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私と魔女 −再会−  作者: 彩花-saika-
第四章 約束
89/144

89 ★② 巨人の夢

小話です

寄港したときの巨人と小人の小話

「わははは。それじゃ頼んだぞ」


「ああ。任せて。君の待つ港まで大人しく運ぶよ」


 そう港で話すのはドワーフのリッカーとアルフォンス。クレアとエレノアの二人が港町につく前の話。


 時間になっても現れない巨人の弟、ミートの世話をアルフォンスに任せてリッカーは別の船で次の港へと向かった。今までに何度もあった彼にはなぜか安心感を感じる。人間ではあるもののリッカーは弟のミートのことを彼に任せた。


 一方、ミートは近くの森である女性と出会っている。それは彼にとって最高の女性でもある。巨人はドワーフから生まれる巨人症で成長が止まらない子。通常は骨格と内臓、筋肉の成長速度がずれ始めた頃から体の痛みと苦痛で不眠になる。眠れない巨人は次第に狂暴化し、おかしな行動をとるようになる。そもそもの生き方も含め早死にするのが一般的だ。

だが、彼は違った。すでに三メートルを超えるにもかかわらずスヤスヤと眠り、落ち着いている。それも全てあの日、あの森、あの泉で白の魔女がそれを取り払ってくれた。ミートからしたらその時の魔女も、今目の前にいる赤の魔女も、一緒に旅をしたアゼリアも皆同じ存在だ。リッカーが寝起きで違う髪型で起きてきたときと同じこと。


「ミートォ」


「あはは。だめだよミート。ほら、もう時間を過ぎてるじゃない? あら、迎えが来ちゃった。ワタシは行くよ」


「ミートー!」


 アルフォンスに見つけられたミートは、赤い髪の女性と別れ船に向かう。このアルフォンスという男は、彼女と違うが安らかな眠りを与えてくれる。歌ってはくれないが、アゼリアの子守歌を思い出す。


 眠るのは大好きだ。夢の中で彼女に会える。よく一緒に話す。船の中は退屈でも、眠って、食べて、また彼女と話す。リッカーは信じてくれないけど、彼女とはずっと一緒だ。


 ある日、いつものように倉庫で寝ていたら彼女の声が聞こえた。でも、ちょっと違う。それに夢の中じゃない。夢の外だ。


「ミート!――」

「――、助けて」


 よく似た二人の声が重なって聞こえた。はいはい、とハンドルを回す。すぐに「ありがとう」という彼女の声が聞こえた。あれ? ここはどこだっけ? そういう思いであたりを見回すといつもの倉庫だ。聞き間違え? ミートはそう思い、また眠りについた。彼女に会えるかもしれないから。


 ――港につき、荷物を降ろす。また彼女の声が聞こえた気がするミートは船を見上げた。すると、小さい彼女がいた! 黒い髪でかわいらしい。見たことのない彼女だ。嬉しい! 彼女がいる! そういう思いですぐに笑顔になるミート。でも、夢かもしれない? 手を振ってるけど、自分にしか見えないのかもしれない。念のため小さく手を振ろう。ミートは控えめに手を振った。


 そこで彼はあることを思い出した。彼女が子供を産んだことだ。そうだ、黒い髪の子だ。小さい、それはそれは小さい女の子。きっとその子に違いない。もう一度こっちを向かないかな? と待っていると振り向いてくれた。そう、彼女もそうだ。期待に応えてくれた。すると、突然足を蹴ってくるリッカー。


「ミートォ――」


「――、まだ言うか? だったらその子は持っていたか? ワシらが作った子供用の弓を? あの子用に特別に作ったんだぞ? そうだ。そろそろ十四歳くらいか? もう、大人用に作り替えてあげにゃならん。どうする? 会いに行くか? それともワシらのところに来るのか? わはははは。楽しみだの」


「ミートォー」


「来るって? そうか。来るのか」


 二人はそのまま仕事を続けた。その後、ギルドでリッカーが手続きをしながらカウンターの女性と話をしている。


「あら、リッカーさん。またお酒ですか? 今度は何味です? 前回のもすごい美味しかったですよ」


「わははは。そうだろう? 今回のは――」


 建物の中でリッカーがまた話し込んでいる。外で待つミートは子どもたちの山となっている。噴水前で座っていると建物の奥に猫がいるのに気づいた。普通の猫より大きい。自分にちょうどいいサイズかもしれない。


 そう思ったミートがその猫のところへ行く。きっと怖いのだろう。寂しいのだろう。牙をむき出しにして怯えている。それに舌を出してよだれを垂らしている。そうだ、噴水もあるし、水を飲ませてあげよう。


「ミートー」


 怖がらせないように掴まえて、撫でる。アゼリアがよくやっていた。彼は猫を両手で捕まえると抱き上げ体を噛んでじゃれてくるその猫を抑える。きっとじゃれたいんだろう。そして、噴水に連れて行くとリッカーがこちらを見て驚いている。そりゃ、こんなに可愛い猫だから。大きいし、他の小さい豆粒みたいな動物と違って一生懸命じゃれてくる。羨ましんだろうな、そう思って猫の背首を掴んで見せつけた。


「ミートォ!」


「ううおおぁあ! よくやったぞミート。おい、魔物だ! 魔物を捕まえたぞ! そのまま離すなよ? わははは」


「ちょっと、だれか! 手伝って!」


 嬉しそうなリッカー。慌てるギルドの人たち。彼らの言うとおりに猫を檻の中に入れた。話を聞いてる限り、どうやら迷子らしい。乗ってきた船に乗ってるはずだったとか。


「困りましたね。特別指定で許可をだしたのに、肝心の中身がここにいるなんて。それにしても、あなた達がいて良かったです。誰にも被害が出ないでしたから。助かりましたよ」


「わははは。さっすがミートじゃの。じゃぁ、ワシらはこれで行くかの」


「ミートォ」


 レカンタが荷物の偽装用に用意した魔物。中身を入れ替えたあとに、わざと街に逃した彼の目論見は図らずもこの二人に阻止された。起きもしなかった惨劇を妄想しながらレカンタは部屋でニヤニヤしている。

小話の小分けです


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