肉球2 ねこパンチ先生のモーニングルーティン
吾輩は猫である。その名もねこパンチ!
にゃつめそうせき
朝7時、私は学校の職員室へと足を運んだ。昨日7時45分に来るよう言われたけど、気合を入れて早めに来てみました。普通のチューターの先生たちは、専用の部屋があるのだけれど、私は特別で職員室に自分の席があります。なぜなら、私の業務はちょっと特殊だからです。
この時間は、7時という時間は、始業の1時間以上前の時間です。職員室には、人があまりいません。私は、先生たちに挨拶をしながら、自分の座席に着きました。これが、私のデスクか〜。今日から私はここで働きます! いつも以上に気合が入ります。私は、カバンから荷物を取り出して身辺整理をすることにしました。すると、私に声をかけてくる先生がいます。
「犬丸先生おはようございます。ずいぶん早いですね」
「おはようございます! ねこパンチ先生、今日からよろしくお願いします」
私の隣の机に、新聞を口にくわえたネコさんが、飛び乗りました。背中には、謎のポーチを装着し、首には黒い蝶ネクタイが巻かれています。この人は、私の先輩先生で色々指導をして下さる《ねこパンチ先生》です。マジもののネコさんです! 私と会話できているのは、 《猫言語翻訳機~にゃうにゃう~》という謎の装置を使っているからです。これのおかげで、彼?は、学校の先生が出来ている、と言うわけです。
……いや、そうはならんだろ!!!
実のところ、私はまだこの状況についていけません。いくらコミュニケーションが取れたって、それで教師が務まってたまるもんですか!!大体、なんでみんなこの状況を受け入れてるの!?
一方のねこパンチ先生は、机に新聞を広げて読んでいます。新聞を読む猫なんて初めて見ます。よくよくデスクを見てみると、ねこパンチ先生の机は、物が少なく整理されていました。そして、置かれている物には、全て不自然な取手がついています。多分、自分で荷物を運ぶためなんだと思います。それから、高さが20センチくらいの木箱が机の真ん中に置いてあります。それにしても、この先生……私は、彼に質問します。
「ねこパンチ先生。先生は、何時に出勤しているんですか?」
ねこパンチ先生は、答えます。
「6時には職員室に居るよ」
「6時!! そんなに早く来て何をしているんですか!? ……ハッ。聞いたことがあります。やっぱり教師ってブラックなんですか!?」
ねこパンチ先生は、私の方を見て言いました。
「私は、きちんと定時に帰っているよ。私は、この体だから、他の先生に仕事をお願いすることも多い。だから、仕事を多くもらっているんだ。朝早く来て、その仕事をしたり、職員室の換気をしたり、郵便物を該当の先生に配ったりとか一通りね。」
この人、ネコなのにちゃんと仕事してるぅ〜!!!
そして! 私には、もう一つ疑問が浮かびました。
「ところで、先生。学校の仕事って……パソコン使いますよね? 一体どうやって、パソコン使ってるんですか!?」
すると、ねこパンチ先生が、机の棚からノートパソコンを取り出し、机の上の木箱の上に置きました。そのパソコンにも不自然な取手がついています。彼は、そのとってを咥えて、ノートパソコンを開くと、パソコンの前でお座りをしながらタイピングを始めました。あの謎の木箱は、パソコン台だったようです。なんかもう、仕事環境が完成されていました。思わず、感心をしてしまいます。
そうこうしていると、ひとりの先生が私たちの元に近づいて来ました。女性の若い先生です。なんなら、私と同じくらいの年齢に見えます。その先生は、ねこパンチ先生に言いました。
「ねこパンチ先生、お気遣いありがとうございます。お菓子ごちそうさまです。」
「いえいえ、最近残業が多いようですね。頑張るのは結構ですが、ご自愛もなさって下さいね。」
「はい、失礼します。」
「……ねこパンチ先生、さっきの先生は?」
「彼女かい? 最近残業が多かったみたいだからね。今朝、机にお菓子を置いておいたんだ。残業記録は、事務室のタイムカードを見ればわかるからね。残業続きの先生には、お菓子をあげたり、声をかけたりしているんだ。」
なんだそれ!? いい先輩だ!!
……でも、騙されませんよ!! それだけで教師が務まるはずがありません!! そう思っていると、今度は、ねこパンチ先生の方から私に話しかけてきました。
「犬丸先生、申し訳ない。私の背中のポーチから、インク壺を取り出して、蓋を開けてくれないかな?」
ねこパンチ先生は、私に背中を向けます。
「え? あ……はい。」
私は、ねこパンチ先生の背中のポーチからインク壺を取り出します。それにしても、ずいぶん毛並みがふわふわしています。………モフモフしたい!!
……ハッ。いけない!!変なことを考えてしまった。 私は、気を取り直して、そのインク壺をねこパンチ先生の机に置き、蓋を開けた。
すると、ねこパンチ先生は、どこからともなく出席簿を口に咥えて持ってきました。そして机の上に、出席簿を開き……
……シャキン!
右手から爪を露出させました。どういうわけか、一本だけ爪が真っ黒です。ねこパンチ先生は、その真っ黒な爪をインク壺に漬けると……その爪で出席簿にカリカリと記入を始めました。
この猫、本当に仕事ちゃんとしてるぅぅぅぅぅ!!!
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