第23話 信用
夜が明けた頃、瓶の中に変化が現れました。
「おっ、ぷくぷくしだしたのぅ?温度調節間違えたのか?」
「いいえ、アルコールが生成されてるんです!良かったー上手くいきました!」
「しかし、これだけやって上手く行ったのはたったの2つとはな。これであの小瓶1000個になるのか?」
「いえ、素人でこれだけ出来れば充分です。あとは複製魔術で増やします。本来ならばここから更に10日は寝かせなければなりませんが時間がありませんので加速の固有結界を張ります。」
私は陣を地面に描いた後、1人で陣の中へ入ります。
「セレナさんは外で待ってて下さい。もし私が倒れた時は介抱してくれれば助かります。」
「倒れる前に止める事を考えよ。セルリアが倒れたら我では何も出来んのだぞ。」
私は頭をこつんと叩かれました。どうやら叱られた様です。セレナさんにはいつも助けられてばかりです。
「わかりました。でも、万が一の時は……よろしくお願いします。」
「全く……」
呆れられてしまいますが、やらなければなりません。カトレアさん達と約束しているので……それに先輩の為にも!
私は陣の中に入り発酵の促進と更なる酵母を足して発酵させていきます。そして10時間後……
「で、出来ました……」
「セ、セルリア⁉︎目の下にクマが出来ておるぞ!」
「あはは……この空間は物凄い速さで時間を進んでいますので……魔力も体力も消耗が早いんです。でも、おかげでいい物が出来ました。」
「まずはお主が休め!馬鹿者!」
セレナさんに叱られましたが、後は濾過をすれば完成です。流石に疲れました……だけど時間がありません。私はろ過する準備をします。しかしそこへある人が私を止めました。
「一旦休憩入れろ!」
「えっ?」
それはカトレアさんの声でした。
「貴様の熱意は分かった。しかしそれで倒れられたらエルフの汚名となる。少し期限が遅れても文句は言わんから休め。丁度茶菓子が出来た。こっちへ来て休め!」
物凄い剣幕のカトレアさんに言われてしまったので私は一旦休む事にします。下手をすると永遠にお休みする事になりそうでしたので。
「は、はぁ……ありがとうございます。」
「なんじゃカトレア。デレか?」
「しばくぞ……」
セレナさんから見ても珍しいとの事で少し遅いですが夕食となります。用意されていたのは果物と野菜でした。エルフの方々はお肉やお魚はあまり食べないと聞いていましたがどうやら本当のようです。
「とりあえず食べよ。そして寝ろ。貴様来た時よりやつれておるぞ。」
「そりゃー寝ずにずっと魔力を行使し、今もセルリアは1人10日間ずっと働いている魔術を行使していた。やつれて当然じゃ。」
「貴様、死ぬぞ。何故そんな無茶をする?」
セレナさんの言葉を聞いてカトレアさんが目を細めて本当に心配そうな目で聞いて来た為私は姿勢を正して答えます。
「助けたい人がいるんです。私の為に命懸けで戦ってくれた方なんです。その人が今私のせいで命の危機なんです。助けない訳にはいかないんです。」
「……それが最初に言ってた事なのだな。」
「はい。それに……私は医者です。助けられる命は絶対に助けたいんです。お医者さんは命を救うのがお仕事ですから!」
「……本当にセレナの言う通りの奴だな。」
カトレアさんが少し微笑んだ後セレナさんに向き直りました。
「じゃろ?愚直でいい奴じゃ。だからここへ迷いなく連れて来たのだ。」
「フッ……貴様より義に厚いんじゃないか?セレナ様」
(あれ?今様って言いませんでした?)
「なんじゃ。もう試すのは終わったのか?」
「ええ、これだけの信念をお持ちでしたらこの者を信用しても良いです。」
「えっ?えっ?どういう事ですか?」
混乱する私にセレナさんが説明してくれます。
「なぁにただの審判じゃ。お主がエルフの長カトレアに認められるかのな。そして我もそろそろ話さねばな。我はセレナ・ブルック。龍王の娘にして次期龍の里の長になる者だ!」
「えっ、えっ?」
「まぁ落ち着けセルリア。前にここへ来た時紹介したい人間がいると言ったらそれこそカトレアと大喧嘩したんじゃ。」
「それは私のことですか?」
「そうじゃ。じゃからのぅ。それなら試してもらおうと思ってのぅ。セルリアが本当に信用に足るかどうかをな。」
「そして、信用に足ると判断した。だからもう良いのだ。元より消毒液はある。そしてセルリアよ。お主が作ったのは純度が高すぎて我らでは扱えん。だから後で薄めさせて貰う。」
「じゃ、じゃあ……月輪草を。」
「無論渡そう。じゃが月輪草が必要な物は呪いの類。一体何の呪いを受けたのだ?」
「はい。回復阻害の刻印を細胞に刻まれてます。この刻印なのですが……」
「……ふむふむ……これはちと厄介だな……まだ時間はあるのだな?」
「あまりないかと……自死の薬も使われているので……今は時間停止の魔術空間に入って貰ってるので何とかですが……限りなく状況は悪いです。」
「分かった。自死の薬の解毒薬はこの里にあるから任せよ。問題はこっちの刻印……この刻印は少し時間がかかるゆえ、先に解毒薬を持って行け。とりあえず命は繋げるはずだ。」
少し待っているとエルフの方が解毒薬を持って来てくれました。そしてそのまま私はセレナさんに乗って先輩の病院へと戻るのでした。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
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