絶対幸せになってやる!
私はそれなりにエリートの道を進んできた。小学校では毎年のように表彰され、中学でも高校でもテストのたびに学年で上位をキープしていた。大学は偏差値の高い国立大学に行き、超一流企業に勤めることになっている。
それは全て親のためだ。その背景には全部親が関係している。
表彰されていたのは絶対に取れるように親と私で徹夜しながらも完成させたから。中学、高校で上位を取れたのは、父親が「上位を取れないなら要らない」と言ってきたから、必死に努力した。大学は、気に入らないことがあるとすぐに殴ってくる父親から逃れるため。それでも父は追ってきた。超一流企業は、海外に行けるから。
その選択が間違ってるなんて思わないでしょ!?
あの日、私はアメリカのある場所で使う物の視察に来ていた。
「これは素晴らしいね」
「だろう?」
「ここの部分を…」
などと現地の作業員と話しているときに、悪夢は始まった。
「有紗!こんなところで何をしているんだ!」
「アリサ、あの人は誰だい?」
「…ッ」
お父さんが来た。私のそばにいようとしに来た。大学の時もそうだった。私はあっさり見つかって家族と住む羽目になったんだ。
「何しに、来たの…」
足がすくむ。なんとか絞り出した言葉は震えていて最高にダサいものだった。
「アリサ、僕の後ろに…」
「いえ、大丈夫よ。むしろ私が…」
父親にはわからない英語で話す。それがまずかったようだ。
「有紗!」
私たちは工事の足場の上で話していた。上に登ろうと手段を探す父親から逃れようと、一歩下がる。
「アリサ!危ない!」
そう言われた時にはもう遅かった。
私の体は柵から乗り越え、真っ逆さまに落ちた。
「アリサ!」
「有紗!」
最後に見たのは、作業員に取り押さえられる父親だった。
よかった。これで…安心して眠れるよ。
プロローグ的なところになります。