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崩壊するロプ軍

 6月19日。ムキム率いるゴルアース東部軍は善戦を続けていた。

 第3地点に攻め寄せるロプ軍と一進一退の攻防戦を続けており、リザードマンたちの士気は依然として旺盛のようだ。


 赤毛のロプは苛立った様子で前線の情報を聞いていたが、そこに伝令が駆けつけた。

「申し上げます……ゴルアース中央部、第8ポイントが陥落!」

「何じゃと!? 守備隊は何をしていた?」

「先陣を切るユニコーンに恐れをなして……真っ先に隊長が逃走していました」

「お、おのれ……あれだけ勇ましいことを言っておきながら、コシケヌめ!」

「ユニコーンと乗り手は、そのままここ……ゴルアース東部へと進軍を続けています」


 ロプは冒険者風の魔将2人を見た。

「ジェイコブ、ローガン……ゴブリン隊を1つずつ与える。すぐに迎撃せよ」

「ははっ!」

 2人の魔将は速やかにゴブリンたちを率いて陣を出た。


 ロプは伝令を見た。

「これから我も前線を視察に行く。今日中の攻略を急ぐぞ」

「ははっ!」

「残った者はこの場に待機して、戦闘準備を進めよ」

「ははっ!」


 ロプがいなくなると、本陣に残った魔将2人はお互いの顔を見あった。

「お前、この戦い……どう思う?」

「どうって……」

「……」

「……」

 2人はごくりと唾を呑むと立ち上がり、そのまま本陣から立ち去った。



 一方、ゴブリン隊を率いて現れた魔将ジェイコブとローガンは、槍を構えて叫んだ。

「我はロプの将……ローガン!」

「同じく、ジェイコブ……そこのユニコーン騎士……んあ!?」

「シュジン!」


 名を言われた俺は弓を下ろして言った。

「誰かと思えば、ブロンズのローガンに、アイアンのジェイコブ!」

「お前、イルースィヴ軍にいたのか!?」

「ああ、今ではダンジョンマスターとして、バダルライン地方の領主をしている」


 ジェイコブとローガンは苦笑した。

「お前とは……やりづらいな」

「ああ、ひいては……くれないか?」

 ここで久しぶりに、ファルシオンが喋った。

「今の時代は、地位や権力を持っている貴族や領主も、自分を更に高く買ってくれる王を探す努力をしている。君たちの主は聖樹公しかいないと思う。彼は、単なる馬の僕に角を、アイアン階級のシュジンとジェイダンをダンジョンの長という地位を与えたほどだ」


 最初はつまらなさそうに聞いていたジェイコブやローガンは、後半になると表情を変えた。

「ジェイダンまでいるのか!?」

「ああ、彼も聖樹公の覚えめでたい。ごまをするのなら今のうちだろうな」


 ジェイコブとローガンは構えたまま互いを見た。

「どうする?」

「いや、でも……裏切り者って信用されないよな?」

「ああ、確かに……」


 そこにマミエルのハトが飛んできた。

『バダルライン卿! 敵陣に動きがありました』

「どうした?」


『ロプ側の魔将2人が陣抜けしました! それの続くようにゴブリンナイトをはじめ、数多くのゴブリンたちが逃げ出しています!』


「え……?」

「うそ!?」

 ジェイコブとローガンが表情を変えると、俺は言った。

「嘘だと思うのなら、確かめてみたらどうだ?」

「僕たちはここで待っているからさ」


「おい、ゴブリンの中で一番足の速い奴……ちょっと本陣を見てこい!」

 ローガンが言うと、幼体ゴブリンの中で一番しっかりしてそうな者が走り出した。


 いったん停戦という形になって1時間。伝令役のゴブリンは駆け足で戻ってきた。

「本陣はもぬけの殻です……旗持するもいません!」

「なにっ!?」


 ジェイコブとローガンは、そっと俺たちを見た。

 既にジェイダン本隊や天使部隊も到着し、イルースィヴの最強部隊がずらりと集結している。

「後続部隊がいないんじゃ……無理だよな」

「降伏します」

 ロプ軍の魔将2人が手を挙げたことで、他のゴブリンたちも一斉に武器を捨てた。

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