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ブラックビーチ地方攻略

 俺はすぐミエルを見た。

 イルースィヴやジェイダン、マミエルがいるとはいえバダルライン地方がどうなっているのかは気になるものだ。

「向こうはどうだ?」

「どうやら、ゴブリンエンペラーは敗走、ゴブリンパラディン1、ゴブリンナイト3、ホブゴブリン7を撃破する大戦果を挙げたようです」

「おお! 味方の被害は?」

「ゴーレムがわずかに壊れたのみ。どうやら……聖樹大公……聖樹公の父君が援軍に現れた模様」

「なるほど。それならば……圧倒的戦果というのも頷けるな」


 そう言いながら頷いたが、ふと疑問も感じた。

 これだけのゴブリンの軍勢を退けたのだから、いくら親子と言えど見返りもなく引き受けてくれたのだろうか。

「なあミエル……イルースィヴの父君は何か要求してきたりしたのか、例えばマナとか?」

「マナの要求はありませんでしたね。代わりに聖樹公が個人的な要求を呑む形で、聖樹大公も援軍にはせ参じて下さったようです」

「それは一体……?」


 ミエルが困った顔をしたとき、別の方向から声が聞こえてきた。

「お見合いじゃよ」

 振り向くとやはり白い影。イルースィヴの登場である。

「何でも由緒正しい血統の美しい牝シカがいるのだそうじゃ。余に結婚はまだ早いと思うのじゃがなぁ」

「それはまた個人的な話だな」


 イルースィヴは表情を戻した。

「まあ、それは母上様からの強い勧めでの……父上からはたっぷりと叱られてしまった」

「兄弟げんかの件か?」

「ああ、ゴブリンを放置して兄弟げんかなんてしているのだから、こんなことになるのだ……とな。正論過ぎてぐうの音も出ぬ」

「わかっています。もう、あんな馬鹿げた戦争は致しません……」

 赤毛のロプもゴーレムの影に隠れながら平謝りしていた。どうやら、冊子を通してたっぷりと絞られているようだ。

「自分のこと……私って言うんだな」

 俺が呟くと、マミエルも意外そうに頷いた。


 イルースィヴは表情を戻した。

「幸いにもお力を貸して下さるそうじゃから、さっさとブラックビーチ地方を平定したい」

 その瞳がロプやファルシオンを映した。

「ロプ一行とファルシオンを借りたいが……いいか?」

「俺は構わない」

 イルースィヴも頷いた。

「ロプが留守になると、南部が空白地になってしまうの」

「なら、代理の者でも立てて欲しい」

「なるほど……なら、情報収集力のあるトレンチ辺りを派遣するのが良いか」

「わかった。本人に伝えておこう」


 もはや、ゴブリン側には大した勢力は残っていなかったらしく、ロプ一行は10月中にブラックビーチのおおよそ半分の地域を攻略。

 11月の上旬には、ゴブリンエンペラーを撃破したという報告が届いた。


「ファルシオンのヤツ……なかなかやるな」

 俺は少し考えると、ミエルに聞いた。

「ところで、敵の残党にナイト以上のヤツは残っているのか?」

「調べによりますと……ホブゴブリンが2体残っているだけで、残りは幼体ゴブリンだけのようです」

「だとすると、後は残党狩りをするだけか」


 翌日になると、ファルシオンが戻ってきた。

「今戻ったよ」

「お疲れ……ん?」

 よく見ると、ファルシオンの角が更に伸びていた。

「角がより立派になってないか? というか翼が生えたんだな」


 ファルシオンは笑った。

「ゴブリンエンペラーが、けっこうな量のマナを持っていてね。使わせる前に倒したから3000近いマナを手に入れることができたんだ」

「無断で使ってないよな?」

「ちゃんと、聖樹公からご褒美として貰ったものだよ!」

「ということは、ロプたちにはブラックビーチ地方を与えたのか?」

「うん。僕は国主になるには、まだ家来が足りないからね」


 その話を聞き、さすがはイルースィヴだと思った。

 ロプたちにはブラックビーチ地方を与え、槍働きをしたファルシオンにはマナポイントなら、不満を持つ者もいないだろう。


 ダンジョンマスター帳にちょうどマナポイントが届いたことだし、11月の施政を行うとしよう。

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