真の敵の出現
ミエルが跪いて報告した。
「予想通り、カナッグ様が勝利を収めました」
「我が角はきちんと役に立ったようじゃな」
イルースィヴは「さて……」と言うと俺を見た。
「名を言えない者……その正体が誰かという話だな」
イルースィヴは頷いた。
「うむ。この地区にいたシカは……余、ロプ、カナッグ、ゴールド階級に射殺された者、そして……父上じゃ」
ロプが頷くと同時に、父親アサルトも出てきた。
「予想通り、不死者の軍団を操っていたのは殺害された者じゃったな」
「不死者と交戦して倒したカナッグも除外だな」
イルースィヴは鋭くアサルトを睨んだ。
「さて……そろそろ正体を教えてくれんかの父上……いや、何と呼べばよいのかの」
「本物のアサルトに似ていると……我ながら思っていたのだがな」
アサルトを名乗っていた者はイルースィヴを眺めた。
「どうして、余が本物でないと気付いた?」
イルースィヴは目を細めた。
「気づいたのは、ほんの最近じゃよ」
「そうか……? お主はもっと前から気づいていたじゃろう」
ロプは微笑を浮かべると、昔話をはじめた。
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ロプが語りはじめたのは、俺たちがロプ軍団を破った直後のやり取りだった。
「何も言い返せん。好きにするがよい」
「そうか。ではその首を貰うとしようか」
弓を引き絞ると、背後から声が聞こえてきた。
「まあ待て、バダルライン卿」
この声は……
姿を見せたのは、やはりイルースィヴだった。
「何じゃお主……我を笑いに来たのか?」
「違う。ちと耳を貸せ」
「その手には乗らんぞ……落ちぶれても我は……」
「いいから貸せ」
そう言いながらイルースィヴはロプに近づき、小声で何かを囁いた。
「実はの、この森の奥深くでこんなものを見つけた」
「人間の骨……ん、ちょっと待て、これは!?」
ロプは一瞬だけ後ろを見ると、声を殺しながら言った。
「お主に、これがなんだかわかるか?」
「相棒じゃろう!?」
イルースィヴは頷きながら何かを囁き続けた。
「そう。これは互いを自分の分身とさえ呼び合った……父の相棒アレックスの遺骨じゃ」
「なるほど。お主がこんなマナもないような土地を支配するなど……妙だと思っておった」
「……」
「……」
「見たところ、子孫と思われる者が混じっているが……伝えてあるのか?」
「伝えておらん。奴の手の者がどこに紛れているかわからぬからな」
「慎重なイルらしい判断じゃな。じゃが目星はついているのじゃろう?」
「父上と例の者は、同じ毛色をしておるの……」
ロプは不敵に笑った。
「なるほど。お手並み拝見と行こう」
2頭はしばらく小声で囁き合うと、やがてこちらを見た。
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ロプは笑みを浮かべながら言った。
「では、そろそろ……イルースィヴに言い当ててもらいたいものだ」
「そうじゃの。一角獣トレンチ」
大鹿アサルトの角が外れると、姿が変わっていき、鹿毛色の一角牝馬トレンチが姿を見せた。




