緒に
ご飯食べたよ!美味しかった~」
目撃だけではない。一緒に食事もした事があると
高木「事情聴取するには幼すぎる。
木津、あれの準備しろ」
木津「はい。」
高木「まいちゃん、ゆめおねぇちゃんとは
何回くらい会った事ある?」
「んーとね、たくさんじゃないけど10回くらい!」
高木「その時、他に誰かいたか?」
「うん!高尚先生!」
高木「高尚先生はどんな人なのかな?
先生や優芽ちゃんとはどんな遊びするんだ?」
「えとー。優しい先生!
えっとね、秘密!」
高木「秘密??」
「うん!誰にもお話しちゃダメだよって」
高木「誰にも言わないから教えてくれないかな?」
「んーだめ!」
「まいー、お前さ、プリン好きだろ?」
「プリン大好き!」
「みんなに内緒でたくさん食べさせてやるから
まいもその内緒教えろよ。これで俺ら
内緒仲間じゃん」
「プリンたくさん!?内緒仲間!わかった!!」
まいはコソコソと話を始めた。
「あのね、先生のおうちでね
検査するの!
私とゆめおねぇちゃんはお病気があるの。
でも危ないお病気だから皆に言うと
嫌われちゃうから治るまでは秘密なんだって。
治すお金も高いから
秘密にしないと怒られちゃうって。」
高木「どこの検査するのかな?」
「えっとね、お腹とか喉とかね色々だよ!」
高木、木津「……!!!」
高木「その検査はどうやってするのかな?」
「えっとねぇ、お注射なの!最初は痛かったけど
もう痛くないよ!先生のー…」
聞いていられない内容だった。あまりにも酷すぎる。
「あー早く先生のおうち行きたいなぁ!
先生が作ったケーキ甘くてすっごい
美味しいんだよー」
高木「至急本部に連絡する。まいちゃんありがとう」
これは間違いなく性犯罪だ。
俺は吐き気がしてトイレに走った。吐いた。
「気持ちわりぃ…ホントに人間かよ…」
まいが部屋を後にしてから高木さんは
俺の目をじっと見た。
高木「この話は誰にも話すな。」
「話すわけねぇだろ!早く捕まえろよ!」
高木「あのな俺らだってそうしたいが
すぐに捕まえるなんて出来ないんだよ。」
「はぁ?お前らが呑気にしてたらあの2人は
また嫌な思いしなきゃいけないじゃんか!
今すぐ捕まえに行けよ!」
高木「こういう事件を起こす犯人は全ての事柄を
計算している可能性がある。全て秘密裏で進めて
確実に逮捕に至らなければ、証拠不十分で
無罪になることだってありえる。
だから出来るだけ油断をさせなければならない。
その油断した所を捕まえる。」
「油断……」
高木「証拠が必要なんだ。今の発言は録音したが
相手が幼すぎる。
次もまた同じ証言が出来るとは限らない。
優芽って子が自らから110番してくれれば
今すぐにでも行けるんだが。」
「そうかよ。」
高木「落ち込むな。必ず捕まえる。」
高木さんは真剣だった。俺は信じることにした。
まいは何故あんなにも楽しそうに話をしていたのか。
俺は高木さんや木津さんが帰った後
パソコンを開いて、色々と調べた。
精神科は他の医者達よりも洗脳しやすいらしい。
要は、優芽も、まいも洗脳されてたんだな。
それから3日後、今回の事は公にせずに、
俺と遊星のケンカが引き起こした騒動だって事で
施設内は落ち着いた。
それから更に3日が経った頃、
柚外 高尚はあっけなく逮捕された。
俺は、優芽が被害にあった事の目撃証言と
まいの証言の証人として、
充分だと認められたらしい。
カチッ…
木津「ッフゥー。今回、逮捕まで早かったですね。」
高木「優芽ちゃんらしき人物の出入りが
確認取れたからな。
裁判所から発行された捜索捜索の令状を出す。」
木津「白昼堂々、女児に首輪つけて外に行くなんて
とんでもないやつでしたね。」
高木「おい、俺にも1本くれ。」
木津「え、高木さんタバコ、
やめたんじゃないんですか。」
カチッ…
高木「やめたけど、ストレスには勝てねーわ。
…ゴホッゴホゴホ。んぁーつえーこれ。
しかしな、あんなのがあっちでもこっちでも
のうのうと普通の生活してんだ。
ありえねぇよな。 」
木津「まぁ、はい。そうですね。」
――
速報です。
児童保護施設の心理療法担当職員兼精神科医の柚外 高尚容疑者(43歳)は自宅にて児童保護施設の女子児童1名を監禁していた所を発見。15歳の女子児童を無事保護したそうです。児童ポルノ禁止法違反の容疑で現行犯逮捕となりました。発見された被害者は発見時、首輪をつけており、柚外容疑者の自宅1階にて大型犬用ゲージに入れられており、足枷が繋がれた状態で発見。
被害者の身体には外傷があり、若干の骨の変形が見られるそうです。愛知県警察によると、被害者は生後11ヶ月で児童保護施設に預けられ、そこから約15年近く、柚外容疑者の自宅にて監禁されていたものと見られます。柚外容疑者の自宅PCや携帯電話からは被害者のものと思われる卑猥な画像や、他の集団との動画などの撮影記録も確認されました。画像や画の個人販売を行っていた形跡も見つかりました。その事から児童売春の容疑もあるとして、引き続き捜査を行うという事です。記録からは他にも数名被害女児いる事も同時に判明しました。このー…
報道から1ヶ月経ったが
施設の前には物凄い数の記者や一般人が殺到した。
優芽は施設へ無事に帰って来た。
他の職員達も一斉取り調べが行われた。
高尚の父親は理事総会長の
柚外 祥生だった。
職員達は権力者に歯向かうことはできず
ただただ黙認していたことを認めた。
優芽は俺が思ってたより元気で、
俺を見つけて、パタパタと走ってきた。
「この前は助けてくれてありがとう」
「お前、大丈夫かよ」
「うん。大丈夫!君、私のヒーローだね!」
「は?ちげぇし…」
「えへへ、耳真っ赤になった!」
「う、うるせー早く寝て身体治せ」
俺は慌ててその場を去った。
距離が近すぎることに困惑した。
「俺は…何も出来なかったな。
高木さんはいい人だった。木津さんも。
くそ…高尚め。ぜってぇいつか
ぶっ飛ばしてやるからな。」
そう意気込んで居たのも束の間、
高尚は留置所に移送された後、
居室で自殺を計り応急処置の甲斐も無く死亡。
高尚は容疑者死亡のまま書類送検となり、
不起訴処分となった。
「はぁ?ぜんっぜん、わかんね。
無罪ってことか?でもまぁ、こういっちゃ
悪いけど死んでくれて清々するわ。
どうせ死ぬなら俺が殴り殺して
やりたかったけどな。」
俺は涙が溢れた。
「でもな…
くそ!被害者は…優芽は…
散々好き勝手やられて
傷付けるだけ傷付けておいて…
自分は反省もせず死ぬのかよ。
被害者にはなんのフォローもない。
弱者を守る…?どうやって…くそっ…」
俺は悔しかった。高尚は犯罪者として、
無期懲役で刑務所から一生出られなくなれば
いいのにと思った。俺、犯罪者がどうなるとか
ぜんっぜんわかんなかったから色々調べたけど
本当に理不尽だと思った。
死んでも償いきれない罪だ。
俺はやるせない気持ちになって外に出た。
庭でうじうじ地面を蹴ってはため息をついた。
「ねぇ!探したよ!コテくん!」
「なんだよ…俺は今へこたれてんの」
「あのね、本当にありがとね。
私さ、見栄張ってっていうか
強がって、大丈夫って言ってたけど…」
優芽は泣き崩れだした。
「…本当は、辛かった。
5回も赤ちゃん死んじゃったの。」
「は?」
「先生が、また僕との子供を妊娠したねって…
悪い子だね。痛いけど我慢するんだよ…って
機械で無理矢理…赤ちゃんみんな死んじゃったの。」
「…んだよそれ!!!それをお前は5回も
我慢してきたのかよ!!!!」
俺は思わず優芽の手を取った。
「おい!優芽!!お前は悪くねぇから!
ぜってぇ悪くねぇよ!!!」
「うぅ…うわあああああああああん
あかちゃん…私の赤ちゃん…ごめんねぇ…
助けてあげられなかったぁぁぁぁ…」
優芽は、何時間も泣き叫び続けた。
落ち着いてから、初めての妊娠の話を聞いた。
小学校5年生の時だったらしい。
子供を下ろした1ヶ月後にまた妊娠。
それから6年生の終わりと中1の頭と終わりに。
「また妊娠してるかもしれない」
と言われた。俺どうすればいいんだよ。
それから1ヶ月が経った。
優芽の言っていた事は当たってしまった。
高尚の子供か、レイプした遊星達の
誰かの子供らしい。誰の子供かわからないと。
「うち、産みたいな。」
施設のやつらも皆反対した。
もちろん俺も最初は反対した。
だけど、優芽は腹括ってた。
誰の言う事も聞かなかった。
病院に通い成長を見守り、
皆で優芽のお腹の子の写真を見るようになって
子供の成長を全員が喜ぶようになった。
応援するようになった。
優芽は突然お腹が痛いと言い出し、救急搬送された。
その日の夜、お腹の子供は天国に行った。
それから1週間、優芽は絶望した顔で帰ってきた。
そして優芽はおかしくなった。
「うち、死にたいわ。」
そんな言葉を発するようになった。
俺は心配で心配で仕方なかった。
優芽は毎日憂鬱でご飯もろくに食べなくなり
かなりガリガリに痩せこけてしまった。
可愛い顔してたけど、
その顔も原型がわからないほど痩けて
血色も悪かった。こいつほんとに死ぬと思った。
気がついたら俺は優芽から
目が離せなくなってたんだ。
弱者を守る。大切なものを…守る?
それから俺は、出来ることがないか考えた。
そして作った事もないような
雑炊を教えて貰いながら作った。
俺の作った雑炊は誰にも食べさせられるような
代物ではなかった。
真っ黒焦げになって鍋を何度もダメにした。
でもその努力も報われて、
ついに1人で作れるようになった。
上手く出来た雑炊を持って優芽を起こしに行った。
コテ「お、おい。起きてるか?」
優芽「……」
コテ「まだ寝てんのかー」
優芽「……」
コテ「あ、あのな
俺料理とか出来ないんだけどさ
は、初めてちゃんと成功したんだ
雑炊。これ食ってくれよ」
優芽「……」
ベッドで横たわっていた優芽はムクっと起き上がり俺を見た。
コテ「お、おぅ!起きたか!一緒に食おう!」
優芽はこくりと頷いた。
俺は急いで机を出して優芽のベッドの上で
食べることにした。
出来たてでまだまだ冷めそうにない。
湯気がもくもくとたっている。
俺はスプーンですくって、
ふぅーふぅーと息を吹きかけ、雑炊を冷ました。
スプーンに乗った雑炊は湯気がおさまった。
優芽の口に運んだ。
優芽「……」
優芽はボーッとしていた。
少しずつ目を開いて見る見るうちに
優芽の目には涙が溜まっていた。
コテ「ん?え?なに?不味い?」
目に溜まった涙が一気に溢れ出し
優芽「不味いぃーーーーうえぇーーん」
ぴぃぴぃ泣き出した。
コテ「そ、そんなに不味いの!?!?まじ!?
ご、ごめん!!!」
見た目は完璧なんだけど…俺も食べてみた。
コテ「……」
コテ「……」
コテ「甘っっ!!酸っぱ!!!!!
まっず!!!!!!なにこれ!!!!!!
最っっっ悪!!!!!!」
塩と砂糖を間違えていた。
そして、白だしと酢も間違えていた。
最悪だ。
優芽「……ははっ」
優芽は泣きながら笑いだした。
優芽「コテくん…ありがとう…ごめんね
いっぱい心配かけたね…」
コテ「いや!問題ねぇよ!俺、優芽の笑い声
聞けて良かった。雑炊…また作るから!
今度はちゃんと美味しいやつ…」
優芽「あのねうちね、知ってたよ。
コテくんが毎日、毎日練習してたくさん火傷して
お鍋をたくさん焦がしてダメにして怒られて
それでも毎日、毎日練習してたの。
コテくんは強いね。……私は弱いや。」
コテ「な、何言ってんの。
お前はたくさん誰よりも我慢して
よく頑張ったし強いよ優芽は。」
優芽「弱いの。うちは弱い。何も出来ない。
自分の子供を守ることすら出来なかった。
最後の希望だったの。」
コテ「どういうこと?」
優芽「私のね、赤ちゃんのベッド
ボロボロなんだって。
知識も経験もない素人が無理矢理
赤ちゃんのお布団を取り上げたから
赤ちゃんが来てももう育てられない。
って婦人科の先生に言われた。」
コテ「なんだよそれどういう…」
優芽「赤ちゃんを産めない身体になった…ってこと」
コテ「そ、そんなのわかんないよ!
ベッド?布団?優芽が元気になれば
また産めるかもしれないだろ」
優芽「もういいんだ。諦めきれなかった。
正直まだ諦めたくないし。
それでずっとこうやって引きこもってさ。
ね、弱いでしょ?」
コテ「弱くてもいいよ!弱いなら弱いままでも
いいじゃん!俺が守ってやるよ!!
ずっとずっとずっとこの先、
一生弱くて一生強くなれないって思ってても
俺が一生守ってやるよ!!!」
優芽「コテくん…」
コテ「……だから悲しい顔すんなよ」
優芽「ねぇ、私のヒーロー」
コテ「なんだよ」
優芽「こんなうちでもお嫁さんになれるかな?」
コテ「なれるよ!俺優芽の事全然知らねぇ事
ばっかだけど、
よっぽどの悪女じゃなければ大丈夫だ!」
優芽「それどうゆうことよ アハハ」
コテ「お、お嫁さんになれるか?って言うから!」
俺と優芽は2人でたくさん話をした。
夜遅くまで語り明かして2人で寝落ちした。
この日だけは施設の職員達も黙って
見守ってくれてた。
それから半年の月日が流れて、優芽は少し太った。
コテ「優芽ー、最近なんか太った?」
ゴッ
鈍い音がした。俺はワンパン食らったのだ。
優芽「コテくん最低」
元気になって本当によかった。
優芽は相変わらず俺の雑炊は
食べてくれないけど俺らは16になったから
それぞれ仕事を見つけて2人で一緒に
住むことになったんだ。
付き合ったりとかしてないんだけど
もうあんな所早くおさらばしたいと思った。
俺は採用してくれた建設会社の社長に
事情を話して寮を用意してもらった。
そこで優芽と2人で住むことにした。
初めての2人での生活は大変だけど楽しかった。
優芽も働いてるからお金はそれなりに余裕だった。
俺は中型免許を取りに行って、バイクを買った。
優芽を後ろに乗せて毎週ドライブに行った。
最高だった。2人で夜景見て告白した。
返事はもちろんYESだった。
嬉しくて手繋いで砂浜で散歩した。
これかも2人で休みを合わせて色々な出かけるんだ。
時々また弱い優芽が出てくる。
そしたら俺は社長に頭下げて休みをもらう。
優芽も仕事休ませて2人でゆっくりする。
雑炊を進めるけどやっぱりいつも通り拒否される。
それでもゆっくりゆっくりたくさん休む。
優芽はそれでまた元気になった。
なんで雑炊がいいのかって?
それはよくわかんねぇけど施設のおばさんが、
「風邪には雑炊、病気には雑炊よ!!」
って耳にタコが出来るぐらい言ってたから。
魔法の飯なんだよ!多分な!
俺は16の終わりに夢だった暴走族を立ち上げた。
優芽ももちろん俺の後ろ専属で参加させた。
優芽とよく行く海岸に、
同じバイク乗りの奴らがいて
ひょんな事から仲良くなった。
竹岸 賢人
高校3年。特に賢人は頭が良くて面白い。
いじっても無反応。いつでも冷静な男。
ツーリング仲間がどんどん増えてって
気がついたらいつもくるメンバーが30人
くらいになって
それでみんなお揃いの特攻服が着たいって
言い出した。
それで俺らは暴走族を結成したんだ。
リーダー誰にする?って会議したら、
みんな俺を指さした。俺に務まるかな…
少し不安だったけど、
でも俺らは揉めることもなく楽しくやってた。
で、俺は小さい時から筋トレが趣味だったから
メンバーのやつらも一緒になってハマって
みんな少しずつムキムキになった。
俺らは、短ランも長ランもめちゃくちゃイケてた。
いつも通り海岸の駐車場で待ち合わせ時間に
行ったら先に来てたメンバーの何人かが
血だらけになってぶっ倒れてた。
単車のパーツも根こそぎ盗られてて
二度と乗れないバイクになってた。
犯人は隣の街の暴走族らしい。
全員集まると、みんなでぶっ潰しに行く話になった。
もちろん俺は1人でも行くつもりだった。
メンバーの1人に賢き人がいて、
そいつが調べ上げてくれた内容によると、
TOKAI VAIOって
名前のチームらしい。
そういえば、俺らは暴走族!
とか言ってるのに、チームの名前
まだ決まってなかったんだ。
賢き人のお陰で思い出せた。
結成してから1週間も経ってたのに。
血だらけで倒れてる仲間を見て俺は
コテ「赤目…そうだチーム名は
赤目の悪魔にしよう!!」
一同「……」
賢き人「赤目…赤目…赤い、目…レッド…
真紅眼って書いてレッドアイってどうですか??」
一同「おーーーー!!!!さすが賢き人!!」
賢き人「いや自分、賢き人じゃなくて
賢人って書いてけんとです。」
コテ「よ、よーし!じゃあ今日から
俺らのチーム名は真紅眼だ!!!!」
優芽「ねね、コテくん!真紅眼の眼の所、
愛じゃダメ?可愛いかなって思って!」
一同「おおお!!当て字の代表格だ!!!」
コテ「……よぉーし!!
真紅愛!!!俺らのチーム名は真紅愛だ!!
俺らに二言はねぇ!!ぶっ潰しに行くぞお!!」
一同「おーーーー!!!」
こうして俺ら真紅愛は結成から1週間で
やっと名前が決まり、
仲間をやった憎きTOKAIVAIOを潰しに向かった。
コテ「で、とーかいって東海だろ?
それはわかるんだけどさー
ばいおってなに?」
賢き人「バイオは生命、生物って意味です。
細菌とかもバイオですね。」
一同「すげええええ!!賢き人さすがっす!!」
コテ「じゃあさ、俺らも東海に住んでる生物だから、TOKAIVAIOじゃね??」
一同「確かに!!!」
コテ「勝ったら仲間にするかーー!!ただの生物じゃあ
可哀想だからなぁーわははは」
一同「おーーー!!」
俺は憎きTOKAIVAIOを見つけると、リーダーを呼びつけて、果たし状を渡した。
コテ「お前が憎きTOKAIVAIOのリーダーだな。」
「あぁ?んだてめぇ」
コテ「俺らは暴走族。初代真紅愛!!!
俺はこのチームのリーダー
柏木 浩平だ!!!気軽にコテって呼んでくれ!!」
「はぁ?レッドアイ?コテ?
何言ってんだてめぇー」
コテ「俺は、俺らの仲間を殴ったお前らを許さない!
よってこの果たし状を贈呈する!!!
受け取ってくれ!!!」
賢き人「……贈呈すなよ」
「はぁ……果たし状…
おうお前ら聞いたかーー
果たし状を贈呈してもらったぞーー!!
もちろん、やるよなぁ?」
敵陣「やったるぁぁぁ!!!」
一同「ヒソヒソ…リーダーなんか取り出したっすね
なんすかあれ。
……果たし状??」
コテ「おう!お前らいいかー!!!
やられた、かにタコの為に
死んでも勝つぞおおおおおおお」
一同「お、おおーーーーー!!!!」
新生 初代真紅愛30人対TOKAIVAIO50人
の戦いが始まった。
俺は頭は悪いけど図体は無駄にでかくなった。
もうすぐ17歳の俺、身長182cm
この1年半くらいでめちゃくちゃ伸びた。
相手の数に腰がひけたが俺は負けない!!
仲間も敵もバタバタと倒れていく。
俺は目の前に来る敵をなぎ倒した。
VAIOのリーダーと真紅愛のリーダーとの
タイマン対決になった
俺は右手を握り直し、狙いを定めて
思いっきり腰を入れて鼻を目指して殴った。
……バタン
敵陣「え?」
一同「は?」
賢き人「一発KOですね」
勝負は一瞬で終わってしまった。
コテ「よ、よっしゃー!勝ったぞーー!
おい、お前名前なんて言うんだよ」
「あ、えと、し、品川幹雄」
コテ「よーし幹雄!おれら今日からダチな!
お前ら全員、真紅愛に来い!」
幹雄「あ…は、はぁ。わかりました。」
真紅愛のメンバーは一気に80人に増えた。
俺らは勝ったのだ。家に帰ると、
優芽は飯作って待っててくれてた。
優芽「あれれ?コテくんあんまり怪我してないね?
今日は勝負の日だー!って出ていったのに!」
コテ「余裕勝ち!俺って強えーかも!」
優芽「コテくんは強いよ!
でもあんまりケンカして欲しくはないけど。」
コテ「大丈夫だよ!チームでかくしてぇな」
優芽「てっぺん目指して頑張れ!」
コテ「おう!」
優芽の応援のお陰か、
俺らのチームはどんどんでかくなっていった。
まさか、暴力団に目を付けられてるとも知らず。
――
俺らのチームは少しずつでかくなっていって
気がつけばメンバーは約200人だ。
総長の俺、柏木浩平 16歳
副総長に竹岸賢人
通称賢き人 17歳
総勢30名
第一陣の長は、元TOKAIVAIOの総長
品川幹雄 18歳
総勢50名
第二陣の長は、元バイオレットの総長
雪 武尊 19歳
総勢40名
第三陣の長は、元毘沙門天の総長
長島 裕二16歳
総勢60名
第四陣の長は、長島 裕二の知り合いで
榊原高校を牛耳ってたリーダー
幸田 迅17歳
総勢20名
総長やリーダー達は俺とのタイマンで
負けて、俺の傘下に入った。
純粋にここのメンバーになりたいやつも
少しずつ増えてって
俺は250人を治める長になった。
仲間割れもあったし、
色々な事があったけど
みんな楽しくやってる。
将来の話もした。
大人になったら俺は自分で会社を起こす。
着いてくるやついるか?
って言ったらほとんどのやつが
手をあげた。
養うの大変そうだ。
暴走族の傍ら、俺は建設会社では
ちゃんと働いてた。
チームのメンバーも40人くらい使って
1人親方みたいな感じで
色々な現場を仲間とこなした。
そんなある日優芽は
「やっぱり赤ちゃん欲しい」
と言い出した。
たまに言ってたけど
やっぱりいいやってなって
終わってたが今回は違った。
だから俺らは話し合いをして
優芽の治療を始める事にしたんだ。
めちゃくちゃ金がかかる。
当時優芽は外傷性の子宮破裂をしていたらしい。
素人が5度も無理矢理下ろした事が原因だろう。と。
ちゃんとした医者ならそんな事には
ならなかった。と。
「破裂していた子宮は綺麗にくっついてます。
医者は、子宮は完全に完治してます。
穴が空いてるようすもないし、
これなら妊娠しても無事に
出産できると思いますよ。」
俺たちは泣きながら喜んだ。
不妊治療も特に必要がないそうだ。
俺は優芽と交際を初めてから
優芽に手を出してこなかったんだ。
だから俺、実はまだ童貞なんだけど…。
優芽がいいって言ったから
ついに卒業だ…
こんな日が来るなんて思ってもみなかった。
俺はコソコソ動画を見漁って
爪の手入れして
めちゃくちゃ歯磨いて
色々、色々準備した。
だけど、不安の方が大きかった。
優芽、思い出して辛くなるんじゃないかとか。
で、いざ挿入しようとしたら
痛いって……
でかいらしい。
入らないって……
俺は潔く諦めた。
優芽は諦めてないみたいだけど。
でかくて入らないなんてことある?
不謹慎だけど、
先生のは小さかったんか?
とか色々考えた。
うん。諦めよう。
考えるのやめよう。
いつか卒業できますように。
誰にも相談できねぇと思ってたけど
つい口が滑って賢き人に相談した。
賢人はあまり笑う人間ではないが
死ぬほど笑ってた。
――
今日は総会の日だ。
これから俺らのチームを
もっとデカくしてく為の作戦会議
コテ「よし!これからの活動について
会議しよう!!」
賢人「自分はメンバーはこれ以上
拡大しない方がいいと思います。」
武尊「えーなんで?せっかくだし
もっと集めたらいいのに」
幹雄「俺も武尊に1票」
裕二「俺はどっちでもいいぞ」
迅「俺もどっちでもいいな。」
コテ「見事に意見が割れたな。
拡大しない方がいい理由は?」
賢人「暴力団に目を付けられたら
僕らは暴力団の傘下にさせられる。
それは避けたい。」
コテ「ふむ。でもさ、ガキのやることだから
ほっといてくれるんじゃね?」
迅「いやコテ、それは甘えた考えだな。」
コテ「そうかー?」
武尊「俺らが脅かす存在になる…ってこと??」
賢人「そう思われる可能性はある。」
武尊「なんかそれ、かっけぇー!」
俺らはいつも雀荘でたむろってた。
ここは俺の働いてる建設会社の社長が
貸してくれてる所だ。
税金対策で建てた場所だから
使い道なくてほっといてたんだって。
俺の会社は屋代建設ってとこだ。
社長は屋代 誠吾さん。
面倒見がよくて男らしい人だ。
賢人と幹雄と武尊は俺と一緒に仕事してる。
で、幹雄の第一陣から10名
武尊の第二陣から16名も
参加してくれている。
因みに賢人は力仕事ではなくて
事務員だ。頭がいいから
中の仕事が合ってるって
社長が言ってた。
裕二と迅はまだ高校生だから
仕事はできねぇけど、
俺が独立したら来てくれるらしい。
他のメンバー達もまだ現役中学生と
現役高校生ばっかりだから
仕事は出来ないってさ!
まぁそりゃそうだよな!
でも、みんな金が欲しいから
夏になると屋代社長が海の家を
各地に用意してくれて
仕事がないやつらが遊びがてら
手伝ってた。
だから悪さしなくてもみんなそれなりに
金回りがよかった。
あくまでも俺らはバイクを愛するチームなんだ。
自分の燃料は自分で稼ぐ!
みんな約束守ってくれるから
助かった。
賢人「最近、屋代社長から聞いた話だけど
暴力団が派閥争いしてるらしい。
で、昇竜会っていうグループに
傘下として、まだ学生の暴走族が
次々増えて、勢力拡大をしてるとか。」
コテ「なんで暴走族が、
暴力団と手を組んでるんだ?」
賢人「暴力団側からすると
いい稼ぎになるみたいだ。
そして暴走族側からすると
バックが出かけりゃ安心なんだろう」
迅「暴走族を使ってシノギか」
幹雄「シノギってなにー?」
賢人「稼ぎの事だな。やり方は色々
あるみたいですけど、未成年の売人が
次々捕まってる所を見ると、
違法薬物とかですかね。」
コテ「俺らはそんなの絶対やめような
自分の飯は自分の身体を動かして稼ぐ。
暴走はしても、窃盗とか薬物とか
かっこ悪いことはやめようぜ」
一同「わかった。」
コテ「じゃー…とりあえずさ
人数拡大は一時やめとくか。」
裕二「任せる」
武尊「今は大人しくしとくって感じかな?」
みんな納得して会議は終わった。
コテ「今度みんなでBBQしに行こうぜ」
一同「おーいいねー」
俺は徹底的に楽しむを選択した。
夜の総会でこの会議をみんなに説明した。
もっと勢力拡大したいと願う子達は多かった。
だが、BBQの話をしたらみんな
すっかり勢力拡大の話は忘れたように
楽しみにしていた。
俺はそっからみんなで花火の買い出しとか
食材集め、車係色々分担して決めた。
それから1週間がたった。
コテ「明日は約束のBBQの日だな」
優芽「準備すっごい大変だった…」
コテ「悪ぃな」
優芽「いいよ!みんな楽しみにしてるわけだし」
約200人のメンバーほとんどが
参加希望だった。
コテ「社長にお願いしてさ、
色々考えたけど
場所借りれたから道具いらないし
食材と花火くらいで済んだから助かった。」
優芽「そうだね!参加費も1人500円でいいもんね」
シーズンじゃないからってことで
格安提供してくれたのは
山内農場だ。
広い土地を持ってて、
余った土地を貸出してるらしい。
1人500円で機材代、炭代込みだ。
ありがたい。
プルルルル…
コテ「もしもし。武尊~明日の準備出来たかー?」
武尊「コ、コテくん、やばい」
コテ「どうした!?」
武尊「幹雄と買い出し来てたんだけど
変なやつらに絡まれて…
幹雄が連れ去られた…
俺は逃げ出せたけど
やべぇよ。どうしよう。
相手ドスみたいなの持ってたんだよ…」
コテ「まじかよ。武尊、怪我はないか?」
武尊「いやボコボコにやられて
バイク乗るのがやっとだ…」
コテ「今から行く。待ってろ。
どこにいる!?」
武尊「今安城市のドンピーにいる…」
俺は慌てて準備して、賢人に連絡した。
あった出来事を説明した。全員に伝えろ。と。
優芽には、「俺は今から武尊の迎えに行く」
と言って家を後にした。
迎えに来たら武尊は血だらけだった。
バイクの後ろに乗せて病院へ行った。
骨折してて全治3週間だそうだ。
武尊は入院確定となった。
コテ「何があったんだ。」
武尊「幹雄と2人でドンピーで
明日の肉買いに行ったんだ。
そしたら黒いワンボックスから
バットとか武器持った男が
5人くらい降りてきて
お前ら真紅愛って暴走族
知ってるか?って聞かれて
つい、俺たちそうだけど
って言っちゃって。
そしたら間髪入れずに襲われたんだよ。
何人かやれたんだけど
1人だけめちゃくちゃバケモンいてさ
俺も幹雄もそいつにやられた。
どこの誰かもわかんねぇ。
車のナンバーは覚えてる。
三河ナンバーで数字は4444だった。
あんな覚えやすいナンバー…
あと、工場に来いって言ってた…
矢橋工場って所…」
コテ「そうか…幹雄…
他のメンバーが幹雄を探してるはずだ。
矢橋工場にそいつらと幹雄が
いるってことだな…。
と、その前に社長に連絡しとくか。
明日から出れねぇって伝えないとな。」
プルルル
コテ「もしもし、社長
お疲れ様です。
今病院なんすけど、
武尊が今日から入院で」
屋代「入院!?何があったんだ。
バイクの事故か?」
コテ「いや違うっすね。武尊が言うには…」
俺は屋代社長に聞いた話を説明した。
コテ「って感じで、今から幹雄探しに
行きます。」
屋代「おー待て待て、車番4444?
呼び出されたのは矢橋工場?
そこもう10年以上前に廃墟になった工場だな…
車のナンバーは階堂組がよく使うナンバーだ。
今すぐ調べる。少し待て。」
プチッ…ツーツーツー
コテ「ヤクザの車…?」
武尊「え?ヤクザ?」
それから15分後屋代社長から
折り返しの連絡がきた。
屋代「あのなぁ、やっぱり階堂組の車だったわ
お前らケンカでも売ったのか?」
コテ「いやヤクザとか全く関わりないっすよ…」
屋代「今すぐうちにこい。」
コテ「え?あ、はい。わかりました。」
電話を切るとすぐに病院を出た。
俺は、屋代社長に会いに行った。
屋代社長の会社に着くと、そこには
見覚えのあるおっさんがいた。
「し、柴田さん…ですか!!?!?」
柴田「ん?そうだけど」
コテ「……す、すげぇ」
柴田「……誰だ?」
コテ「柴田さん…お久しぶりです。
コテです!!」
俺は久しぶりに柴田さんと再開した。
柴田「コテ…おおおお!
久しぶりだな。またでかくなったな。」
俺は柴田さんより背が高くなっていた。
「柴田さん…なんでここにいるんですか?」
屋代「柴田さんは幸栄組の組長と刑務所で仲良くなったらしい。組長の直々の舎弟頭だ。俺に取って柴田さんは兄貴かな。」
柴田「屋代さん、すいませんね。あと入りでこんな関係になってしまって。」
屋代「いや柴田さん気にしないでください。」
組長は心底柴田さんの事を気に入ってたらしい。
コテ「俺柴田さんがいるなら柴田さんの子分に
なりたいっす。」
屋代「話が早くて助かる。
今回の1件柴田さん達も手を貸してくれることに
なったから。」
コテ「ありがとうございます。」
俺と柴田さんは協力関係になった。
強い味方が来たとホッとした。
――
俺らは工場に来た。
コテ「おーい!幹雄いるかーー?」
??「ん~!んん!」
ゴッと重たい音がした。
??「フゴッ」
コテ「幹雄!幹雄か!?」
迅「幹雄くん!」
迅は1人で走り出した。
コテ「まて!1人で行くな!」
迅「えっ…?」
迅がこっちを振り返った瞬間に
後ろの物陰から男が出てきて
バットで迅の頭を打った。
迅「……ってぇ」
バタン…
コテ「迅!迅大丈夫か!?」
みんなで迅の所に走り出して
バットを持ってた男を引きずり出した。
??「お前ら来るのおせーよ
待ちわびたぜ~。ガキどもが。」
コテ「なんだてめぇ!誰だ!」
??「僕はね~階堂組の人間だよ~
近衛 康孝。
幹雄くんはもう喋れねぇから!」
コテ「は?どういうことだ!!」
近衛「あははは、歯向かうからさー。
喉潰させて頂きました。」
幹雄「んぉぉ…フーッフーッ…
ゴホゴホッ」
近衛「お前ら半グレは今すぐ暴走族を解散するか
階堂組の傘下になるかどっちか選べ。」
コテ「どっちも選ばねぇよ!
こいつら全員ぶちのめす!!」
バンッ
裕二「うぁああああ!!足が!足がぁぁ!!」
裕二が足を撃たれた。
近衛「こっちには銃あるけど~大丈夫かなぁ?」
「やべぇ…あいつやべぇよ…」
「逃げる…?」
「いやでもそしたら幹雄は…」
「ど、どーすんだよ総長!」
第三陣と第四陣のリーダーがやられて
士気が下がるのがわかった。
コテ「お前ら!!やられたまま逃げんのか!!!
これは暴走族の争いじゃねぇ!!!
相手は本物のヤクザだ!!!
落ちてる武器なんでもいいから
とにかく拾って使え!死ぬな!捕まるな!
銃を拾ったら遠くに投げて捨てろ!!
ぜってぇ幹雄を取り戻して
こいつら潰すぞ!!!!!」
一気に、士気が上がった。
一同「ウォォォーー!!」
激しい戦いが続いた。
何時間たっただろう。
俺らはなんとか近衛達を抑えた。
近衛は、6人で抑えても抑えきれなかった。
話通りのバケモンだった。
銃を取り上げて近衛の額に当てた。
コテ「てめぇ、何が目的だ。」
近衛「……」
コテ「指示したのはだれだ!」
近衛「……」
コテ「撃つぞ。」
近衛「………君に…出来る?」
不利な立場になろうと近衛は
絶対に目をそらすことも無く
すごい殺気だった。
コテ「……」
近衛は動じない。
暴走族なんかと非にならない。
コテ「…撃てる訳ねぇよ」
柴田さんが出てきて近衛の腕を抑え
指を1本と耳を片方削ぎとった。
近衛「いってぇ…」
削ぎとった指と耳は袋に入れていた。
俺は銃を投げ捨て幹雄を連れてその場を後にした。
近衛「はぁ~…また死にそびれちゃったな。
あいつはだめだね~。
この世界じゃ生きていけねぇな。」
幹雄をすぐに病院へ連れて行った。
喉をかなり強く殴られたようで
咽頭外傷と診断された。
治るのに長いと1年かかるそうだ。
コテ「幹雄…」
幹雄「……」
今後の会話は、喉を休ませ回復の為にも
書き取りでのやりとりをメインにする
必要があるそうだ。
他にも数十名が軽傷、数名が重症となり
重症なメンバー達は入院となった。
真紅愛のメンバーの一部は
今回の騒動で真紅愛を脱退した。
脱退した人数は凡そ50名。
まぁまぁ、痛手となった。
予定していたBBQは中止となった。
コテ「仲間がこんなにやられて
その場しのぎは出来たけど…
やっぱり許せねぇよ…」
賢人「でも相手は階堂組ですよ。
コテくん、これは諦めた方が
いいんじゃないかな」
コテ「この平和な日本で平然と銃を持ってた。
販売ルートがあるはずだ。」
賢人「探し出すの?」
俺は、あいつらを絶対に許さねぇ。
殺してでも潰すと決めた。
この時の俺は冷静じゃなかった。
翌日、社長に呼ばれたので会いに行った。
「コテ、今回の事で許せねぇ気持ちはわかる。
だけどな、諦めろ。相手は本物のヤクザだ。
非力なお前たちに何が出来る?
相手は銃を持ってる。
人を殺すのだって簡単に考えてる。
今回は手を引け。」
「社長…俺は幹雄が可哀想でならんのっすよ
光輝も銃で撃たれて。
何十人も怪我して、入院までして、
それでも残ったメンバーはみんな
まだまだみんな戦意があるっすよ。」
「わかった。本気でお前たちが
階堂組を潰すというなら
俺も情報集めを手伝おう。」
「いやいや、社長何言ってんすか。
社長は一般人でしょ。
ヤクザに知り合いでもいるんすか?」
「コテ、一緒に来て欲しい所がある。」
社長に連れられて俺は名古屋市に来た。
そして雑居ビルの地下へ。
たどり着いた地下室はただの物置倉庫だった。
「このビルは俺が5年くらい前に
買ったビルだ。これは家賃収入のひとつ。」
「社長、すげぇっすね…」
「この地下はさらに地下に繋がる場所がある。
その地下室では、情報専門のやつらが
集まってヤクザ、はぐれ者、犯罪者
色々なやつらの情報を集めてる。」
地下階段を降りてくとカードキーで
扉を開いた。
するとまた扉が出てきて、
次は違うカードキーで入った。
最深部につくと、思いがけぬ人がいた。
コテ「賢人!」
賢人はメガネをかけていた。
賢人「あ、コテくんお疲れ様です」
コテ「なんだその真面目メガネは」
賢人「僕外ではコンタクトなんですよ。
ここでは目が疲れるのでメガネなだけです。」
屋代「実はな、賢人はうちの事務で働いて
2日目からここで情報屋の仕事を始めたんだ。」
社長がいうには賢人は他のやつらよりも
頭が良く、察知能力も高いと言うことから
初日でピンと来たらしく
情報屋の仕事をさせる事にしたらしい。
賢人「コテくん、黙っててすいません。」
賢人は今、階堂組を調べているそうだ。
社長「コテ、賢人はこれから
忙しくなる。周回も参加頻度が減ると
思うが、怒ってやるなよ。」
コテ「なんで??」
社長「大学合格したんだよ。
それもな医療大学だ。
卒業まで6年はかかるが
こいつは飛び級で合格しやがった。
高校卒業したら海外の医療大学生になる。
だけど日本で勉強したいから
って言ったらたまたまそこの教授が
日本の、それもこっちの大学で
教授してて、飛び級3年だから
って事で日本で勉強していいってよ。」
コテ「ど、どういうこと?」
屋代「色々考えて俺は賢人に投資することにした。
コテ、お前らにとって賢人は何かと
必要になる存在になりえる。
これからも仲良くしてやれよ。」
俺は頭が混乱していた。
賢人「コテくん、僕は優芽さんの話を聞いてから
ずっと何か出来ることはないかと
考えてたんだよ。優芽さんは無事に治ったと
聞いたけど、それは自然治癒力だろ。
技術でも治せるはずだ。
で、僕は社長がここに呼んでくれた日に相談した。
何日か悩んでたけど、屋代社長は
引き受けてくれた。」
コテ「優芽の為に…ありがとう…
す、すげーな。賢人の頭の良さは
俺がバカだからどれくらい
すげーのかわかんねーけど
とにかくめちゃくちゃすげーじゃん!!
頑張れよ!!!」
屋代「と、それとだな。
俺は賢人と出会わせてくれたお前にも
感謝してんだ。優芽の今までの治療費
出してやるから、落ち着いたら
2人で旅行でも行ってこいよ。」
賢人「これから病院へ行く時は
できるだけ医療大学の大学病院に
お願いしますね。僕も立ち会えるので。」
コテ「お、おう…何からどういえばいいのか
わかんねーけど
社長、賢人、2人ともありがとうございます…」
屋代「畏まんなよ~」
賢人「いえ、僕はまだ何も出来てません。」
コテ「すっげー今更なんだけどさ、
賢人って真面目じゃん
なんで海岸であいつらとつるんでたんだ?」
賢人「息抜き…ですね。僕が自由に
外出出来てたのは日曜だけで
あいつらは小学校の時の連れです。」
賢人はすげぇやつだった。
頭のいいやつは好きだ。
でも賢人がここまでのやつだとは
思わなかった。
それから俺らは階堂組の事について
色々と情報収集してた。
階堂組はここ半年で急激に増員。
多くの若手暴走族が
傘下に加わっていた。
そして各地で子供の行方不明者が
相次いでいて、
これに関わってるのが階堂組
なんだそうだ。
賢人「僕の見つけた情報だと
階堂組は海外で人身売買を
行ってると思われます。」
コテ「は!?」
賢人「薬物の取引も同時に行っている。」
柴田「どういうことだ…」
賢人「これはあくまでも推測に過ぎないですが
子供と薬物の交換で取引を
しているんじゃないかと。」
コテ「それ本当かよ!?」
賢人「黒髪で色白で、特に顔立ちがよい
ということで日本の子供は人気らしいです。」
柴田「酷い話だ…」
賢人「去年は30人の子供達が行方不明になってます。」
コテ「そいつらは人を売ってなにするんだよ。」
賢人「予想するとすれば
性的搾取、奴隷、臓器摘出などです。」
コテ「クソどもが…
で、なんでそんなことがわかった?」
屋代「まぁある場所にカメラしかけといたら
見事写っちゃったんだな。
そのカメラを仕掛けたのは賢人だ。」
コテ「すぐに警察に行けばいいんじゃないか!?」
屋代「動画だけでは人物の特定は厳しいだろう。
それにビデオは薄暗く画質も悪い。
コテ、ここを現場で抑えて潰すんだよ。
食い止めて阻止する。」
コテ「俺らの出番って事か。」
屋代「そうだ。やれるか?」
コテ「やってやるよ!!!」
俺は屋代社長の作戦に乗った。
無事退院した幹雄と裕二、
武尊と迅を連れて、
各陣のメンバーも20人近く集まった。
柴田さんも自分の子分達を連れて来てくれた。
俺は自分のメンバー全員に覆面をかぶせて、
バッドや、パイプ色々な武器になるものを
持って待ち伏せをした。
時刻が0時を回る頃あいつらはやってきた。
船に荷物を運んでいたのは6人
肩に担がれた荷物は
よく見るとウネウネと動いていた。
シートでぐるぐる巻きにされている。
その荷物を下ろしてシートを外した。
柴田「子供だ…」
手足が縛られ口元はガムテープで塞がれていた。
「もうこれは行くしかない…
お前ら行くぞ!」
一同「うおおおおおおおお!!!!」
俺たちはそいつらに襲いかかって
取り押さえることに成功した。
子供は3人いた。子供達を連れて
俺達はその場を離れようとしたその時
遠くから銃声が聞こえた。
パン
パンパン
バァン
「うぅっ…」
俺は撃たれた。
弾は腰に当たったようだ。
尋常ではない痛みと熱さだ。
「なんだ…これ…
弾…ここに入ってんのか…
熱い…熱い熱い熱い…」
焼けるように熱い弾丸は
ピアスを開ける時とは大違いだ。
内蔵が焼けつくされるような。
俺は弾丸を取り除こうと
傷口に手を突っ込んだけど
背中側だから上手く取れなかった。
立ってることすらままならなくなり
俺はそのまま横たわった。
柴田「……」
柴田さんは俺の腰に太い指を無理矢理突っ込んだ。
傷口はさけて広がり、さらに激痛が走った。
俺は叫んだ。
「うわあああああああ!!!!!!
いてえええええええええええ!!!!!!
いてぇ!!!いてぇよおおお!!!!!!
武尊「お、おい!おっさん何してんだよ!!!!」
柴田「……黙れガキが」
ゴリゴリぐちゅぐちゅと聞こえてくる音に
俺は気絶した。
目が覚めたら屋代社長たちがいた。
傷口は縫われていた。
かなり乱雑に。
俺の周りには精製水やら綿
注射器、色々なものが散らばっていた。
屋代「起きたか。よかった。」
コテ「こ、これは?俺は生きてんのか。」
屋代「おう。賢人の初めての手術成功だ。」
コテ「賢人…」
柴田「賢人凄かったぜ」
みんな嬉しそうに話すから
訳が分からなかったが
話をまとめてみると、
撃たれた後、俺の弾丸を
柴田さんが取り除いてくれたらしい。
そのあとはここにきて
賢人が手足を震わせながら
麻酔、止血、殺菌、そして
縫い合わせてくれたらしい。
傷口を改めて見たが、
小学生の手縫い並に汚くて
無理矢理傷口を閉じたような完成度だった。
賢人「コテさん、下手くそですいません。」
「これ何針塗ったの?」
賢人「30針くらい…普通なら7針とかで
収まるはずなんですけど…」
「あははは ありがとな賢人
お前は立派な医者になれるよ」
俺が倒れた後、現場には警察がきて
縛り付けていたやつら6人は全員逮捕された。
子供達も無事に親元に帰った。
「取引先との条件が合わずに仲間割れした。」
という事になっていた。
銃をぶっぱなしてたやつは
連続で撃ったせいで最後の弾で
銃身破裂を起こしたらしく
片腕が落ちていて
出血性ショック死で死んでいたそうだ。
階堂組の組長や幹部らは今回の件で
子供の誘拐、拉致の教唆犯として
逮捕に至った。階堂組は解散、
千田組が残った組員達を引き取った。
全員覆面をしていたからバレてはいないはず。
病院に行かなかったのも身バレを防ぐため。
だがバレてしまった。
まだ残っていたやつがいたらしい。
逃げたやつが俺らの単車を見つけた。
離れた所に置いたはずだったが
逃げたやつも必死だったんだろう。
その後は千田組が迅と裕二を
連れ去って人質に取り解散を求めてきた。
俺らは手出しする事もできずに
あっという間に解散となってしまった。
解散してからは迅も裕二も
小指が無くなった状態ではあったが
無事に帰ってきた。
屋代社長は、今後も俺らを恨む
ヤクザから守るためにも、
幸栄組の準構成員になることを進められた。
屋代社長は実は幸栄組の若頭だったらしい。
俺らが守ってもらう代わりに出来ることは
賢人の知識があれば充分ということになったが
いざ武力が必要となった時の為にと、
賢人は組長と杯を交し
若頭の子分、所謂幸栄組の若衆となった。
そして俺らは柴田さんの舎弟となった。
全部賢人に投げつけた形になってしまった。
屋代「とりあえず少しの期間、守るために
名前借りるんだ。その間だけでも
柴田さんの下っ端でもやっとけばいい。」
「わかりました。」
帰り道、俺は賢人と話をした。
「なぁ、賢人はヤクザになっちゃって
ほんとによかったのかよ」
「資格もなく許可もなく
手術したんだから
二度と表に出られないので
もう問題ないですね。」
「それは別に隠せばいいだろ。」
「表向きは普通の医者として過ごすのも
ありかもしれないですね。
でも、ちょっと楽しかったんですよね。
手術。
このままここに居るのも悪くないなって。
情報屋の仕事もそれなりに楽しいですし。」
「手術が楽しかったって!?
俺を弄んだのか…」
「いやいや違うくて
コテくん来た時気絶してるくせに
すげー酷い顔してて
麻酔打って少し経ったら
穏やかな顔で寝てて。
あー苦しかったんだなって。
この仕事してる人らって
保険証使えない人多いんですよね。
病院って警察と直結してるようなもんなので
情報出されたら終わりだし…
じゃあ僕がその役職引き受ければ
みんな困らないじゃないですか。
表向き医者なら、尚都合がいいですし。」
「賢人お前まじでいいやつだな。」
「いえ、屋代社長にはお世話になってますからね。
コテくんたちの怪我は僕が治します。」
「次はもっと綺麗に縫ってくれよー。」
「任せといてください。
大学でもっと勉強しますよ。」
その後の俺は、柴田さんに連れられて
初めて幸栄組長に会わせてもらった。
組長「お前がコテか。」
「あ、は、はい。」
組長「柴田から話は聞いとる。
今回の騒動で暴走族が解散に
なったんだろ。」
「は、はいそうです。」
「俺も若い頃はバイクが好きでな。
暴走族解散は残念だったが
旧車會を立ち上げてみないか?」
「きゅ、旧車會!?」
「警察からも許可が取れるし、
ちゃんと趣味という形が取れるから
暴走族よりは安全にバイクで
遊べるぞ」
「そうなんすね!!旧車會か…」
「お前はまだ若い。若すぎる。
わざわざ組に入らなくていい。
名前を貸してやるから
それを看板に旧車會を開設しろ。」
「は、はい!わかりました。
ありがとうございます!」
「名前はそうだな…
南城会としよう。」
「南城会の名前、大事に使わせて頂きます。」
俺は、屋代社長とも話をして
屋代社長が、俺の独立を進めた。
「南城会の看板で
建設会社と旧車會を立ち上げろ。
あくまでも幸栄組の組員ではないが
守りがあるってアピールできる。
変に手出はしてこないはずだ。」
幸栄組組長も屋代社長も
俺らを守るための術を教えてくれた。
その話から1年、なんとか取引先を集め
仕事が安定してきたので俺は18歳になって
一人親方から会社を設立し、
ついに屋代社長の元から独立することになった。
真紅愛のメンバー達は現役学生以外全員が
俺の下でバイトしてくれていたが
無事全員社員にした。
そして解散当時現役高校生だった者たちは
旧車會に入りたい者、そうでない者でわかれた。
学校を卒業して俺の会社に来る子もいたし、
夢の為に大学に行った子もいるらしい。
俺の建設会社は「南城会柏木建設」と名付けた。
総勢65人が集まった。
旧車會もそのまま南城会柏木建設で登録。
バイク好きな一般人も参加していた。
暴走運転、暴力行為は一切禁止として
平和で安全なグループを目指した。
それからは特にヤクザとの揉め事もなく
仕事が終わると雀荘で俺らは集まって
遅くまで遊んだ。
柴田さんには子供が居て
愛羅と言うらしい。
初めて会ったのは愛羅ちゃんが
小学生4年生の時。
俺らが19の時だ。
愛羅ちゃんは柴田さんに全然似てなかった。
コテ「愛羅ちゃんよろしくね」
あいら「…………」
優芽「愛羅ちゃん??」
あいら「………………ツーン」
俺と優芽わ目を見合わせ驚いた。
全然喋らないし、返事もしてくれなかった。
どこか人間離れしたような。
子供の癖に感情がなく、可愛げもない。
そんな子だった。
でも優芽は愛羅を気に入った。
よく遊び相手をして世話をしていた。
すると愛羅は
少しずつ心を開いてよく喋る子になった。
俺にも懐いた。
――
懐かしいな。
愛羅元気にしてるかな。
純凛は…残念だったけど。
俺は優芽を殺した犯人を
絶対に探す。