相対
【光速(光速度)】
光が伝播する速度の事。
真空中における速さは299,792,458 m/sと定義される(約30万km/s)
※地球⇔太陽 約8分19秒、地球⇔月 約1.3秒
「えーっと、ですねー…」
頭よりも、身体が重く感じる。
感じているだけである。
ティアリエルという少女を認識してから約八時間後──私の意識が仮想空間より現実世界に拉致されていた。
「マスターの身体は即席で造ってるのでー、耐久性が低めですねー」
身体、とやらの説明をしてくれている──が、記憶を掘り起こすならば、だいぶ不味いのではないかと思う。特に倫理観が…。
「あとー、この宇宙船には地球上の重力の2割位は常時重力発生させてます。螺子とか細かいのがふよふよ浮かんでも危ないのでー」
記憶の欠落がそれなりにあるようなので、解らないことは聞き流しておく。過剰な知識は私の管轄外だし、聞いたところで色々と後悔しそうな気が……。
「マスターの方は、促成培養なのとー…素体がー…」
これ以上、これは聞いたらいけないような…──
「…少し、顔色悪いですねー、マスター?」
ティアラはにっこり笑ってそういった。
──解ってて言ってるような…これ。
かなり性格が黒いのではないかと思う……。
溜め息しか出てこなかった。
「…光速で移動しているのよね?」
「ほぼですねー。そこまで速度出していないときもありますしねー」
「二百年ねぇ……」
二百年位ならば彼女の周辺、誰かしら普通に生きていそうである。現に当時の最長老が解っているだけで二千年…。
「えーっとー、マスター。これでの移動時間が二百年なのでー、地球と時間がズレますよー」
「どれくらいの時間?」
…ほぼ光速って言ってたわね…。
光速の何%出してるのかしら……。
「低速や停泊期間の誤差いれても一万年くらいですかねー」
──はっ……?
いやいやいや。おかしいでしょ!
「光速の99.99%で移動してるのでー」
「その数字おかしいでしょ!…エネルギー源どうしてるのよそれは!」
「……知らない方が良いこともあるんですよぅー」
目の前のティアラが目をあからさまに反らし、目を伏せる。
『…記憶が無い方が、楽だと思いますよぅ……』
微かに呟かれた声は、耳には届かなかった──
むずかしいこと言ってますがやっぱり黒い(´・ω・)