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主君から問題の名を賜る

 幸いにも、俺は元野生児の狩人なので森の中は庭のようなものだ。

 自分がどの方角を向いているかというところから、猛獣がどこにいるかというところまで手に取るようにわかる。


 たとえば、少し離れた場所には黒焦げになったクマがいるようだ。もしかしたら、強力な魔導師が近くにいるのかもしれない。

「一応……警戒しておくか」


 もう少し進んでみると、更に妙な気配を感じた。

 シカがまるで木に引っかかったような動きをしている。これはチャンスだ。シカを捕らえて肉にすれば、しばらく食料には事欠かない。


 その場所へと向かってみると、俺は目を細めた。

 予想通り、シカが木に身体を引っ掻けてもがいていたが毛並みが真っ白だった。こんなヤツは初めて見た。神の使いかもしれない。


『おい、どうした?』

 動物言葉を使ってみると、白シカは人間の言葉を返してきた。

「草を食んでいたら……抜けなくなったのだ」

「……」

 よく見たらこれ、俺が以前に張った罠じゃないか。とんでもないものを引っかけてしまったようだ。

「じっとしていろ」

 俺はロープを切断すると、白シカはやっとの様子で顔を上げた。


「礼を言うぞ人間」

「ここは冒険者街も近い。こういう罠が他にも仕掛けられているかもしれないから、すぐに立ち去った方がいいだろうな」

 そうアドバイスすると、シカは不思議そうな顔をした。

「罠……? この捨てられた縄は……罠だったのか?」

「ああ、腕の良い狩人になると、その辺の素材でも罠を作れるものだ」

 白シカは頷いた。

「ほう……そうなのか」


「じゃあ、気を付けるんだぞ」

 立ち去ろうとしたら、そのシカは俺の服を引っ張った。

「……な、なんだ?」

「ちと待て」

 そう言うとシカは目を輝かせた。

「お主……相当な手練れじゃろう」


 いつの間にか、切れ味のある表情になっていた。

「いや、俺は……」

「先ほど余が引っかかっていた縄から、そちのにおいがした」

「……!」

 このシカ、ただの間抜けな白毛かと思ったら切れ者かもしれない。


「余の名はイルースィヴ。魔王を目指す者じゃ」

 魔王か……。

 冒険者が英雄になることを目指すように、モンスターや獣たちも魔王になることを夢見ているという。

 ただ、その競争が激しいことも事実だ。いくら白毛の珍しいシカでも、せいぜいレアザコモンスターになるのが精一杯だろう。

「お主、余に仕えんか? 十分な恩賞を与えるぞ」


 どうやって断ろうかと思ったとき、イルースィヴの角から白い電気のような光が見えた。

「ん……もしかしてお前、電気を操れるのか?」

 イルースィブは、一瞬だけキョトンとしたが、すぐに元の表情に戻った。

「よ、よくわかったな。こう見えて光属性の使い手じゃ」

「そういえば、むこうで黒焦げになったクマがいたが……」

「ああ、あれはその……後ろから飛び掛かってきたから驚いての」


 前言撤回。この白シカはかなり強い。悪魔くらいになら……なれるかもしれない。

「わかった。俺で良ければ仲間になろう」

「おお、そうかそうか! 早速だが、お主の名を教えてくれ」


「シュジンだ」

「……先から気になっていたが、お主」

 白シカは、鼻をスンスンと動かした。

「やはり、父上の持っていた遺物と同じにおいがするわ」

「というと?」


 白シカは真剣な表情で俺を見た。

「お主は……ジャパン系異世界人のリュウ・コーダを祖とする、コーダ一族ととても似たにおいがする」

 まさか、俺の苗字を言い当てられるとは思わなかった。

「俺は野生児みたいなものだから……名前以外のことはわからないんだ。このシュジンという名前だってガキの時に持っていたナイフにそう書いてあったってだけだ」


 というか、野生児の俺なんかが、伝説の勇者リュウ・コーダの子孫を名乗るなどおこがましい。

 勇者は、苦難の冒険の末に魔王を倒したものの、謀反の疑いありと王国に指名手配され、孤立無援のなか命を落としたという非業の英雄だ。

 上流階級からは蛇蝎の如く嫌われているが、弱い者のために戦い続けた生き方は、アイアンやブロンズ階級の者たちの心を打ち、未だに慕われている。


「王国軍との最期の戦いで、一族や協力者も残らず討ち取られたと聞いているし……俺が末裔とはちょっと思えない」

「なるほどのう。じゃが……余の嗅覚を甘く見てもらっては困る」

 彼は微笑を浮かべた。

「ヒト族の数千倍はあるからの」

「そ、そうなのか……」


 イルースィヴはじっと俺を眺めると言った。

「お主の名は、シュジン・ホモ・サピエンス・ジャパン3世・コーダとしよう」

「は? なんだその名前は!?」

「お主がどのような人間か、他の種族の者たちにわかりやすく教える必要があるからの」

「ちょっと待て、ホモってなんだホモって!」

「何じゃお主。ホモ・サピエンスを知らんのか?」


 イルースィヴは、ホモサピエンスが何たるかを永遠と語り続けたが、学のない俺にはチンプンカンプンだった。


 それにしても、特別な生まれと思われるイルースィヴが、どうして独り歩きをしているのだろう。普通なら、従者がいるものなのではないだろうか?

【シュジン・コーダからの挨拶】

 俺が主人公だ! と叫びたいシュジン・コーダだ。


 さて、皆さま……【ブックマーク】の登録と、広告バーナー下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にする作業をよろしくお願いします。


 これを行えば、筆者に最後まで書かせることができる。

 文章がまあまあだと思った方も、もっと勉強してほしいと思った方も適当に星をぶん投げて、筆者に鞭打ってください。ぜひ、ご協力を!

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