領土奪還に乗り出すロプ
ロプ陣営では、伝令役のゴブリンが駆けつけた。
「申し上げます。カナッグ率いる冒険者たちと王国軍は激しい戦闘を行いましたが、依然として勝敗はつかなかった模様」
「城門の損傷は?」
「依然として軽度かと……」
ロプは微笑を浮かべた。
「そうか!」
赤毛のロプは立ち上がった。
「王国軍も冒険者街も我らに攻め入る余裕はない。領土奪還を行うぞ!」
「ははっ!!」
マミエルのハトはロプ出兵の情報を持ち帰った。
「そうか……遂に奴と決着をつける時が来たか」
イルースィヴは、険しい顔をしたまま俺を見た。
「援軍はどれくらい派遣できる?」
「そうだな。俺のところからはユニコーンの3頭だけだ」
「マミエルは?」
「私たち天使3名です」
「スカーレットは?」
「オオカミを数頭残して頂ければ、レクシー隊を派遣できます」
「アイラは?」
「ゴブリンの領土と隣接しているので、申し訳ありませんが……」
「わかった」
イルースィヴは、マミエルに言った。
「リザードマンのムキムに撤退命令を出せ。ロプの連中のことだ、一気にジェイダンの領土まで奪い返しに来るだろう。領土中腹まで来たところで、一斉反撃を行え」
「すぐに、伝えて参ります」
マミエルが飛び立つと、俺はファルシオンを見た。
「お前たちは、すぐにジェイダンの所に行ってくれ」
「わかった」
ファルシオン隊、レクシー隊はすぐに援軍としてジェイダンの領内へと向かった。
「どれくらい……被害が出ると思う?」
「そうじゃな。我らが迎え撃つ側とはいえ……元々は連中の土地じゃ。部隊によっては戦力が半減するかもしれん」
俺はダンジョンマスター帳を開くと、戦力になりそうなものはないか探した。
ワーウルフ、オーガ、ゴブリン、ドワーフ……どれも男に敬遠される俺では、募集しても無駄そうな種族ばかりだ。
「ほう、戦力強化を考えているのか」
「ああ、中ボスがやられる危険性もあるからな」
「悪くない判断じゃが、雇ったばかりの重臣は忠誠心が低い。それよりもここ……バダルライン西部の守りは大丈夫か?」
俺はダンジョンマスター帳を閉じた。
「クレイゴーレムを中心に配置してある。ロプは炎属性のシカだと聞いているから、ウッドゴーレムや茨のゴーレムだとあっという間に倒されるだろう?」
「その通りじゃ。クレイは泥で出来ているから、奴と戦うには……」
イルースィヴは、少し考えると目を固くつぶって言った。
「聞こえているかジェイダン」
「……」
俺は黙ってイルースィヴを見守った。恐らく、ジェイダンとテレパシーで話しているのだろう。
「マナポイントが余っているのなら、クレイゴーレムを使え」
「……!」
声は聞こえないが、ジェイダンがなるほど! と叫んだような気がした。
イルースィヴはしっかりと頷いた。
「よし、いけるの! 奴らは焼き畑のように、ダンジョンのマナを搾り取るダンジョン経営をしておる。だから戦況を膠着状態に持ち込めば……」
俺も頷いた。
「ああ、ゴブリンのような傭兵は1か月契約だからな。月が替わると追加料金を払わないといけない!」
2人で上機嫌になったときに、マミエルが飛んできた。
「大変です。フロアマスターのムキム殿が……撤退を拒否しました!」
イルースィヴの表情から笑みが消えた。
「な、なんじゃと!?」
「どういうことだ?」
聞き返すと、マミエルは厳しい表情で答えた。
「川の守り手が敵に背は見せられない……とのことです」
イルースィヴは下唇を噛んでいた。
「わかった……引き続き情報収集を続けてくれ」
「承知いたしました」
どうやら、臨機応変に作戦を変える必要がありそうだ。




