ヒヨリミーの行く末
マミエルと部下ノエルとカゾエルは、ゴミのようにヒヨリミーを持ち運ぶと、3人で冒険者街の干し草の上に放り投げ、そのまま飛び去った。
その様子を庭先から見ていたギルドの受付嬢は、驚いた様子で駆けつけた。
「もご……もごもご……!」
彼女はゴミでも見るように険しい顔をしていたが、ヒヨリミーがシルバー階級だとわかると、態度を変えて言った。
「ま、まあ……何があったのですか!?」
口に噛ませていたぼろきれが取り除かれると、ヒヨリミーは叫んだ。
「くそ、悪魔どもにしてやられた!」
「どういうことですか!?」
ヒヨリミーも苛立った様子だったが、受付嬢の胸に光るシルバーバッジを見ると、途端に表情を変えた。
「カナッグ様はいますか? 任務失敗を報告しないといけない」
「じっとしってください。縄を解きますから」
冒険者街を取り仕切る、黒毛のカナッグはじっとヒヨリミーの話を聞いていた。
「……すると、お主の送った手紙が、まんまとイルースィヴに読まれていたということか」
「面目ありません」
カナッグは目を細めた。
「で、次にお主は、イルースィヴに与してこちらの情報を探りに来た……と」
ヒヨリミーは両手を広げながら叫んだ。
「そ、そのようなことはありません! あの白毛の悪魔は、私が篭絡できないと悟ったからこそ、冒険者街に落としていったのです!」
「誰か、その痴れ者のポケットを調べよ」
「ははっ!」
カナッグの部下がヒヨリミーのポケットに手を突っ込むと、中からは石が出てきた。
「盗聴石か……あの白い者のお家芸じゃな」
「こ、こんなものがいつの間に!?」
カナッグは苛立った様子で叫んだ。
「誰か、この者をロプにでも突き返してこい!」
「ははっ!」
「そ、そんなーーーー!? お待ちください……カナッグ様~~~~~~!」
間もなくヒヨリミーは冒険者街の獣人たちの手によって、赤毛ロプの領内へと放り投げられた。
「陛下、裏切り者のヒヨリミーが藪の中に転がっていました」
「ここに」
「ははっ!」
ロプの家来たちは、ゴミのようにヒヨリミーを放り投げた。
「ごふ……ごひ……もがもが……」
「良い眺めじゃな、ヒヨリミー」
「むごごごご……むぐごごごごごご!!」
赤毛のロプは、転がっているヒヨリミーを見て不敵に笑った。
「我が領地を減らしただけでは飽き足らず、我が顔に泥まで塗りおって……」
「むぐがごががああ……!」
部下たちは一斉に叫んだ。
「今すぐに処刑しましょう!」
「いいや、ただ処刑するだけでは手ぬるい……火炙りだ!」
「磔にすべきです!」
「ちと黙れ」
ロプの一言で、部下たちは静まり返った。
「そういえば、このような役立たずがもう1人いたな。名前は何といったか……?」
ロプはブツブツと聞き取れない独り言をつぶやいた。
「ああ、そうじゃそうじゃ。コソックとか言ったの」
「そう言えばそうでしたね。あの役立たずは如何なさいますか?」
部下が言うと、ロプは少し考えた。
「殺すにしても後始末が面倒じゃからなぁ……」
その赤い瞳に残忍な光が宿った。
「2人まとめて、あの鹿毛の領内にでも放り込んでおけ」
「ははっ!」
「むごごご……むごごごごごごご!」
この日、部下の日記に書かれたことを最後に、元エリアマスターであるヒヨリミーと、元マスターのコソックの名が登場することはなかった。
鹿毛の『名を書けない恐ろしい君』の手によってゾンビや改造生物の材料にされたとも、使い物にならなかったため更に別の勢力に押し付けられたとも言われているが、詳しいことはわかっていない。




