KOI-314c
──ケプラー138d(KOI-314c)
大量の水を湛える惑星。
本星であるケプラー138を楕円軌道に周囲をしている。ハビタルゾーン上かは微妙なライン。極地方は通年を通し200K程、赤道付近は340K前後である。酸素は地球の7割程度、その分二酸化酸素が多い──赤色矮星を周回する三つの惑星は共鳴軌道上にある。
「…寒いんだけど……。」
モコモコの防寒具を身に纏っていても、まだ寒い──目の前には巨大な岩石のような氷が辺りを埋め尽くしていた。
見渡す限り、ごろごろと氷が見える。
氷沙漠、とでも言うのだろうか?
足場もよろしくないし、冷えが足先から上ってくる。
「来なきゃよかったんですよー」
ティアラは極寒の中、コートすら着ていない。ワンピースのみである。
二人は現在、ケプラー星系の第三惑星の極地方にいる。
「ここに何の用事があるのよ…。」
「ここの氷って、重水なんですよー」
ティアラの顔がぱあっと輝くように笑う──そんな笑顔になるものでもあるまいに…。
──【重水】D₂O・通常の水より比重が重い。軽水(通常の純水)と科学的性質は似るが、物理的性質は異なる。原子炉の減速材として使われたりする。尚、重水の氷は軽水に沈む。
「……通常生命体に致死起こすわよね?」
「摂取水分の50%越えれば確実ですねー」
「……。」
「ここだと氷の状態なので腐敗の心配なくていいですしー」
液体状態だと、バクテリアいそうですしねー。
濾過装置壊れちゃいますねー。
氷の方が収納面でもいいんですよー。
「はいはーい。マスター邪魔でーす。ついでに危ないので下がってくださいねー」
そう言ってティアラは肩から掛けていた茶色い鞄から何かを取り出した。
「何故、本?」
古めかしい装飾された小さな辞書のような物だった。
「違いますよー。収納道具ですよー」
彼女が蓋らしきモノを開けた瞬間──それに向かって風が吹き荒れる。
「エロイームエッサイムー♪」
微かにふざけた聞こえるが、風に飛ばされないようにするのが精一杯。
見渡す限り埋め尽くされた巨大な氷が、綺麗さっぱり消失をしていた。
自分の脇をすり抜け、巨大な氷が宙を飛び吸い込まれていく。
時間にして1分も無かったかもしれない──轟音と共に風と氷を吸い込み終えるまでは──
それの蓋を閉じられたときに、目の前の世界が一変していた。
「…何なの、それ……。」
「だーかーらー。収納道具でーす」
「収納方法と、サイズに対する収納量おかしいわよ…」
「これはこういうモノですしー。便利そうだったのであの人達からパクってきましたー。便利でしょー?」
その場でくるりと回ってスカートをふわり、と広げた。
爽やかに便利でしょ?と言えば良いってものではないのだけど…。
「考えるだけ無駄ですよー。どうやっても科学で説明できない代物ですからー」
いい笑顔。
私に出来ることは、思考を諦めることのようだった。
やっとファンタジーっぽい要素の物体が。
ちょっとサイエンス寄でしたので(・ω・)
重水の補足を少々…。
この二人に持たせると危ないような気がしますよ…。
※重水は一般的な水にもごく少量含まれます。摂取水分の10%越えると人間には色々不味いそうです。。