大寒波襲来
イルースィヴの言っていたことは、間もなく現実のものになった。
俺は冬への備えとして、ダンジョンマスター帳から防寒関連のアイテムを300で購入していたが、それがあっても厳しい寒さに悩まされた。
そして1月。ダンジョンマスター帳を開くと、その収入の少なさに驚いた。
マナ収入778。支出900。
どうやら、寒波が来ると俺自身のマナも半減するらしい。
ため息をついていたら、隣から声が聞こえてきた。
「ほほう……お主だけは相変わらずマナ回りが良いのう」
「イルースィヴ……他の奴らの様子は?」
「今月は、マミエルから95、スカーレットから47ポイント……ということでおおよその察しがつくじゃろう」
「なるほど……」
つまり、次月に繰り越せるのは2204ポイントというわけだ。
普段なら、ここで帰ってしまうイルースィヴだが、暖炉の前に陣取ると心地よさそうに目を細めていた。
「ここは暖かくて良いのう。しばらく休ませてもらうとするか」
「それがいい。春先になって凍ったシカが出てきたら笑い話にもならん」
「言ってくれるのう……」
大寒波はイルースィヴの父親の予想を超え、1月中ずっと停滞し続けていた。
そのため……2月も、収入778。支出900。という結果となった。しかも……
「シュジン、マミエルは今月のやり繰りは非常に厳しいようじゃ。軍団長への貢物を免除してはどうじゃろう?」
「賛成だな。逆に援助が必要なら用意があると伝えてくれ」
「わかった」
「あと、これはスカーレットからのマナポイントじゃ」
45ポイントか。彼女も苦労しているようだ。
「ねー、バダルラインきょー!」
狼族のレクシーが、薪を持ってやってきた。
「どうした?」
「そろそろ薪がなくなりそうなの。新しいの買って」
「わかった」
特製暖炉に付いてきた薪も打ち止めか。100ポイントで新しいものを買うとしよう。
残りマナは2127ポイントだ。
その後も寒波は去っては戻るを繰り返し、2月いっぱいツーノッパに雪を降らせた。
そして3月のマナポイントも収入778、支出900となった。
「スカーレットからマナポイントを預かっている」
「……41ポイントか。相変わらず苦労しているようだな」
「どうやら薪代がバカにならないらしい」
それはそうだろうなと思いながら俺は頷いた。
「まあ、寒波も去ったことだし、4月からは少しはマシになるのだろう?」
「うむ。ここからは雪解けの季節じゃ……む?」
「どうした?」
イルースィヴは目を細めると、小声でブツブツと呟いてから俺を見た。
「シュジン、どうやらジェイダンの蓄えていたマナが底を尽きたようじゃ。300ほど貸してやってはくれんかの?」
あの大寒波に見舞われたことを考えれば、ジェイダンにしてはよくやった方だろう。
「南バダルラインは要所だ。500マナを無償で援助しよう」
「すまぬな」
「聖樹公〜〜!」
イルースィヴを呼んだのは、見習い戦士のエルフィーだった。
「どうした?」
「朱王のロプさまの使者……という者が面会を求めています」
「会おう。ここに」
「いつまで待たせるんだ。非常識だぞ!」
そう叫びながらズカズカと踏み込んで来た男には、見覚えがあった。
「久しぶりだな……コソック」
元ブロンズ階級のコソックは、ひきつった顔で俺を睨んだ。
「お、お前は……シュジン!」
「して、コソックとやら……何用じゃ?」
戦士コソックは、バツが悪そうな顔をしたまま胡坐をかいた。どうやら俺に樽の下敷きにされたことで苦手意識を持ったようだ。




