第22話 掃除
「セレナさんまずは窓を開けて下さい。次に近くの川からお水を運んで来て下さい。」
「分かった!」
私は箒と雑巾を持って掃除を開始します。積み上がってる本はまず本棚に、埃が被ってる机と椅子はセレナさんと一緒に一度外に出して埃を落とします。
「ケホケホ……」
「凄い埃じゃな。蜘蛛の巣もあるぞ。」
「たぶん元からあまり掃除はされていなかったのでしょう。セレナさんは外に出した机や椅子の埃を落として下さい。私は中にある蒸留機を掃除します。」
「任せておけ。」
蒸留機の中には埃は入っていませんでしたが、その周りには埃の山が出来ていました。私は雑巾を使って丁寧拭いた後、水拭きをして綺麗にしていきます。
「だいぶ見違えたのぅ。」
「はい。ですが今ある消毒液は全て処分しなくてはなりません。」
「何故じゃ?」
「消毒液にも使用期間というものがあります。より純度が高いものほど劣化は速いんです。エルフの方々が作っていたのでしたらそれは人が作るそれとは比べ物にならないはずです。」
「しかし。処分はどうするのだ。」
「ここに先程お水を汲んで来て貰ったバケツがあります。この中に全て移します。あとは自然に気化していくのでそれを待ちましょう。川へ流すのも土に撒くのもよくありませんからね。」
「そのように処分するのだな。しかしすぐに無くなるのか?」
「それは難しいですが、水より早いですよ。アルコールは水より気化するのが速いですから。」
さて、ここからです。
「して、消毒液はどうやって作るのだ?」
「これを使います。」
私が出したのは白い粉末状の物です。
「これはただの砂糖です。そしてこれを使うにあたって重要な要はセレナさんです。」
「わ、我か?我は医学の知識はないぞ?」
「分かっています。必要なのは火炎魔術のコントロールです。」
「火炎魔術じゃと?」
「はい。私はそういう魔術は使えませんのでセレナさんにお願いします。なるべく急がないといけないので少しの間ですがセレナさんは休んでてください。今夜は徹夜ですよ。」
「なんとー!」
と言う事で、セレナさんは今のうちに休んで貰って私は川から汲んできたお水を蒸留機で蒸留し、蒸留水を作ります。ここは水を沸騰させて不純物を取り除いくだけなので火加減は問題ありません。これを3回繰り返すことで純度の高い水が出来ます。純度の高いお水を使う事でより高い消毒液が作れます。
次にお砂糖をお湯を入れて溶かします。出来た物をゆっくりかき混ぜて砂糖の塊が残らない様にします。そして先程カトレアさんに戴いた酵母を入れます。これを10個の瓶に分けます。
「セレナさん。起きて下さい。」
「ん?出来たのか?」
「いえ。まだです。それにここからがセレナさんのお仕事ですよ。」
「そうなのか?」
「はい。セレナさんが要なのでよろしくお願いします!」
「うむ、では何をすれば良いのだ。」
「温めて下さい。」
「まぁそうじゃな。火炎魔術を使うと言っておったからな。」
「ええ、ですが。なるべく35℃をキープして欲しいんです。」
「35℃?」
「はい、酵母がよく働いてくれる温度なんです。45℃を超えてしまうと酵母は動きが鈍くなります。そして60℃を変えてしまうと死んでしまいます。」
「本来は1日待たないといけませんが時間がありません。なのでセレナさんには多少無理をさせてしまいますが、お礼は弾みます。」
「ならばまたセルリアの家の料理をご馳走してくれ!我はグルメじゃがセルリアの家の料理が1番美味かったからのぅ。頼んだぞ!」
満面の笑みで言われてしまっては断れません。帰った時に母とまた頑張って作りましょう。
まずは大きな鍋にお水を入れます。そして先程の瓶を入れて水に浮かばない様にします。ここからはお水を35℃になるまで温めていきます。今回は鍋が大きい為外での作業です。
「セレナさん。お願いします!」
「任せよ!」
そうして夕方から続けた作業も日が暮れて夜になります。夜になると更に寒くなるため温度調節が難しくなって来ます。加えて温めると言うことは水が気化していくと言うこと。減っては足しての繰り返しです。
私は温度計を見て35℃前後を確認しつつ時々お湯をかき混ぜます。セレナさんは火加減を調整する為に鍋の下の薪と火炎魔術を見てくれています。
「セルリア、寒くないか?」
「大丈夫です。キツイのは今日だけですから。セレナさんは魔力持ちますか?」
「このくらいなら余裕じゃ。集中しておかんと温度が上がってしまうのが難しいがのぅ。」
「すいません……本当は1人でやるべきことですが……私が未熟なばかりに……」
「何を言う、人には向き不向きがある。セルリアは我に出来ん事をやっておる。その代わりセルリアが出来ん事を我がやってるだけに過ぎんのだ。だからセルリアが謝る必要はないのだ。」
「そう言って頂けるとこちらも救われます。今作業に入って約6時間です。後半分です。頑張って下さいセレナさん。」
「お主もな、セルリア。」
私たちは寝ない様に互いに話をしながらも夜明けまで作業を続けました。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
次回更新もお楽しみに!
続きが気になる!という方はブックマークを!
面白い!って思った方は下の星マークをタップ!
してもらえると幸いです!




