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ジェイダンの政略

 5月も後半になったとき。マミエルが飛んできた。

「バダルライン卿!」

「どうした?」

 マミエルは着地すると同時に言った。

「王国軍が再び冒険者街を包囲しました」

「今年こそ、反乱を鎮圧するつもりか……」

「恐らくは」

「わかった。引き続き情報収集を続けてくれ」

「承知いたしました」


 マミエルが飛ぼうとしたとき、栗毛のファルシオンがやってきた。

「ねえねえねえ、ゴーレム造りの練習をしていたら、原子番号79番、元素記号Auが出てきたよ」

「こら、ユニコーン語を話すな!」

 ファルシオンの咥えてきた石をよく見ると、石の中にわずかな金の粒が混じっていた。

「もしや、金鉱石ですか!?」

 マミエルが言うと、ファルシオンは頷いた。

「うん、川原にはこういう金が少し含まれてる石が転がってる」


 俺が少し思案していると、ファルシオンは言った。

「一応、言っておくけど……黄銅鉱じゃないよ。あれのにおいは独特だからね」

「いやいや。本物かどうか疑っている訳じゃない。むしろおもしろいものを見つけたと思ったんだ」


 金があれば様々なものを商人から買えるので、マナポイントの節約になるのではないだろうか。

「ファル、ゴーレム造りは一時中断して、金を集めてもらうことできるか?」

「賛成だね。ゴーレムは僕のボロを混ぜ込んでも上手く動かなかったから」

 俺は思わず真顔になった。

「何てものを入れてるんだお前は……」


 マミエルは表情を戻した。

「私は、金の件を聖樹公にご報告してきます」

「よろしく頼む」



 ファルシオンは僅か1週間の間に、金を200グラム以上集めた。

「はい。今日は10グラムの粒を4つ集めたよ」

「いつもすまんな」

 俺は革袋に金の粒を入れると、その数は22、3個ほどになっていた。

「ファル、1人でやるよりも助手がいた方が捗るだろう」

「ああ、確かにそうだね」

「必ず叶えてやれるわけではないが……希望する種族は?」


 ファルシオンは少し考えると言った。

「そうだねえ……天使のように空を飛べる人間がいいな」

「わかった。明日になればマミエルが来るだろうから、天使になれそうな者がいないか聞いてみよう」


 そして月がかわって6月。

 ダンジョンマスター帳のページを捲ると、俺は大きく目を開いていた。


「あれ……? バダルライン西部が安全地帯になっている!?」

 俺は不思議に思いながらページを閉じ、再びダンジョンマスター帳を開いた。

 

「やはり緑表示か……どういうことだ?」

 そう首をひねったとき、隣から声が聞こえてきた。

「実は先日、ロプに属していたフロアマスターが我らに寝返ったのじゃ」

「そういうこともあるのか……」


 現れたイルースィヴは、草の上に腰を下ろすと革袋に入った金の粒を見た。

「ほう。これが報告にあった金か」

「ああ、数えたら23個……おおよそ230グラムある。必要なら持って行くといい」

 そう進めると、イルースィヴは笑った。

「余が持っていても使い道がない」


 間もなく、ジェイダンと見慣れない魔導士風の男がやってきた。

「聖樹公。先日ご報告したフロアマスター……ヒヨリミー殿です」

「お初にお目にかかります」

「うむ。遠路はるばる大儀である」

 イルースィヴは、すぐにジェイダンを見た。

「ジェイダン。今回の件……見事な手腕である。冊子を出すがよい」

「ははっ」


 ジェイダンが冊子を出すと、イルースィヴは彼をダンジョンマスターに昇格させた。

「ところでヒヨリミーよ……質問なのだが」

「なんでございましょう?」

「ある手紙を手に入れたのだが……そのままでよい。目を通してもらえるか?」


 側にいたマミエルが手紙を預かると、ヒヨリミーの前で広げた。

「え、いや……この手紙は……」

 ヒヨリミーの顔は一瞬にして凍り付いた。


 手紙を読んでみると……

 ヒヨリミーはイルースィヴ軍に入って内情を調べ、その情報を手土産に、冒険者街の支配者である黒毛シカのカナッグに仕えたいと記されている。

 こういうのは何スパイと言うのだろうか。何であっても、我が軍に入れてはならない人材であることは間違いない。

「お、お待ちください……これはロプの手の者の仕業です。真っ赤な偽物です!」

「ほう、ではどうして、その手紙からお主のにおいがするのかのう?」

 イルースィヴの顔から表情が消えた。


「ひ……ひいっ!」

 ヒヨリミーは逃げ出そうとしたが、上空からあらわれた天使たちが見事に取り押さえた。

「ヒヨリミーから領地を没収せよ」

「ははっ!」


 間もなくヒヨリミーは連行されたが、ジェイダンはわざとらしく言った。

「いやー俺としたことが、とんだ食わせ者を掴んじまったよ。で、シュジン……悪いんだけど、空いたダンジョンに相応しいエリアマスター……誰かいないか?」

 俺は苦笑しながら言った。

「一緒にマスター帳でも見るか。俺も手の空いている部下がいなくてな」

「おお、いいねえ!」

 2人でニヤニヤと笑っていると、ファルシオンが近づいてきた。

「僕の助手も忘れないでよ」

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