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私と魔女 −再会−  作者: 彩花-saika-
第四章 約束
75/144

75 約束③ 夜の女

■エレノア 獣人(アニム) 鼻と黒い尻尾が特徴のアニム 大人になりたがっている

■レカンタ 魔女を捕らえた5人の内の1人 物資担当 若い見た目 背が低く細め

■ハサラ 魔女を捕らえた5人の内の1人 一番背が高い 斧槍 頬骨 口悪い 

■イヴァーナ 本に出てくる大人の女性 エレノアの憧れで教師で師匠


 巨大船『海の羊』へと魔女を運び入れた五人の男達。運搬用の許可証に記されていた中身は魔物だったが、それを知る者は船の中にはこの五人以外には居なかった。


 数日前に魔女の木箱を点検している時、フードを被った謎の人物に遭遇したリーダーのアリと大楯のルカ。出入り口を透明な氷で塞がれ、魔女を封じ込める箱を壊すわけにもいかない二人はしかたなく出られるまで待機する。謎の人物に向かってルカの投げた短剣。その後、通路で発見した時には血がついたまま床に落ちていた。アリ達は数日の間、左わき腹近くに怪我を負った人物がいないか探し回ったが発見できずにいた。結果、相手の人種も性別も声も目的も分からないまま過ごすこととなり、交代で木箱を見張ることとなった。 


 光の魔女が入った木箱は三重になっていた。棺桶より小さい状態の箱。魔女の入った『それ』を封じ込める為に作られたテーブルの高さ程度の箱。そして、偽装するための『魔物用』となった大きな木箱。必要な部分には魔集鉱石が備え付けられている。


 一番外側の木箱の上でハサラがあぐらをかいて座っている。表情は険しく、片方の膝を小刻みにずっと動かしては小さな怒りを抑え切れず、見張りの交代のためにやってきたアリを視界に捉えた瞬間から突っかかった。


「っざけんなよ。ったく、どこのどいつだよ。おい、おせえんだよ」


「時間通りだ。だが、無視もできないだろう。目的もわからず、どこまで知られたのかわからないしな」


 頬杖で不満な顔をしたままのハサラがアリに質問を続けた。。


「強そうなやつか? 人間の魔法使いか?」


「どうだろうな。フードだったから全てはわからないが、少なくとも手に杖は持っていなかったな。持っていたとしても、ローブの中に隠せる程小さい物だろう。ただ、相当な魔法の使い手なのは確かだ」


「人間の魔法使いでそんなことできそうなやつって言ったら、数えるほどしかいないぞ。もしかして、『雷舞のルドヴィンチ』か!?」


「いや。彼じゃないだろう。話に聞いた容姿とは程遠い。それと医務室を見張っているがもう無駄だろうな。自分で手当したのか、あるいは――」


「めずらしいな、お前。そんなにいろんな表情見たのは久しぶりだぜ」


 死んだ人のような目、無表情のアリでも顔が麻痺しているわけではない。状況に応じて多少表情を作るが、ほとんどの人がそれに気づかないだけだった。ハサラは付き合いも長く彼のちょっとした仕草に驚いていた。


「そうか? ハサラも気をつけておけ。まだ相手の種族も目的もわからん。見えた手は人間のようだったが。思い込みはしないほうがいい。なんせ、直前までは姿すら全く見えなかったからな。氷の鏡のような魔法を使っていたな……多分、視覚に作用するんだろう」


「へぇ。まぁ、見つけて、殺して、首ちょんぱして、ここに飾ればいいんだろ?」


「ああ。だが、殺す前に仲間も探さないとな」


 アリが木箱の前においた椅子に座ると、ハサラは立ち上がりその場をあとにした。自分たちの部屋に戻ると、小さな小瓶をニヤニヤした顔で見つめるレカンタがいた。いつものようにハサラは彼に皮肉を込めた挨拶をする。


「よお、動物好きのレカンタ。そんなに好きなら自分で飲めばいいじゃねぇか?」


「飲むわけないだろ。吸血症になりたいならお前にやるけどな」


 折角の至福の時間。好きなだけ、好きなことを妄想していたのを邪魔されたレカンタは嫌そうな顔をしてハサラに対して背中を向けた。


「んだよ。ご機嫌斜めだな、少年。俺だって見張りのせいでイライラしてんだぜ。お前も早くそれを使いたいんだろ?」


 レカンタは背中を向けたままだったが、何か案でもありそうな彼の物言いに少しだけ耳を向けた。話を聞く姿勢になったのがハサラにはわかり、「ほらな?」といった顔をして話を続ける。


「一回分か? そんなの使って楽しいのかね。それに後遺症がすごいんだろそれ? それ使うと次の日の夜には吸血症になってるじゃねぇか。まだ、この船で使ったりするなよ? 問題は起こすなって言われてるんだから」


「ハサラみたいに歪んだやつには幸福感っていうのがわからないんだろうね。『光の魔女の血』は裏で取引される最高の薬さ。戦いながら抜き取るのは至難の業だけど。これを飲んだ相手がどうなるか見たことある?」


「『レカンタ大好き〜!』とか『私を好きにして〜!』とか言ってもらって興奮するんだろ? お子様だよな」


「概ね合ってるけど……。これはすごく”開放的”になるんだよ。まぁ、確かに吸血症になるのは困るけど。出来たら、港につく前の日に使いたかったけどさ」


「けど?」


「ここさ、かわいい女の子が多いんだよ。特に一人。いい子を見つけたんだ」


「だーから、『お若い』レカンタさんは妄想して発散して喜んでるのか? 見た目だけ若い変態は――」


「あ? お前だってそろそろ限界だろ? 誰かで遊びたい頃じゃないのか?」


「お前と一緒にすんじゃねぇよ」


 険悪なムードなまま二人は部屋の中でしばらく過ごした。ハサラは斧槍の手入れをしたり、木を削ったりしていた。レカンタは小瓶を見つめたまま、ずっと笑顔だった。仰向けに寝そべったレカンタがボソッと、


「俺の狙ってる子さ、黒い髪の女の子と一緒にいるんだよな。黒い……髪の……女の子。いつも笑顔で、人気の、黒ーい、すごーく黒い髪の女の子」


 わざと強調するように言ってくるレカンタにイライラしてきたハサラが木を削っていた短刀を机に突き刺すと無言で睨見返してきた。レカンタは彼の好みをよく知っている。笑顔の多い子や、明るい子、優しい子が彼の好み。その中でも黒髪の女の子が大好物。そういう女性達を『油断させて』から絶望させる。恐怖を与える。悲しませる。困惑させ震え上がらせる。そういう感情と表情の移ろいが彼を興奮させる。魔女を捕まえた近くの村で遊んだのが最後。悲鳴がうるさかったが、村を出る時だったのもあって『処理』は簡単だった。


「くーろい、かーみの、きれいな、おーんなーのこぉ」


「うるせぇな! 何が言いてえんだよ」


「へへへ。いいこと思いついた。ハサラ? ちょっと協力してくんない? 俺の狙ってる子、楽しむのを手伝ってくれたら俺も協力するよ」


 元々はハサラが提案するつもりでいたが、いつものように喧嘩口調になった二人の会話は中断され、レカンタが意思を汲んで話を続ける。無言で聞いていたハサラ。レカンタは「おや? 聞きたいんだね?」と卑しい笑顔を見せる。


「この船ではさ、ドアに靴下を挟んでることあるだろ? あれ、今は邪魔をするなって合図なんだってさ」


「そうなのか? 気にはなってたが」


「その子さ、そういう部屋の前をウロチョロしてるんだよね。この前も部屋の前ですれ違ったら、慌ててどこかへ行ったね。そういう年頃みたいだ」


「お前、年なんて関係ないだろ」


「うるさいなぁ。とにかく、そういう部屋を用意してさ、連れ込むから。あとはこれを飲ませればあっちから好きなだけ求めてくるから」


「そんなの、俺が協力する必要あるか?」


「ハサラには入り口を見張っててもらいたいんだ。彼女には親みたいな男がいるし、そいつがまた弱そうなくせにやけに人気でさ。腹が立つんだ……。まぁ、何よりその黒髪の女の子が探しに来たらハサラにとってはいい話だと思うけど?」


「吸血症はどうするんだ?」


「だから、それもハサラに手伝ってほしい。ここは海の上だよ? 終わったらあとは――」


「ああ。そうだな。わかってんじゃねぇか。バレなきゃいいんだよ。まぁ、暇だし。お前の言うそいつも見てみたいしな。準備はお前に任せるぞ」


「やったね。大丈夫。もう目星はつけてあるから。じゃぁ、今晩にでも」


「まじか。明日の昼からは俺が当番だから、それまでには終わるだろうな?」


「んー。大丈夫じゃないかな。あの子、意外と激しいかもね」


 レカンタは魔女の血が入った小瓶を見つめ直した。透明な液体の中にキラキラと輝く赤い小さな光が漂っている。彼が見ているのはその先にある彼女との妄想の世界。


     ※


 夜、調理場で集まりいつものようにご飯を食べたクレアとエレノア。会話をして、くつろぎ、食事の片付けをして部屋へと戻ろうとした時、エレノアがまたどこかへ行こうとしていた。


「じゃぁ、クレア。あたし、ちょっとブラブラっとしてくる」


「今日も? いつもどこへ行ってるの? それに何をしてるの?」


「ははーん。さては、クレアも興味あるのかい? 大人の時間ってやつ」


「何よそれ。私が気になってるのは、エレノアがしてることよ」


「あたしはもう大人だから。知ってるクレア? 夜は大人の時間なんだよ」


「夜はみんなに等しく訪れるじゃない」


「かぁっ! これだからお子様は! あたしが貸してあげた本をちゃんと読めないのも納得だね」


「あれは。エレノアこそちゃんと読んだほうがいいわよ。多分、貴方が思ってるような――」


「チッチッチッチ」


 舌を鳴らしながら、指で否定するエレノア。クレアに背を向け、離れるようにゆっくりと艶かしく歩き、しっぽをぬるりと動かす。数歩進むと肩越しに振り返り、指を唇に当てたままウィンクする。


「それじゃ、あたし……夜の街に向かうよ。経験を重ねて女の高みへと向かうんだ。クレアの体にも後で教えて、あ・げ・る・!」


 鼻歌交じりでスキップしながら去っていったエレノア。彼女が向かった先がどこなのかは知っていた。


「エレノアったら」


 クレアはいい加減、エレノアの繰り広げる夜の営みに疲れていた。最近は実践よりも、観察に力を入れているようだが人伝いに聞く限り、彼女は今やただの不信人物に成り下がっていた。

大人たちは彼女を現行犯で捕まえることができず困っていた。今日もクレアは、相談を受けエレノアを捕まえる方法を一緒に考え、彼らが彼女に叱ってくれるのを願っている。


 エレノア本人が気づいていない問題はいくつかある。それを相談するためにクレアは事の発端となった一冊の本を手に持ち、隣の部屋にバルタが帰ってくるのを待った。


 一方、若いカップルや暇を持て余した人、船の中で結ばれた人や仕事をする人が集まる大人の区画へと忍び込んだエレノア。


「ひっひっひ。今日は色を変えたからすぐにはバレないだろ」


 黄色い布を頭に巻き、鼻と口のあたりで結んで顔を隠しているエレノアは音を立てずに通路をコソコソと歩いていた。


 アニムは人間と違って、そのほとんどの属種で嗅覚や聴覚に優れている場合が多い。もちろん、兄弟のいる長男や長女は同じ家の中で行われる「それ」を何度も感じ取って育つ。本人たちには至って普通の出来事で人間ほど恥ずかしさを感じることもない。


 森で育ったエレノアは体の成長と共に「それ」の正体に興味津々。小さい頃は気にもならなかったのに、最近では感じ取る度にソワソワする。一体何が起きているのか? 彼女には頭に詰め込んだ本の内容と、聞こえてくる声と会話だけが頼りだった。


 エレノアは通路を歩き、「今日はどの部屋にしようか」と物色していた。本人はさながら小説に出てくる探偵のつもりだった。しかし、顔を布で隠し、つま先立ちで動き、肘と手首を折り畳むかのように曲げているその姿は泥棒そのものだった。


 扉から扉へ、音もなく瞬時に移動するエレノア。顔を扉や壁にべったりとくっつけて耳を澄ます。いつもと違って今日はどこの部屋からも声や会話が聞こえてこない。次から次へと、扉から扉へ素早く移動しては聞き耳を立てても成果は得られなかった。そして、一番奥の部屋。行き止まりにある最後の部屋へとたどり着いたエレノア。 


 何故なのか? わからないけど、ムズムズ、モヤモヤ、ドキドキ、ソワソワする。見ちゃいけない気もするし、見たい気もする。彼女はこれまでの人生の中で一番葛藤する気持ちの中、荒い鼻息を出しながら、鼻の下を目一杯に伸ばし怪しい格好でコソコソと扉に近づく。


 前回も、前々回も、その前も、いざ扉を開けようとすると無駄に詰め込んだ知識が邪魔をする。この先は「秘密の時間」なのだ、と。そしていつもここで邪魔が入るのだ。「あ、いたぞ!」とか「また出たぞ!」とか「今日は赤い布だ!」とか言われる。きっと最初の頃にしどろもどろしていたのが悪かったんだろう。エレノアは過去の自分に反省しつつ、今日は堂々とコソコソしている。


 迷いなどない。ただ、この扉を開けるだけだ!


 扉越しに聞こえるのは男女のこもった声。


「はやくぅ。誰か来ちゃう」

「気になるのかい? それじゃこうしよう」

「いやぁ。それじゃ何も見えない」

「ほうら。大丈夫。俺も何も見えないから。今なら誰か来ても、気づかないさぁ」

「あーーれーー」


 エレノアは爆発しそうな胸の内を抑えた。これは好機! そう思いながら扉の音を立てないように開けていく。すると突然、


「きたぞ! いつものやつだ! ひっかかったな! 取り押さえろ!」


「ちくしょう! アタシの邪魔をするな!」


「待て、エレノア!」


「違う! エレノアじゃない! アタシは夜の女王! イッヴァーナ!」


「何がイヴァーナだ! おい、みんな! 今日は黄色い布だぞ! 捕まえろ!!」


 部屋の中にいたのは声を出していた男女だけではなかった。イヴァーナことエレノアを取り抑えようと数人の大人が待ち構えていたのだ。毎夜現れる泥棒まがいの格好をした怪しい人物を取り押さえるために罠を張っていた。今日はこの人物を捕まえるために、みんなが協力していたのだ。


 エレノアは素早い動きで飛びかかってくる男や女を投げ飛ばし、転がり倒れた大人を見下ろしたまま決め顔で言った。


「ふっ。今日のあたしは一皮むけるよ」


 他の部屋からも機会を伺っていた大人たちが続々と扉を開け出てきた。彼らはエレノアがコソコソと部屋の前を嗅ぎまわっている間、ずっと息を潜めたまま彼女が突き当りの部屋まで辿り着くのを待っていた。今いるのは奥の突き当りの部屋、逃げるはまっすぐ伸びた通路。両側にあるたくさんの部屋からはエレノアを捕まえようと躍起になる大人たち。ギギギとわずかに船音がする中、沈黙を破るコソ泥風エレノア。


 「ハハッ」と笑い飛ばしたエレノアは、大人たちで一杯になった通路へ走っていった。一人、また一人と彼女は相手を捌いていく。開いた扉や入り口のヘリや窓枠をうまく使い縦横無尽に飛び回った。


「おい、掴め!」

「何てやつだ! すばしっこいやつだ! 誰か押さえろ」

「こら、待てエレノア!」


 様々な声が聞こえる中、混乱の最中ついに一人の男性が頭に黄色い布を巻いた不審人物を捕まえた。


「やったぞ! 現行犯だ! これで言い逃れは出来ないぞエレノ……ア?」


 頭から黄色い布を奪い取った大人たちは唖然とした。布の下から出てきた顔は、一緒にエレノアを捕まえようとしていたはずの男性だった。すでにもみクシャにされる中、彼は気を失っていて「おい、起きろ」と肩を揺さぶられているが反応はなかった。


「まさか、こいつが犯人だったのか?」


「そんな……!? 確かにエレノアだったはず」


「いや、彼女はイヴァーナ。彼女を捕まえることは出来ないよ。彼女が……男を捕まえるんだから」


 通路に固まった集団の一番後ろにいた人物がそう言うと、皆が不思議そうに振り返った。そこには丸く大きなモジャモジャの髪の毛に髭を生やした女性が立っていた。大人たちは「え?」という顔で驚きを隠せないでいた。


挿絵(By みてみん)


 何事もなかったようにモジャモジャの彼女は、片方の手をまるで鞭をしならせるかのように上げ、それを別れの挨拶として歩き始めた。哀愁漂う彼女の背中に呆然とする大人たちが言葉を詰まらせながらも叫ぶ。


「ク、クソ。こいつ、今日は二枚被ってやがった。何やりきった感出してんだエレノア! 待て、コラ!」

「舞台用のカツラじゃねぇか!」

「髭生やした女がいるか!」

 

「うるさい! イヴァーナだって言ってんだろ! バーカ! バーカ! 誰が捕まるか! ぺっ! ぺっ!」


「あ! こいつ! クソ!」


 舌を出し挑発するエレノアはそのまま誰よりも速くその場を去っていった。追いつけず、諦め歩き始めた大人たちが慰め合うと「もう少しだった」と部屋に集まり反省会を始めた。


 大人の区画から出る頃には歩き始めたエレノア。


「これで大丈夫。まさか一皮むくことになるとはね。それにしても、なんで名前がバレたんだ」


 船の中にいるアニムで黒いしっぽを持っているのが自分だけだと知らないエレノアは、モジャモジャのカツラを取りながら悔しそうに通路を歩いていた。


「今日は静かだと思ったよ。全く……。あたしを捕まえるために総出であそこまでするかね」


 その後も独り言をぶつぶつと言いながら歩いていた。


「はぁ、あたしも早く大人になりたいな。なんだって邪魔するのさ……」


「へぇ? それならいい場所を知ってるよ、エレノア」


 エレノアが顔を上げると、通路脇の木箱の上に座った男の姿が目に入った。容姿は若く見えるが、口調は大人だった。ここ最近、何度か声をかけてきたレカンタという人だ。


「よっ。レカンタ。いい場所って?」


「ここから少し離れたところにある部屋だよ。大人なら皆が知ってる。エレノアも知りたい?」


 大人ならみんな知っている場所を知れば、それはすなわち自分も大人の仲間入り! そう考えたエレノアは即答した。


「知りたい! どこ!?」


「こっちだよ」


 レカンタはここ数日、エレノアに何度も接触していた。すれ違うことから始め、小さな気遣いや挨拶から少しずつ彼女と親しくなっていった。何より、船の中ではクレアとエレノアの評判はよく聞くため、近づくための情報を集めるのは容易い事だった。


 レカンタはエレノアの前を歩き、彼女に見えない所で口元を嬉しそうに釣り上げていた。ポケットに突っ込んだ手で光の魔女の血が入った小瓶を弄っていた。「これを飲ませれば彼女は気持ちよくせがんでくるだろう。我慢できずに、嬉しそうに――」そう考え、このあとのことを妄想しながら歩いていると、エレノアが背後から話しかけてきた。


「イシシ。あたしもついに正真正銘の大人の仲間入りだ! あ、そうだ! レカンタも手伝ってよ?」


「え? 俺は構わないけど。俺でいいのかい?」


「いいよ! あたしは誰だっていいんだ。男なら! それにレカンタは経験豊富そうだし、あたしの相手にちょうどいいと思う。正直さぁ、普通の男じゃ耐えられないと思うんだよね。あたしのテクには」


 少し拍子抜けするレカンタだったが、乗り気なのはそれで構わないと思った。「これなら小瓶はすぐには使わないか。楽しんだ後で無理矢理もう一回……」そう考えながら、明日の昼には見張り当番の待っているハサラに心の中で先に謝っていた。


 後ろを歩くエレノアが時折「あ、これ!」「これも」と何かを手に取っていた。用意した部屋に着くころには手に持ったカツラに蝋燭が入っているのが見えた。


「ここだよ」


「誰も来ないかな?」


「ああ。ほら、あそこに男の人がいるだろ? 彼が見張っててくれるんだ。だから、好きなだけ楽しめるよ」


 口を開け、目をキラキラさせ嬉しい表情を顔いっぱいに出すエレノア。扉を開け彼女を先に通すとレカンタは立っていたハサラに小さく頷いた。そして、扉が閉まる。


 蝋燭に火をつけ、レカンタが用意しておいた飲み物にポケットから出した光の魔女の血をこっそりと入れた。


「飲み物、ここにあるからね」


「ありがと……。それじゃ、始めるかな。こっち、ベッドの前に来て。あたし、ここからがいい」


 エレノア主導の元、レカンタにとって激しく熱い夜が始まる。彼女は目を瞑り下を向いたまま大きく息を吸うと、少しだけ間を置きゆっくりと吐いた。そして、ゆっくりを目を開けながら彼を見つめ、


「あたしはイヴァーナ。夜の歌を聞きたいんでしょ? さぁ、始めるわよ」

5人の男:戦士としての特徴

アリ:リーダーで無表情、無感情。剣の使い手。冷酷だが、残酷ではない

レカンタ:物資担当。若く、背が低め。布、頭巾を頭に巻いていることが多い。ボウガン、小道具など。

ハサラ:一番背が高く、頬骨、短髪。斧槍。細マッチョの骨格ガイ

ルカ:大楯。アリの相棒的存在。全体的に丸い。壁役、細い目がどこ見てるかわかんない

シルツ:剣盾。平均的能力。警戒心強い。索敵能力にたける。


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