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時間と精霊の狭間に沈む月  作者: 風見渉
第一章
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紅茶と炭と

 翌日もティアラはティーセットを用意して私を起こしに来た。


「おっはーよーございまーす、マスター」

 ティアラに呼ばれ続ける『マスター』と言う名称に居心地の悪い引っ掛かりを感じる。


「……。」

「どーしたんですかー?()()思い出しましたかー?」

 一見にこやかに笑いかけてくる──が、その瞳には探るような冷えた光がある。

『…この子、明らかにわざとやってる』

「…私は、貴女の言う『マスター』ではないと思うわよ」

 ティアラはだからどうした?という表情をしてこちらを見ている。

「それを決めるのは私ですよー?」

 ティアラが何をさせたいのか良く解らなかった。





 手際よく淹れられた紅茶が目の前に置かれている。

 ここ数日を思い返すと胃薬も欲しいかもしれない。


「…どうしました?別に毒とか入ってませんよー」

 だって、今頃盛るならそもそも仮想空間から出てきてもらいませんしー。と言葉が続いた。


「いや…紅茶以外に出てこないのかなと…」

「えっ?お腹空きました?」

「全然」

「じゃー、要りませんよね?」

「そもそも何日も空腹感感じないのおかしいわよ…」

「…あぁ、マスターは食事しなきゃならないって概念あるんですねぇ」

──それが普通だと思うんだけど。

 ティアラは少し遠い目をして話を始めた。

()()()食事食べるのも面倒だったのでー」

 ティアラのいう『あの人』が喜ぶべきか誰を指すのかすぐ解ったのだった。





「むかーしのとある人ですよー」

 そう前置きがあった。



 食べることに無頓着過ぎて、食事は携帯栄養食で構わないという人だった。

 読書や考え事をしていると食べるのが面倒で、良く食事を抜いて貧血で倒れる有り様だった。

 食べることに興味が余り無いので、留学していたときは食事番がローテーション組まれたのだった。

 料理を作らせると、食材で綺麗な炭を作り上げる達人だった。



 料理壊滅だったっけ…?作る必要性がない環境にいただけだと思っていたのだけど…。


「…食材が研究レベル品質のグラファイト化するんでー料理禁止喰らいましたねー。食材可哀想だから…でも謎ですよねー家庭用コンロとフライパンでどう作るんでしょうねぇー」

 何処をどう突っ込んでいいのか……。


「酷いと目の前に出されても、面倒で食べるの嫌だとか我が儘いうのでー」

 ニヤリ、とティアラがこちらを悪い顔で見る。

「紅茶に必須栄養素溶かし込んで呑ませましたー」

 目の前に置かれている紅茶を見る…。

「何も入ってません、よー?」


 非常に目の前に置かれている紅茶に手を付け難くなってしまった。

 ふと、疑問に思った。

「…味ってどうなの、それは…?」

「『ミルクと砂糖を多めに入れれば何とかなるだろ!』って言われましたよー?」



 ()()の記憶として思った…──正直記憶が抜け落ちて知らない事とは言え、済まなかったと謝るべきであろうか…と。

食材、大事にしましょう!

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