クレイゴーレム
ゴーレムとは、魔導士が作り出したカラクリ魔導機械のようなものだ。
材質によって強さが決まり、泥で出来たクレイゴーレムは最も弱いゴーレムとして知られている。
それは傭兵であるゴブリンたちも知っている常識のようだ。
「何がいるのかと思えばドロのガラクタばかりだな」
「時間稼ぎが見え見えだ。一気にぶっ潰すぜ」
ロプ軍団侵攻2日目。場所はゴルアース地方の東部。
先頭を進んでいたロプ軍団のゴブリンたちは、第2地点へと乗り込んで来た。
力自慢であるホブゴブリン2体は棍棒を振り上げると、一気にクレイゴーレムに振り下ろそうとした。
「やれ!」
ところが、クレイゴーレムの後ろからは多数のリザードマンが身を隠していた。
「な、なに……!?」
「ごぶヴぁ」
彼らはレイピアやバトルアックスでホブゴブリンを倒すと、尻尾の一撃で次々と幼体ゴブリンたちも薙ぎ払った。
「小鬼風情にやられるとでも思ったか!」
「残らずやっちまえ!」
リザードマンの戦闘力は圧倒的で、幼体ゴブリンではどんな武器を使おうが、リザードマンの固い皮膚や強靭な肉体に傷を入れることもできなかった。
ロプ軍の前衛部隊が崩れかけたとき、後方から炎魔導士隊が到着した。
「いたぞ!」
「ワニの化け物め……これでもくらえ」
魔導士たちは次々と手のひらから炎弾を撃ちだしてきた。
「ちっ……」
リザードマンたちは遠距離攻撃は得意ではないため、手近なクレイゴーレムを盾にした。
すると、クレイゴーレムは見事に盾になり、魔導士隊から撃ち出された炎を難なく受け止め続けている。
そして、リザードマンたちもクレイゴーレムに隠れながら石をスイングし、次々と魔導士に向けて投げつけた。
「うわ!?」
「おわ、あぶな……」
「ぎゃあ!?」
石は魔導士に命中こそしなかったが、詠唱中に行ったため何人かが炎魔法の扱いを誤り、手元で暴発させた。
「くそ、体勢を立て直すぞ!」
ロプ方の戦士や魔導士は、雲の子を散らすように退散した。
「よし、こちらも怪我人の手当てを急げ」
「ああ、次の攻撃に備えないとな!」
ロプ軍は、この後も攻撃を繰り返したが、リザードマンとクレイゴーレムという組み合わせを前に攻めあぐねた。
足踏みが3日、4日と続いていくと、赤毛のロプの表情に余裕はなくなり、遂に責任者である炎魔導士長を呼び出した。
「マギス……開戦から今日で何日目だ?」
「い、5日目でございます……」
「貴様は先鋒部隊のリーダーとして、これまでにどれほどの活躍をした?」
「……恥ずかしい限りです」
ロプは立ち上がると、怒号を響かせた。
「他人事のようにほざくな戯け!」
「はは~~~~~っ!」
マギスが平伏すると、ロプはようやく腰を下ろした。
「いいか。もう一度だけ確認する。顔を上げよ」
「は、ははっ」
マギスが恐る恐るという様子で上げると、ロプは言った。
「今は、6月17日じゃ。わかるか?」
「は、はい!」
「ゴブリンは傭兵じゃ。マナポイントを払って雇っている。これもわかるか?」
「はい」
「コブリンとは月ごとの契約を結んでいる。6月は何日までじゃ?」
「さ、30日までにございます」
「その通り。残り13日までに決着をつけ、更にイルースィヴから反撃を受けないように打撃を与えないと、また雇い直さないといけないのじゃ。わかるか?」
マギスは何度も頷いた。
「わかります。わかりますとも!」
「だから最低でも、イルースィヴに奪われたゴルアース北部、ゴルアース東部、それから、肥沃な土地であるバダルライン東部までを何としても奪わねばならん」
ロプの言葉が強まった。
「今日中に、第2地点は突破せよ。できなければゴルアース東部の領主の話はなかったことにするぞ!」
「か、必ずやご期待に沿えるよう全力を尽くしまする!」
「行け!」




