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時間と精霊の狭間に沈む月  作者: 風見渉
第二章
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タブロイド

 ブランチを終えたルシェイルは、テーブルに置かれた大衆紙(タブロイド)に手を伸ばし紙面を広げて流し読みをする。

 シェフはキッチンに戻り、食後のデザートの仕上げをしに行っている。


 大衆紙は余り情報源としては期待はしていない。

 精度の高い情報が欲しければ、自分で探すか後ろの執事に聞いた方が余程正確である。

 情報源ではなく、デザートが運ばれてくるまでの暇潰しといった方が正しいかもしれない。


 彼女は注がれて置かれた紅茶のカップを手に取り、つまらなそうに記事に目を流していった。





 幾つかの大衆紙を流し読みしたあと、一つの見出しで目が止まった。

 比較的三文記事が多いので有名なゴシップ系の大衆紙だ。


【ロンドンに吸血鬼!?血液の無い遺体見つかる】


「………。」

 

 ルシェイルは記事を二度見する。

──まぁ、いつものやつよね。

 宇宙人と交信したとか…そういう類いの……。



「あぁ、これですか。…箝口令敷かれている筈ですが、洩れてますね」


 後ろから覗き込み、その記事を確認した執事がやれやれといった風に言う。


「大佐の部隊で2体回収してる筈ですよ」

「……どういう事?箝口令出しているのはエドワード卿なの?」

「昨夜からエドワード卿が、大佐の所に行っています」


 非常に面倒そうな事にエドワードも大佐も首突っ込んでるなという印象だった。

 ただ、ルシェイルにはそれ以上の感情は湧いてこない──ゴシップ専門紙の記事を真に受けてどうする?という思いだが、()()()()()が噛んでいると言うのが少々気にかかる。


「…二十数年前にも同様な事が東京で起きたことがあります」

「……東京?」


 執事の言葉は、それなりにルシェイルの興味を惹いた。

 銀髪の執事は少々遠い目をして言葉を続ける。


「あの時は…殲滅戦で……あの後、暫くはトマトジュースとかそういう赤いもの見たくなかったですねぇ……」


 後にルシェイルは、この時少しでも興味を覚えたことを後悔することになるのだった。


「と言うか、大佐の所で2体って複数有るわけなの?」

「…何もしなければ、今後増えると思いますよ。体内から血液と心臓抜かれた死体」


 その言葉を聞きながら、ファナの状況確認したら大佐の所かしら…と紅茶を飲みつつ、ぼんやりルシェイルは考えていた。

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