あれ……男が誰もエントリーしてこないぞ?
ポイントをマミエルに渡すと、彼女もまたマスター帳を見た。
「わかりました。とりあえずは武官として働かせていただきます」
「そうしてくれると助かる。何せ戦力がほとんどいない状況だからな」
マミエルのマナポイントは700と表示されている。400はこちらで送った分なので彼女自身は300分の霊力を持っているようだ。
マミエルはまず、仲介料の200ポイントを払い、次に300ポイントで光属性の長弓を、100ポイントで使い魔のハト5羽を購入していた。
なるほど。残りの100は緊急時用に取っておくのか。
「さて、残り800で何を雇おうかな?」
フロアマスター帳を捲っていると、ワーウルフの特集をしているページがあった。
「狼男か……」
そう言うとマミエルは少々困った顔をした。
「狼は聖樹公の敵です。おやめになられた方がよろしいかと」
「そりゃそうだな。じゃあ次の……」
「いや、雇って欲しい」
俺とマミエルは驚いたが、イルースィヴは笑いながら言った。
「お主たちのような大人しい部下ばかりだと修行に身が入らん。家来の中に1人くらいは虎視眈々としたヤツがおらんとな」
「し、しかし……」
「案ずるでないマミエル。それともそちは余が信じられぬか?」
マミエルは目を白黒させていたので、俺はそっと耳元で囁いた。
「見た目は小鹿だけど、クマを黒焦げにするような実力の持ち主だから大丈夫じゃないか?」
「な、なるほど……差し出がましいことを申しました」
マミエルが深々とお辞儀をすると、イルースィヴは笑った。
「そう堅苦しい挨拶は不要じゃ。主も気が付いたことがあれば何なりと申せ。それから喋り方ももっと柔らかい言い方でいいぞ」
「は……はい……わかりました」
俺は頷くと、ワーウルフに求人募集を出してみた。仲介料は100ポイント。
主君:イルースィヴ・ホワイト・ディアー・聖樹守護・アサルト
採用担当者:シュジン・ホモ・サピエンス・ジャパン3世・バダルラインの守、コーダ
「……」
「……」
「……」
1時間半が経過すると、イルースィヴは何とも言えない顔をした。
「なぜ、誰もエントリーして来ないのかのう?」
「……なんでだろうなぁ?」
「……」
「時間帯が悪く、誰も見ていないとか?」
マミエルが言うと、イルースィヴは自分の冊子を出して器用に口で動かした。
「……いや、10分ほど後に父上もワーウルフの求人を出しているが、1件の求人に対して152人のエントリーが集まっているのう」
「ひゃ……152にん!?」
カラスの驚く声が響いた。
それから待つこと更に10分、やっと1人がエントリーしてきた。
「やっと来たな」
「うむ。ワーウルフ族の少女……職務経験なしか」
「とりあえず、この女の子と会ってみようかな」
「それがいいじゃろうな」
そのワーウルフの少女を呼び出すと、見た目は人間によく似ているが、犬耳で立派な尻尾が生え、手足はオオカミの毛で覆われた女の子が出てきた。
んん、ワーウルフの少女の瞳が潤んでいるぞ!?
「やっと、やっと……面接、くれる、ヒト、現れた」
ボロボロと泣き出した。
「なんかいも、たくさん、たくさん……エントリーして……やっと!」
「ちょ、ちょっと落ちつけ!」
ワーウルフの少女はハッとした顔をすると、顔を赤らめたまま跪いた。
「レクシー、申します」
「……」
「……」
「使って、ください」
何だか、間が持たないな。
「ええと、レクシー……君は、どれくらいの給料を希望するのかな?」
「たくさん、うれしい、けど、少し、かまわない」
「たくさんとは……いくつ?」
「ええと……」
レクシーは自分の指を折りながら数えだした。
「1、2、3、5、7、11……」
「誰が素数をかぞえろと言ったァ!」
カラスの鳴き声が響いた。
「レクシー、数……よくわからない!」
凄いのが来たなぁ。と思ったが、イルースィヴは平然としていた。
「とりあえず、レクシーには200ほど与えて、マミエルに管理してもらったらどうじゃ?」
「マミエル……構わないか?」
マミエルは胸に拳を当てた。
「お任せください。必ずやご期待に沿えるよう努力します」
【マミエルからの挨拶】
立派な天使になりたいけどなれなかった……
そんなマミエルから皆様にお願いがあります。
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ちなみに天使についているエルとは、~の神という意味があります。
天使でもないのにエルを名乗る私は……やはり堕天使なのでしょうか……? いえ、ミカエルさんとかいますもんね。だから大丈夫、大丈夫、大丈夫……かなぁ?