74 約束② アルフォンスという名の人間
前話、ジーゴがアルフォンスを探しに行ったところから
倉庫区画の奥にある危険物の箱。遊び半分で調べていると、中から出てきた黒い靄にラニが襲われた。ケガもなく、青ざめただけのラニだったが、心配したジーゴは何かわかるのではないかとアルフォンスの元へと向かっていた。いくつかの場所を探し回った後、いつものようにクレアと一緒に動物の様子を確認しているアルフォンスを見つけた。
「アルフォンスさん!」
名前を呼ばれたアルフォンスは、ジーゴの口調からただ呼ばれただけではないことを知り手を止め振り返った。横にいるクレアも同じようにジーゴへと振り返った。
「やあ、ジーゴ。そんなに慌ててどうしたのかな?」
「奥の積み荷の事なんだ。あの、えーっと、一番奥の、例のさ、あの――」
ジーゴが歯切れ悪く会話を始めた。視線の先に何度もクレアを捉えていることに気づいたアルフォンスが、
「ああ。魔物の事だね。それならクレアも知っているから大丈夫だよ。気を使わせてしまったね。ありがとう」
「え? そうなの? じゃぁ……。さっき、魔物の箱を調べていたんだ。そしたら帰り際にラニが倒れてしまって。その、あいつが言うには『箱から黒い靄が出てきた』って」
「黒い靄? それで、ラニには何か変わった様子はあったのかな?」
「なんか青ざめてたかな。倒れていたラニを起こした後は少し混乱していたように思えたよ。悪い夢でうなされてるやつをおこしたときみたいな」
「医務室には連れて行ったのかい?」
「いや、少しけだるそうだけど怪我もしてないし入口のテーブルまで戻ってそのまま。あの箱には魔物が入ってるそうだから、アルフォンスさんなら何か知ってるかなって思ってさ。黒い靄を出すような魔物」
アルフォンスは顔を下げ、心当たりがないか考えていたがこれといってジーゴに答えられるものがなかった。
「すまないね。君の力にはなれなそうだ。それにしても、どうしてそんなことをしたんだい?」
「え、あ? いや、やっぱりさ、得体のしれないものがあるのは怖いからさ。鳴き声だけでも聞こえないかなぁって……あはは」
気まずそうな顔に変わったジーゴは、頭を掻きながらクレアのこともチラリと覗いた。心配そうにしていたクレアの顔の眉がジーゴの言動で少しずつ怒っていく。それに気づいた彼はすぐに彼女から視線を外した。
「ははは。君たちの気持ちもわかるよ。正直、私もあの荷物の中身は気になっていてね。あとで警備のところへ行って許可証を確認してみるよ。中身について何かわかるかもしれないからね」
「そうか! よかった。もし何かわかったら教えてくれよな、アルフォンスさん! それまでは不用意に近づかないようにするよ」
「それまでは? もしかして動物たちが落ち着かないのって、その危険な魔物が入った箱をジーゴ達が担当してるから不安なのかしらね? 馬鹿なことをして魔物を外にだしたりしないか不安なんだわ、きっと」
腕を組み叱るように当てつけるクレアにジーゴがたじろぐ。
「ええ!? まさか、俺たちもそんなに馬鹿じゃないよ? クレア? バルタには内緒にしておいてくれよ?」
「馬鹿じゃないあなた達は、危険な魔物が入った箱に近づいて襲われたじゃない? どうかしらね」
クレアからバルタの耳に入ったら、心配されて怒られるのがオチだとわかっているジーゴは必死に彼女をなだめようとしていた。
「今度、カード遊びする時は手加減するからさ! な? 頼むよ」
「手加減されても嬉しくないわ。でも、そういう危ないことしないって言うなら考えてもいいかな。そうね……私からは言わない。でも、バルタに聞かれたら答えるからね」
「しない! しないから! それでいいよ。よし、じゃぁ俺は戻るよ。二人ともありがとう!」
ジーゴは見守っていたアルフォンスと腕組をするクレアに軽く手を振り、小走りで持ち場へと戻っていった。溜息をついたクレアがアルフォンスを見上げ、
「もう! 本当に大丈夫かな? 動物たちと同じように私も不安になってきたわ。ねぇ、アル? どう思う?」
「はは。彼も懲りただろう。大丈夫だよ、きっと。人は分からないことに不安を感じて、恐怖するからね。それを取り除いてあげないと」
「あの人たちは自業自得だと思う」
「不安や恐怖って言うのは時として間違った行動を誘発するよ。クレアにも心当たりはあるんじゃないのかな?」
「私、そんなことしないもん」
クレアはそう言った後に、アルフォンスが言いいたいことを理解した。そして言った手前、複雑な顔をしているとアルフォンスが頭の上に優しく手を置いてきた。彼は何も言わなかったが、二人の中ではそれが最後の会話になった。
その後、仕事を終え別れた二人。アルフォンスは警備の双子のアニムがいる場所へと向かった。危険物を運搬するための許可証を借りると、そこに記載されている内容をじっくりと確認した。特に許可証自体を念入りに観察する様を、双子のラヒトとレヌトは不思議そうに見ていた。
「二人ともありがとう。助かったよ」
アルフォンスはお礼を伝えると部屋を出て行った。残された双子の兄弟が顔を合わせてアルフォンスのことを話し始めた。
「アルフォンスさんは色々知ってるんだなぁ。それにしても不思議な人だよな。あの人に頼まれると嫌な気がしないし、安心して任せられるんだよ」
「そうそう。それに最近さ、クレアって黒髪の少女とよく一緒にいるんだよ。覚えてるか? あの黒髪、黒い瞳のすごくかわいい人間の女の子。アルフォンスさんも格好いいし、並んで歩いているとまるで親子みたいだよ」
「おお! それは俺も思ってたぞ。二人とも魅力的だしな。なんていうか、同じ星の人だよな」
「アルフォンさんとは長いこと一緒に仕事をしてるけどさ、いつも独りだったもんな。皆に声をかけて、皆が好きだけど、いつも独りだよな。でも、それがまたカッコ良かったり。だけど、クレアが一緒に来てからは二人一緒にいる時が一番しっくりくるよな」
「……、俺も、ああいう人間に生まれたかったな」
「お前、鼻が利かなくなった時のことを想像したことがあるか?」
「……。不便だよな。いや、そういうことじゃなくて。俺たちはアニムにならなかった人間だろ? どうせ人間で生まれるならもっとアルフォンスさんみたいにカッコよくだな――」
見た目は完全な人間でも、"鼻が利く"のはアニムの特徴だった双子の兄弟レヌトとラヒト。そんな他愛もない会話をして時間を過ごしていた。
※
夜も更けたころ。アルフォンスはいつもの場所から部屋へと戻った。中からは笑い声が聞こえている。扉を開けると、クレアとエレノアがいつものように楽しそうに話していた。
「二人とも、今日は冷え込むから暖かくして寝た方がいいよ。特にエレノア? 君は寒さに弱いからね」
昼間は暖かく、夜は心地よい風が吹く。夜空も綺麗なこの海域なのにアルフォンスは何を言ってるんだろうという顔で二人は返事をした。
「何言ってるんだよ、アル? いくらなんでもそんなに寒くならないでしょ? アタシだって、多少の寒さならへっちゃらだよ」
棚から取り出した毛布を、二人に渡すアルフォンス。エレノアにはクレアよりも多めに渡した。
「何言ってるのよ、エレノア? あなたってば寒いとすぐ私のベッドに来るじゃない? アル、わかった。気をつけとくね。アルはどこかへ行くの?」
「ああ。今夜はもう少し散歩をしてくるよ。それじゃ二人ともおやすみ」
アルフォンスが部屋の扉を閉める頃、クレアがエレノアの頭に毛布を追加で被せた。彼女は「暑くて死んじゃう!」と言いはねのけ、その後も二人の笑い声が背中越しに聞こえた。
アルフォンスは一人で倉庫区画へと向かっていた。次第に周りの空気は寒くなり、息が白くなっていく。彼は部屋から持ってきたフード付きのローブを羽織り、いつもの表情、いつもの柔らかい足音で船の中の通路を歩いていた。ただいつもと違っていたのは、倉庫に着くまで誰とも挨拶をせずに来たことだった。
彼が倉庫区画へ降りる階段に着くころには、船の中ではどこにいても息が白くなるほど、肩が縮こまり身震いするほどに冷え込んでいた。まるで氷山が漂う極寒の海に近づいているようだった。
階段を降りていくとジュプンとラニがベッドで寝ていた。ジーゴとエガシが話をしている。アルフォンスは彼らの様子を見ながら階段を降りて行った。ジーゴがその寒さから、湯を沸かし暖を取る為にストーブに火をつけていた。アルフォンスは正面で様子を眺めていたが、お互いに声をかけることはなかった。
そのままゆっくりとした足取りで倉庫の奥へと向かうアルフォンス。ジーゴとエガシから見えない所まで来ると、彼を挟むように存在していた二枚の氷で出来た大きな鏡のような板がサラサラとまるで花びらが舞うように散っていった。その間も彼は歩みを止めることなく、大きな木箱のある檻の方へと向かっていく。
危険な魔物が入っているということ。動物を扱えるということでアルフォンスにも檻の鍵は渡されていた。何より、皆から信頼されていたせいもある。彼はカギを開けると、大きな木箱をまずは外側からじっくりと調べた。
「いたって普通の木材。人が入れる扉が一つ。錠前か……。はて、どうしたものかな」
鍵を開けること自体は彼にとっては容易いことだった。船の皆が寒さで震える程に散りばめた氷霧の一部を集束させ氷の鍵を作ってもいいし、錠前の中からこじ開けてもいい、破壊してもいいし、木に穴を空けてもいい。ただ、船の中で自分が魔法を使えることを知っているのは少女二人だけだし、そんな彼女達も「眠りと鎮静化、簡単な風魔法」が使えるということしか知らない。十数年間、ただの人間としてうまいことやって来たのに正体につながる『何か』を残すのには乗り気でなかった。
「とりあえず、開けてみるかな」
許可証の内容ではなかにいるのはランスホーンという魔物だった。一本角の四足獣で、俊敏な動きと脚力、突進して刺さった角を抜いてすぐに生やす魔物。慣れれば手練れの冒険者一人でも相手が出来るような魔物だった。
アルフォンスが周囲にある氷の結晶を集めて鍵もどきを作成しようとした時、倉庫区画へ降りてくる二人の人物に気づいた。振りまいてある見えない程の氷の粒が揺らめき、彼に伝える。
「こんな時間に? 一体誰だろう。少し様子を見るか」
作業をやめたアルフォンスは、檻を出て鍵をかけるとフードを被り耳を澄ませる。まだ距離は遠いが、倉庫区画入口の階段下のテーブルで話す声を聞きとることは出来た。
「こんばんは。えっと、アリさんすね」
来客に対して立ち上がったジーゴが、魔女を捉え運び入れた五人の男のリーダーのアリに話しかけた。その男は死んだ目をしていて、表情は変わることなく淡々と話している。態度が悪いわけでも、優しいわけでも、威圧的なわけでもない。それでも話しかけているジーゴだけでなく傍にいたエガシすらも無表情で死んだ目をしている彼に不気味さを感じていた。
「俺たちの荷物を確認しに来た。異常がないか調べたい。お前たちから何か報告はあるか?」
質問をするアリの表情のせいで二人とも「バレてるのか?」と息をのんだが、すぐにジーゴが答えた。右肩を上げ、顔を傾け視線を泳がす。
「いやぁ、何もないっすよ。静かなもんで。本当に危険なんですか? あの箱……」
眉一つ動かさずにアリがジーゴの元へ近づいてきた。静かな倉庫をアリの足音と腰に携えた剣を抜く音が支配する。それが聞こえたジーゴは恐る恐る自分に近づいてきた男へと視線を戻した。
「俺を殺すつもりでかかってこい」
怒らせ、斬られるのかと思ったジーゴ。剣を握ったアリが言葉を放つや否やビクリとしたが、剣を強引に渡されると今度は置かれた自分の状況に恐怖を感じた。彼の言う通りにしたところで痛い目に合わされるか、もしかしたら殺されるのかもしれない。そう考えると寒さと相まって体が小刻みに震えた。
後ずさりするジーゴを見つめるアリの後ろに立っている男性。一緒に下りてきたのはルカだった。中肉中背、丸い顔に丸い体で大きな盾を持っていた。彼の目は閉じているのか、開いているのかも分からず、ニヤニヤした口元が不気味だった。
剣を握ったジーゴは自分がした質問から「こんなことになるとは!」と後悔しながらも、不気味な男二人の行動に怒りも少し覚えた。そうやって自信を奮い立たせようとしたが大きく振りかぶった剣はワザとらしく、避けてくれと言ってるようなものだった。
案の定、アリはジーゴの剣を避けるとあっという間に剣を奪い彼を軽く押しのけた。そして、また続く。
「そうじゃない。俺を殺すつもりで来いと言ったんだ」
淡々と続けるアリ。再度、嫌がるジーゴに剣を渡すとルカの方へ視線を向けた。口元をわずかに動かしたルカが腰から短剣を抜くと、目を丸くして見ていたエガシに近づき喉元へそれを沿わせた。背後から髪を掴まれ、首に短剣を当てられたエガシは小さくうめき声を挙げている。
「これでどうだ? 時間が惜しい。お前の質問に答えているんだ。あいつが死ぬぞ」
全く意味の分からないアリの行動にジーゴは先ず寒さを忘れた。そして、がむしゃらに剣を振った。今度は本当にアリを殺すつもりで何度も彼に襲い掛かった。どちらにしろ、自分かエガシが殺されるだろう。そういう覚悟でアリに何度も剣を振る。
ジーゴの攻撃を捌きながらアリが話しかけてきた。
「いい体だな。剣術はド素人だが、仕事柄鍛えているおかげか? まぁ、ストレスでそろそろ限界か……」
足を払い、手首を弾き、空中に舞った剣を奪い返すと倒れたジーゴに向けて剣を突き刺した。テーブルで短剣を首に突き付けられたエガシは目を丸くして見ていたが、突き刺さった剣を見て心臓が止まる勢いだった。
「どうだ? 俺からしたらお前は虫以下の相手だ。だが、そんな俺たちが五人いても用意されたものがなければあっさり殺される。そういう『ヤツ』があの中にいる。これで答えになるか?」
必死に首を縦に振るジーゴ。耳がこすれて熱さを感じるほどに顔ぎりぎりをかすり床に突き刺さった剣。エガシからは死んだと思っていたジーゴが生きていたことに驚いた。
「わかった。わかったから。すまない。馬鹿なことを聞いた俺がわるかった。どうぞ、これが鍵だ。行ってくれ」
ジーゴは倒れたまま腰についた檻の鍵をアリに渡した。アリは剣を引き抜き鞘に戻すと、鍵を受け取りルカと一緒に奥へと歩いて行った。ジーゴがテーブルに手を添え、震える体を支えながら椅子に座るとエガシが、
「生きててよかった。俺、ちょっと、トイレいってくるわ」
「あ、ああ。あいつらが戻ってくる前に帰って来いよ。俺も、ちょっと――」
こうして、全く起きることなく熟睡したジュプンとラニが知ることのない"二人だけの秘密"は、お互いに口に出すこともなく開かない箱へと閉じ込められた。
倉庫の奥、光の魔女を捕らえた大きな木箱の元へとやって来たアリとルカ。彼らは異常がないか周りを調べると、備え付けられた一枚扉を開け、中へと入っていった。様子を見ていたアルフォンスは頃合いを見て開けられたままの扉へと近づき、外から中の様子を伺った。
大きな木箱の中には、また木箱が入っていた。そのせいで中身を確認することは出来なかったが、許可証に記載してあった魔物でないのは確かだった。二人が会話を始めると、アルフォンスはその場から動かず、隠れもせずにそのまま聞いていた。アリが中を見回るルカに聞いている。
「どうだ? 問題なさそうか?」
「ああ。今回の魔女は割と大人しいな」
「毎回そうだといいんだがな。外に付けたのは前回までと同様に魔集鉱石。人が多い場所では役に立っている。それに、今回からは俺たちの武器に取り付けたのと同じ物を中の箱にも施してあるそうだ。それで外に出られないらしい」
「じゃぁ、次も今回みたいに楽になるって事か?」
「運ぶのはな」
「アイツらが、ろくでもないことしなきゃいいんだがな」
「ああ。まぁ、邪魔なら殺すさ」
「ルカンタが、また一回分だけ抜き取ったみたいだぞ」
「知っている。が、毎回のことだ。それに、戦いの最中にしている事だろう? 搬送中の契約はあっても、戦闘中に抜き取ってはいけないという契約はない。問題ない」
「確かにな。よし、問題ないぞ。今日は冷えるからな。戻ろう」
「ところで、さっきは短剣を首に当てていたが、投げる方はまだ得意か?」
質問してきたアリの見つめたルカが、一瞬の視線の動きを感じ取り腰に手を当てながら答えた。
「ああ」
言うや否や、ルカは短剣を開いた入口へと素早く投げる。ガラスが割れるように薄い一枚の氷の板が砕け散る。突き抜けた短剣は、突如現れたフードの人物の左わき腹に突き刺さっていた。その謎の人物は短剣をそのまま握りしめその場から立ち去った。
「逃がすか!」
アリが剣を抜き素早く入口を通ろうとした時、「ゴン!」という重く鈍い音が響いた。いつの間にか入口には分厚い透明な氷壁が出来ており、アリはそこへと突っ込んだ。「ははは」と笑いながら大きな盾でその氷の扉を破壊しようとしたルカを、
「やめろ」
ルカは動きを止めると、自分がいる場所を思い返した。頭から血を流したアリがわずかに眉を眉間へと寄せていた。
「くそ。なんだアイツ。まぁ、ルカの短剣が刺さっていたからあとで特定できるだろう。ここは順番に見回ることにする。あいつが何者かわかり、首をこの部屋に飾る時までだ」
「ああ」
魔女を閉じ込めるために作られた木の箱を壊すわけにいかない二人は、氷の扉をどうにかできるようになるまでそこで時間を潰した。一
方、フードを被り顔を見られていないアルフォンスは彼らから離れた直後、
「気づかれるとはね……」
最初こそ走って逃げて"見せた"が、ある程度距離を取ると何事もなかったかのように歩き始めた。手に持った短剣の先には氷がまとわりついていた。体に当たった時にはすでに氷が押さえ込んでいたのだ。その短剣を持ちながら、彼は昔のことを思い出し、ふと笑っていた。
「彼女に感謝しなくちゃね、赤の――。おかげで氷の鎧の精度が上がったよ」
アルフォンスは帰りもテーブルにいるジーゴ、階段ですれ違ったエガシに気づかれることなく歩いていた。一旦、動物区画に寄り短剣に偽物の血をつけるとわざと彼らに見つけやすいように捨てた。
そして部屋に戻ると、寒そうにするエレノアがクレアのベッドに入り込み彼女に抱き着いていた。
「お、お、おがえり」
「ははは。寒くて寝れなかったんだね。大丈夫、もう抜けたからすぐに暖かくなるよ」
「ほ、ほ、ほんとう?」
「ああ。約束するよ。次はエレノアが寒くならないようにもっと気を使うってね」
「ううう――」
「おやすみ、エレノア」
「おやずび」
■魔集鉱石 空中を漂う魔力を集め黒くなると言われる鉱石。その実態は分かっていない。小さく加工されたそれはお守りで使われることも多い。
■ストーブ 木の船で使うのは、沸騰石を利用した物。蒸留石と一緒で旅で人気な物。
■蒸留石 軽いつぶつぶの穴の開いた石。水に入れれば綺麗になって飲み水に出来る。海水用は別物。




