朱王ロプの使者
ロプの使者であるコソックは言った。
「俺様の主ロプ様は93番目に生まれたお方だ。だから年下のヤツはロプ様に従うのが筋だろ」
「……それはロプが言ったことか?」
イルースィヴに言われると、コソックは怒鳴り散らした。
「うるせえな! そんなのいちいち言わなくても常識でわかんだろ!」
「お前の常識とやらは、俺たちには通用しないぞ」
俺がそう切り返すと、コソックは不機嫌そうに睨んだ。
「この賞金首が……!」
「本題を言え」
イルースィヴが言うと、コソックは再びイルースィヴを睨みつけた。
「お前らが不法占拠してる……このバダルライン地域全部を俺たちに寄越せ。そして、這いつくばって従え!」
イルースィヴの体の周囲に青白い電気が走ると、不遜な態度を取っていたコソックも身を引いていた。
「……」
「……」
「なるほど。コソックとやら」
コソックは表情を戻した。
「な、なんだ?」
「ロプのヤツには、寝言は寝ていえと伝えておけ」
「こ、後悔しても知らねーぞ!」
捨て台詞を吐くと、コソックは名前の通りコソコソと立ち去った。
「なぜ春になると、このような者が出てくるのかのう?」
イルースィヴがため息をつくと、俺も同感だと思いながら頷いた。
「連中が攻めてくるとしたら、ここバダルライン西部と見て間違いないな」
「うむ。お主の手腕に期待している」
確か連中は、フェアリーを捕まえてマナを強奪しているという報告をうけている。
だとすると、結構な規模の軍隊を持っている危険性がある。
ダンジョンマスター帳を捲っていたら、フェアリーたちが飛んできた。
――バダルライン卿
「おお、どうした?」
――戦が近いですね
「ああ、お前たちも巻き込まれないように気を付けてくれ」
――あの、でしたら……茨のゴーレムを製作したいのですが……
茨のゴーレムか……おもしろいゴーレムががあるものだ。
「それは、ウッドゴーレムのようなものか?」
――はい。棘のついたウッドゴーレムだと思ってください
「幾つ作れる?」
――1台70で……フェアリーの数を考えるとそうですね……7台ほど作れます
俺は少し考えた。
「10台分の予算を出す。可能な限り作ってくれ」
――わかりました。すぐに始めます
これで残ったマナは846ポイントだ。さて、他に追加配備した方がいい戦力はあるだろうか。
「バダルライン卿!」
誰かと思えばアマゾネス隊長のアイラだ。どうやら、頼んでいたクレイゴーレムの動作テストが終わったようだ。
「おう、ゴーレムはどうだった? 使えそうか??」
「冬の間は凍っていて動きませんでしたが、今は問題なく動きます」
「今、妖精たちに茨のゴーレム……棘付きウッドゴーレムを作ってもらっている」
「それは頼もしいですね!」
「バダルラインきょー!」
今度は狼隊長のレクシーか。
「オオカミたちの様子は?」
「メスのオオカミたちが、子供をそだてるから、休み欲しい、言ってる」
「なるほど……そうなると戦力はオスだけだから……5頭か」
「ううん、8頭に増えた」
「ん、買ったのか?」
「少し前に、ほかのむれが、仲間になったんだ」
ポイントを使わずに現地調達するとは、レクシーも隅に置けないものだ。
「メスも含めて何頭いるんだ?」
「16頭。子供は……何頭が大人になるか、わからない」
「……お前の給金を次回から300に増やす」
「あ、ありがとー!」
隣にいたエルフィーは、レクシーのマスター帳を眺めていたが、やがて言った。
「あの、レクシー先輩?」
「なあに?」
「マナポイントが1000以上溜まっていますが……使わないんですか?」
「うーん、武器も揃ってるし、家族増えすぎると、食事代とか、トリミング代がかかるから、貯金大事って、マミエルさんに言われた」
「……十分すぎるほど貯金もあるし、これやってみたらどうです?」
俺とアイラは、レクシーのマスター帳を眺めると頷いた。
「毛皮を弾力のある鉄のように強化する力か」
「1頭150ポイントもかかりますから全頭を強化することはできませんが……何頭か混ぜるだけでも、敵は脅威に感じるでしょうね」
「今まで、武功を挙げた者がいいだろうな」
俺はオス狼2頭、メス狼1頭に鉄毛の処置を施すように指示を出すと、レクシー自身にも鉄毛の処置を施させることにした。
「レクシーには300ポイントか……」
「バダルライン卿……残りはどうします?」
「貯金ということにしておこう。400ポイント近くあれば大抵のことに対処できるだろう」




