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私と魔女 −再会−  作者: 彩花-saika-
第四章 約束
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91 ★④ 小話集

■手に入れたぞ! 魔法のアイテム!


 アルフォンスがいなくなった後。クレアとエレノアの誕生日会を終え、港へと向かう途中での話。


 エレノアはアルフォンスの使っていた青い布を握りしめ、鏡の前でドキドキ、ワクワクしている。これは、エルフである彼が人間のふりをするために使っていた魔法の布。


 茶髪に茶色いひげに人間の肌に瞳、ずっと彼のことを人間だと思っていたのはこの布のせいだった。彼女は今、右手にアルフォンス頭巾と名付けた青い布を握りしめている。左手には、ウッドエルフのヘンザから貰ったお守り。魔法の効果なんてないぞ!って言われた残念なお守りを握りしめの脳内ランキングを決めていた。


 ふふふふふ。我が家のフライパンはすごかったし、ダントツでスーパーウルトラマジックアイテムだとして、ヘンザのお守りは効果ないからな。でも、嬉しいからな。いや、これは魔法アイテムランキングだ! 甘えはいかん! やはり、ヘンザのお守りは三位に降格だな。よし、それじゃいっちょ二位の活躍を見てみますか!


 エレノアは頭にアルフォンス頭巾を巻くと、意気揚々と部屋を出ていく。食堂へ行くと「さぁ、私が誰かわかるかしら?」とばかりに歩き回った。


「やぁ、エレノア」

「エレノア」

「エレノア、どうしたんだい? いいことあったのかな?」


 おかしい。みんなには人間の美人の大人の女性に見えるはずだ。どうして、一発であたしがエレノアだとわかるのだろう? と、彼女は眉を寄せいつもの商人のおっちゃんの横に座った。


「ねぇ、あたしどう見える?」


「え? どうって、いつもどおりだけど?」


「そんなまさかぁ。ねぇねぇ、よくみて、よっくみて! どっか違うでしょ?」


「えぇ……ああ! 違うな! ホントだ」


「どこどこ?」


「鼻だよ。鼻!? 黒い鼻が、今日は普通に見えるよ」


「……そんだけ?」


「ん? あ、ああ。そうじゃないの?」


「えぇ!? そうだよな。元々、鼻と耳のさきっぽが少し、それと尻尾しかアニムの特徴ないもんなぁ」


「まぁ、エレノアちゃんはまさに猫ってかんじだけどな。ははは」


「あははは、ぎゃああああ!!」


「あ、ごめん! どうしたの!?」


「いってぇ! ばか! ばかばか! しっぽ踏んだよ! バカバカ!!」


「え!? 尻尾、見えないから。ごめん」


「……」


 その日の夜、


 鏡の前でアルフォンス頭巾を握りしめるエレノアが叫びながら叩きつけた。


「なんか違う!」


 ワナワナしながら床に叩きつけられたアルフォンス頭巾を見ながら、アルフォンスに誤りながらそれを拾うと腰に手をあてヘンザから貰ったお守りに一言。


「世の中、魔法だけじゃないんだよ」


 エレノアはアルフォンス頭巾を鞄の奥深くへと封印した。


■エレノア商会


 船の中ではある種の商売が成り立つ。特に今回のように船という密室では旅が長くなるほどに皆、娯楽に飢えてくる。


 長い船旅。そして船に乗るアニムの面々。そしてクレア。密室。これで商売道具は揃う。あとはあいつらをほのめかすだけだ。ふふふ、馬鹿どもめ。


「エ、エレノアさん。その、これでいいっすか?」


「おし。いいよ。それじゃ、こういうんだよ」


『クレア、ここにたんこぶがあって痛いんだ。さすってくれるかな? 君に痛いの痛いのとんでけって言われるとなんだか治った気がする。きっと、魔法じゃないかな?』


「ほんとにそんなんでいいのか?」


「ああ。行った行った! はい、次――」


 エレノアが通路に用意したのは、小さな木箱で作ったテーブルと椅子。そこで彼女は怪しい商売をしている。アニムがクレアに触られて喜ぶのを知っている彼女は、それを逆手にとって商売をしているのだ。内容を変えるタイミングは簡単。彼女から教えてくれる。


 その日の夜、


「ねぇ、エレノア? 最近やたらアニムが来るのよ。それで、私に撫でてっていうの? たんこぶがあるかどうか見てくれとか、撫でたら治るからとか。あなた、何か知ってる?」


「え? え!? 何それ? 分かったよ。あいつらに注意しておくよ」


 ひひひ。私が元締めだとは彼女は思いもよらないだろう。小さな木箱に座った彼女がまた商売をしている。稼いだお金で昨日は看板『エレノア商会』を作ってもらった。これが「とうし」ってやつらしい。商売人のおっちゃんが言ってた。


「こ、これでいいっすか?」


「いや、もう料金を倍にしたよ。ほら、ここ見るんだよ。それにもう彼女に嘘は通じない。あたしが一発ぶんなぐるから、それでクレアのところに行くんだ」


「え! それじゃ痛いじゃないっすか。それになんで殴られるのに金払うんすか!?」


「ふざけるんじゃないよ。あたしはねぇ、心を痛めるんだよ? あんた達を殴る。それはもうぅ、心をさ、すごく、すごぉーく痛めるの。その『いしゃりょう』ってやつだ。それにね、言葉だけだと成功率半減だよ。それとも、殴られて必ず成功どっちがいい? あたしはいいんだよ? 儲かるからさ。でも、そんなひどいことたぁあたしには出来ないね。二回払うなら最初からこっちがいいだろう?」


「た、たしかにそうだ! エレノアさんすげぇ」


 その夜、クレアがエレノアに言う。


「ねぇ、エレノア? なんか今度は本当にたんこぶを作った人たちがやたら私のところへ来るのよ。それにどうしてあなたの手はそんなに赤いの? 何かを殴ったのかな? エレノア商会って何かしらね?」


「し、しらないよ」


 その後も、エレノアの商売はあの手この手で続いて行く。クレアに怒られるまで……。



※※※※※



■大人


 ある日、クレアとエレノアはバルタと一緒に大人区画へ忍び込む。もちろんこれは、エレノアに「大人」という勘違いを教えるためだ。イヴァーナの真実を知ってもらうためだ。大人区画の皆には協力してもらっている。


 意気揚々と忍び込むエレノア。もちろん嫌がる二人にモジャモジャを被せ、布を鼻の下で縛るコソ泥スタイルだ。クレアとバルタの二人は、エレノアをここへ連れてくるのが目的。彼女の機嫌を損ねるわけにはいかない。


 そして『大人の部屋』へと忍び寄る三人。仕込みとはわかっているがクレアは顔を赤くしている。イヴァーナの再現だからだ。エレノアが扉をこっそりと開け、クレアに「あれが大人だよ」と自慢しようとしたその時、彼女はその光景にイヴァーナの真実を知る。


 もちろん、エレノアに見せるとこまでが計画だ。全員に協力してもらっている。彼女の誤解を解くためだ。本に書いてあるよりも、ちょっと大げさにしてもらった。


 衝撃的だったのだろう。彼女は夜に一人で外へ出ていった。そして、握りしめたイヴァーナの本を投げ捨てる。


「なんか、違う!!」


 下を歩いていたエガシ。頭にぶつかって落ちた本を拾いパラパラとめくると顔を赤くしてキョロキョロとあたりを見回す。そして、本を服とお腹の間に隠すとそのまま帰っていった。



※※※※※



■ウッドソルト


 これはまだ先の話。とある港町で一人の子供が手を繋ぐ母親に聞いた。


「ねぇねぇ、なんで『うっどそると』でもらったお金を毎年ここに預けるの?」


「うん? それはね、彼女達へのお礼よ。そうね、儀式みたいなもの。無事に帰れますようにって。ずーっと無事に船旅ができてるのは彼女が作った船のおかげよ。だから、その木から採れる塩を売って貰ったお金の一部を、こうやって彼女の誕生日に預けるの。いつからかなぁ、まぁ、儀式よ。儀式」


「ははは、そうだな。彼女達が気づいてるかわからないけどな。お前も会えるといいなぁ。命の恩人だからな」


「そうなの?」


「そうさ」


「お父さんとお母さんの命の恩人?」


「そうだよ。それとお前のな」


「ふぅん」


 父と母、それと子供は手を繋ぎ道を歩く。するとゴーン、ゴーンと出発の合図が鳴る。船の近くまで行くと、仲間が二人を呼ぶ声がした。


「おおーーい! バルタ! ジーゴ! 早く手伝ってくれ」


「ああ、すぐ行くよ」


 三人は駆け足で楽しそうに船へと向かった――。


 これは小さなお話

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