第8話 変身
セレナさんの呪解と私の回復を繰り返してる内に3ヶ月が経ちました。
「残すところあと1本ですね……この矢を抜くとセレナさんの能力は全て戻るんですね。」
「あぁ。世話をかけたなセルリアよ。」
私がセレナさんの記憶を見る事が出来たのはあの1回のみでした。私はセレナさんの背中に登り1番上、頭部近くの矢を呪解しに行きます。7つの矢を抜いた事で矢を守る結界はすでに効力を失っていました。私は結界を解かずとも普通に矢を握ります。
「ふぅー……」
私は大きく息を吐いて呪解の言葉を読み上げます。そして……!
「……取れましたー!セレナさんよく頑張りました!」
「子供扱いするでない……しかしこれでようやく元の姿に戻れるわ。」
するといきなりセレナさんが光始めました。そして光が消えるとそこには頭から小さな角を生やした女の子が立っていました。
「うむ。この姿の方がやはり落ち着くのう。」
「えっ……もしかして……セレナさん?」
「他に誰と思ったのだ?あの姿は戦闘用での。人型より楽に戦えるのだ。逆に魔力を抑えたい時や暮らす時はこのサイズが良い。休む時も場所は選ばずに済むからのぅ。」
「では。なぜドラゴンの姿でいたのですか?」
「簡単じゃ。矢が刺さって変身出来なかったのだ。」
なるほどと納得しました。
「それでは行くかのぅ。」
「えっ……どこへ?」
「決まっておろう。セルリアを嵌めた奴らを成敗しにじゃ!」
「えっ?何言ってるんですが!?ダメですよ!」
私はセレナさんを必死で止めました。なぜなら……
「何故じゃ?早くセルリアの汚名を返上せねばならんのだろう。」
「いえ、そういう問題ではなく……」
「うっ……」
私が説明する前にセレナさんは片膝をついてしまいました。
「まだ激しい運動が出来る状態ではありません。矢を抜いて傷を回復したとしても2年もここでじっとしていたのですから。これからはリハビリ期間になりますよ。」
「は、早く言え……」
セレナさんが恨めしそうに言ってきますが……さすがにそれは私のせいではありませんので悪しからずです。
「では、行きましょうか。」
「どこへ行くのだ?」
「私の実家です。もうここにいる必要ありませんからね。」
「えっ……行ってもいいのか?」
「もちろんです!歩くの辛い時は言って下さい。肩を貸しますから。」
「舐めるな!そのくらい自力で……なっ、何をしておる!?」
とは言ってますが、結構フラフラなので手を繋いであげます。
「いえ、手を繋ぎたいなと……ダメですか?」
セレナさんは私より身長が高いので少し上目遣いで頼む形になってます。
「……か、構わんぞ……そのくらいならばな……」
かなりウブな反応に私の方も少し頬が赤くなるのを感じました。とは言え人の姿になれたのならあれは要らなかったですね……
「ここがセルリアの家か?」
「ええ、今は父と母と一緒に暮らしてますがね。」
「あの隣の小屋はなんじゃ?」
「あー……あれはですね……セレナさんはドラゴンですから家の中には入れないと思いまして。作ったのですが……不要になりました。」
「お主……初めから我をここに住まわせるつもりだったな?」
「ずっとではないですよ?治るまでの間です。なるべく私が近くに居られる様にする為ですよ。」
「……そうか。」
どこか寂しそうな顔をしていましたが、私はあくまでも医者です。個人との繋がりを持つつもりはないのですから。
「では、中へ入って下さい!父と母が待ってますから。」
私はセレナの手を引いて家へと入りました。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
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