タブロイド
ブランチを終えたルシェイルは、テーブルに置かれた大衆紙に手を伸ばし紙面を広げて流し読みをする。
シェフはキッチンに戻り、食後のデザートの仕上げをしに行っている。
大衆紙は余り情報源としては期待はしていない。
精度の高い情報が欲しければ、自分で探すか後ろの執事に聞いた方が余程正確である。
情報源ではなく、デザートが運ばれてくるまでの暇潰しといった方が正しいかもしれない。
彼女は注がれて置かれた紅茶のカップを手に取り、つまらなそうに記事に目を流していった。
幾つかの大衆紙を流し読みしたあと、一つの見出しで目が止まった。
比較的三文記事が多いので有名なゴシップ系の大衆紙だ。
【ロンドンに吸血鬼!?血液の無い遺体見つかる】
「………。」
ルシェイルは記事を二度見する。
──まぁ、いつものやつよね。
宇宙人と交信したとか…そういう類いの……。
「あぁ、これですか。…箝口令敷かれている筈ですが、洩れてますね」
後ろから覗き込み、その記事を確認した執事がやれやれといった風に言う。
「大佐の部隊で2体回収してる筈ですよ」
「……どういう事?箝口令出しているのはエドワード卿なの?」
「昨夜からエドワード卿が、大佐の所に行っています」
非常に面倒そうな事にエドワードも大佐も首突っ込んでるなという印象だった。
ただ、ルシェイルにはそれ以上の感情は湧いてこない──ゴシップ専門紙の記事を真に受けてどうする?という思いだが、大佐の部隊が噛んでいると言うのが少々気にかかる。
「…二十数年前にも同様な事が東京で起きたことがあります」
「……東京?」
執事の言葉は、それなりにルシェイルの興味を惹いた。
銀髪の執事は少々遠い目をして言葉を続ける。
「あの時は…殲滅戦で……あの後、暫くはトマトジュースとかそういう赤いもの見たくなかったですねぇ……」
後にルシェイルは、この時少しでも興味を覚えたことを後悔することになるのだった。
「と言うか、大佐の所で2体って複数有るわけなの?」
「…何もしなければ、今後増えると思いますよ。体内から血液と心臓抜かれた死体」
その言葉を聞きながら、ファナの状況確認したら大佐の所かしら…と紅茶を飲みつつ、ぼんやりルシェイルは考えていた。




