第11話 その頃2
「何よこれ!」
セルリアがクビになった後、私はずっと院長の汚職を調べていた……でももはやそんなレベルの話では済まされない事になっていた。
「カスミ先輩……私がこんな事知ってもよろしいんですか……?」
青い顔をして聞いてきたのはセルリアと同期のルミ・シーラだった。彼女もセルリアが医療ミスをするはずないと思っていた数少ない仲間だった。本人はセルリアをライバルと思っていたようだけど……
「ルミどころか私も知ってはいけない物の様ね……」
出てきたのは医療ミスの数々、しかも全て院長の家系を誰かが尻拭いさせられている。というものだった。しかも隠し方も杜撰と言っていい。患者さんのカルテはずっと保存しておかなければならない。そして患者さんの死後も10年は保管を義務付けられている。それは何らかの医療ミスや事件の証拠にもなるからである。だからおいそれとは捨てられないんだ。
「でも、偽造のカルテを作ったのに何故燃やさなかったんですかね?」
「偽造のを燃やしたとしてもし残ってた物を発見されるくらいなら全て纏めて置いてた方がいいからでしょ?現にこうして院長の屋敷の厳重に管理された車庫から盗んできて貰ってるんだから。」
私たちは汚職の件を探る為に裏社会の人間にまで手を借りていた。そして院長の家に恨みのある人間と接触し、その動向を伺った所。院長がチェックは2日に1度書庫に来てカルテを確認している事を知ったのだ。
そして昨夜。盗人専門の裏社会の人にカルテを盗んできて貰い、今日の夜に返してもらう事になっている。
「ありました!セルリアが医療ミスをした事になったカルテです!」
私はミルから渡されたカルテを見てやっぱりと思った。
執刀医:クローゼ・バーク
補佐医:ハーマス・バーク
ハーマス……それは院長の名前だ。つまり簡単な手術を経験させてかつ自分が補佐に回る事で安全な手術を行うはずだったという事だ。
「つまりセルリアは2人の生贄になったわけね……」
この事実を知った時私は頭が沸騰するくらい怒りが込み上げた。
「でも、何故優秀な人財を切り捨てるのでしょう。使えない先輩達なんていくらでもいるのに……」
「なに?それは私のこと言ってるの?」
「ひ、ひがいみゃす、ひがいみゃす!」
私は生意気な後輩のほっぺたを摘み上げたがどうやら言いたい事は違うようなので解放してあげた。
「だっておかしいじゃないですか?わざわざ優秀な方を切るよりも普通の方を切った方が病院としてはメリットが高いはずですよね?」
「はぁ……分かってないわね。ミルは。いい、あの院長は自分達が1番じゃないとダメなのよ。その為にば自分たちより優秀な人がいたら困るのよ。」
「えっ……まさか……」
「そのまさかよ。自分達より優れた人間は消して、でも病院の評価を下げさせない為に平均以上は残してるのよ。」
「自己中じゃないですか!?」
「それ以上よ。もはや傲慢なんて言葉じゃ済まされないわ。死亡事故も出てるし、早急に何とかしないとね!」
私はカルテを片付けてセルリアのカルテだけを取って残りは返してきてもらうのだった。
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