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時間と精霊の狭間に沈む月  作者: 風見渉
第一章
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頭痛と無邪気

「仮想空間ねぇ…」

 …記憶の遠いところにあった、とあるサンドボックスゲームが頭に浮かんだ。


「まぁ上に完全閉鎖って付けるといいと思いまーす」

 にこにことモニター越しに、悪気の無い笑顔が見える。

 彼女の言葉をそのまま信じるなら現在は宇宙空間を光速で移動しているのだ──その時点で開放的な仮想空間はありない。



 回りの空間を見回す─見回したところでモニター以外に何もないが。辛うじて足元と頭上に格子(グリッド)が見えるのみ。

 仮想空間というならもう少し何か見映えするもの置いても良さそうなものなのに。


「結構ギリギリらしいので、オブジェクト省いたみたいでーす」

 声に出ていたのかと思うほどにタイミングのいい言葉が降ってくる。

 何が、とは聞かなくてもまぁ理解は出来る。

 …苦手ではあるけれど。

 記憶である私の領分とは違う。


「なーんかむくれてますねー」

 別にむくれているわけではないけど、上機嫌という訳でも…。


「このままだと好感度駄々下がりですー」

 …なんだろう……?


「オブジェクト追加出来ないのかなぁー」

 ティアラがどんどん棒読みになってきている気がする…。


「言葉の選択肢、間違えたかなぁー」

 ()()()…?

 何とも形容のしがたいちょっと黒い感情が沸き上がってくる。

 モニターの向こうはやはり悪気の欠片が一つも無さそうな顔があれこれと思案している。

 …モニターの画面、オフに出来ないのかしら……?

 これじゃまるで…い…──


「…飼育ゲームみたい。ですよねー」

 ……。

 せめて、育成と言って……。





「…んー」

 クリティカルダメージを私に与えたティアラ──ティアリエルがモニター越しに何かを準備しているように見えた。

 そうなってしまうと私はティアラをモニター越しに見ている以外にやることがない。


「…あれと、これと、それ…」

 ちょこちょこ動き回るティアラを観察しているが、モニターに他の人影が入ることがなかった。


『二百年、ねぇ…』

 自分の中で、先程の言葉を反芻する。

 色々と思うことはある。聞きたいこともある。

『他に人はいないのかしら…?』

 やることが、無い。

 ぼんやり何もない空間を再び眺めるか、モニター越しに動き回る少女を横目で見るかのどちらかしかなかった。



 暫く放置された後、モニターから呼ばれた。


「まぁーすーたぁー、不貞腐れないでー」

 …不貞腐れてはいないのだけど。


「えっと。準備できたのでお伺いでーす」

 何を?


仮想空間(そっち)だと何もないので、こっちに出ませんか?」

「…はい………?」

「了承と見なしますので、身体製作スイッチ押しますねー」

 …。

 ……。

 疑問系と取って貰えてないようである。

 さらっと良く解らないこと、電子レンジでご飯温めますねーの感じで言われてるんですが…。


「時間が八時間はかかると思いますー」

 満面の笑顔で微笑みかけられた── 


 

ティアラが無邪気に黒いです。

やっぱり名前の出てこない人が可哀想な気がしますが、気にしない(・ε・)

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