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冒険者を辞めた日

 ギルドの受付嬢は、無表情で言った。

「貴方に紹介できる仕事はこちらです」

 差し出された依頼の一覧表を見て、俺はため息をつきたくなった。

 トイレ掃除。ゴミの片づけ。肥料の運搬。ゴブリン退治。トイレ掃除……。

「俺は、ギルドに入って5年目だぞ。もう少し……」

「仕事が貰えるだけでも有難いと思え。この底辺冒険者!」


 ギルドの受付嬢は俺をつまらなそうな目で見ていたが、別の冒険者が近づいてくると、仮面をつけ変えるように笑顔になった。

「これは、エルフィーさま」

「仕事」

「は、はい。少々お待ちください」

 冒険者ギルド多しと言えど、これほど階級によって表情を変える受付嬢もいないだろう。

 プラチナ階級である没落貴族の4男坊の前では、爽やかすぎる営業スマイルかつ俊敏な動きで資料を差し出していた。

「お、お待たせしました」

「グズグズしてんじゃねーよ、さっさとしろババア!」


 遠くから依頼状を眺めてみると、開いた口がふさがらなかった。

 どれもこれも実入りがいい割に安全な仕事ばかりだし、モノによっては国のお偉いさんと知り合いになれるものまである。

 ところが、貴族の小僧は舌打ちをした。

「何だよ、下らねえ仕事ばっかりだな」

「面目ありません」

 これが親クジの成果かと思いながら俺は冒険者ギルドを出た。


 この街にギルドは星の数ほどあるが、どこも冒険者の生まればかりを重視する。貧民はどんなに努力しても一生底辺階級のままだし、貴族は冒険者に登録した時点で将来が約束される。


 小さくため息をついた瞬間。誰かと肩がぶつかった。

「すみません」

 謝ると相手のバッジが見えた。シルバー階級のようだ。

 ぶつかった相手も俺のバッジに視線を動かしたが、最底辺のアイアンだとわかると、途端に不機嫌そうな顔をした。

「てめえ、どこに目を付けてるんだ?」

「申し訳ありません」

 頭をしっかりと下げて謝ったが、シルバー階級の戦士は機嫌悪そうに言った。

「ふざけんじゃねえ。お前ら……こいつから慰謝料を取れ!」

「へい!」


 知性の無さそうな顔をしていると思ったら、階級を笠に着たゴロツキだったようだ。

「ほぐば!?」

「はべし!?」

 俺は襲ってきたアイアン階級の連中を殴り倒すと、シルバー階級を無視して逃げた。さすがにシルバー階級を殴ると、一方的に俺が悪くなる。

「こ、こいつ……強いぞ!?」

「やれ、何としてもぶっ潰せ!!」

「へい!」

 目の前にはナイフを構えたブロンズ階級の男が立ちはだかったが、俺は刃先の動きを読むと、積み上げられた樽を蹴って男を巻き込んだ。

「はぐらほ!?」

 よし。こうすれば足が引っかかっただけと言い訳ができる。


「こ、この!」

 俺は驚いて振り返った。

 なんとシルバー階級の男は、クロスボウを構えている。

「死ねや!」

 矢がはじき出されると同時に、俺は反射的に投げナイフを放っていた。


「ぐぎゃああああああああああ!?」

 シルバー階級の男の放った矢は狙いを外し、俺の側にあった木箱へと刺さり、投げナイフは見事に男の、まあここでは書けない場所に突き刺さっていた。

「……あ」

「……」

「……」

 どんな理由があろうと、下層階級の人間が上層階級……特にシルバー階級以上の人間を傷つけることは御法度である。

「アニキ……アニキ!」

「うわ……マジかよ!?」

 俺は全速力で、この場から離れた。



 翌朝、森の中から様子を窺うと、冒険者街の入り口に掲示されている手配書が増えていた。


【シュジン アイアン階級でありながらシルバー階級の冒険者を殺害】

 さ、殺害……。

 面倒なことになったものだ。怪我をさせただけなら誤魔化すこともできたかもしれないが、殺めてしまったとなれば、良くて絞首刑。悪ければ磔や火炙りになるだろう。


 俺を拾って育ててくれた孤児院の人たちには悪いが……やはり、人間社会は性に合わなかったようだ。今は孤児院の関係者も亡くなっているので迷惑が掛かることもないだろう。


「森を抜けて遠い国でやり直すか……モンスターとなるかのどちらかだろうな。気の赴くままにいくか!」

【作者からの挨拶】

 星が欲しい! ただそれだけのために挨拶コーナーを設けた作者のスィグです。

 さて皆様にお願いです。

 【ブックマーク】の登録と、広告バーナー下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にする作業をよろしくお願いします。5つ全部をするのに抵抗のある方は★ひとつでも構いません。是非、ご検討のほどを……。


 さて、次はいよいよシュジンが主君と会って改名します。乞うご期待!

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