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序章
空は漆黒の虚無に飲まれ、星の瞬き一つもない。
深淵の闇、そのもの。
総てが終わり、そして始まる狭間の時間。
彼の目の前には女が一人横たわっている。
二度と目を開けることも、起き上がることもない。
ただ、急速にその身体から体温という温もりが消失していくだけ。
かける言葉はなかった。
彼は横たわっている女を抱き上げると、背後にそびえ立つ半壊した城に向かった。
暫くののち一人で出て来た青年は何もない空を見上げた。
彼女の言葉が頭から離れない。
『お願いだから…私を、殺して…』
彼女を置いてきた城の方へ視線を向ける。
一瞬の感傷と、己の罪を再認識して。
──跳んだ。
時間と空間を──