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私と魔女 −再会−  作者: 彩花-saika-
第二章 黒髪の少女と獣人
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31 幼少期③ 5歳 森の中のおばあさん 前編

 クレアと父親は家を出てから数時間、森を道なりに歩きおばあさんの家までやってきた。その家は森の中で突然に開けた場所にある木造石造りの一階建ての小さな家。


 木が家を囲うように出来たその空間では、太陽を空にはっきりと見ることが出来る時間は限られていた。正午に近い時間、周りの木から太陽が空に顔を出すと全体が照らされる、そういう場所だった。


 クレアと父親が辿り着いた時はすでに昼を過ぎており、太陽の光が木の葉っぱの隙間を通り地面や屋根や壁を不規則に照らしていた。


 小さな風で葉っぱが音を鳴らすと、太陽の形で照らすその光も一緒に揺れる。壁や形に合わせて映る太陽の光はその形を伸ばしている。


 台所に備え付けられている煙突からはモクモクと煙が出ていた。クレアはその様子を見て父親の手を離すと家の中へと駆けて行く。父親は少し切なくもあったが微笑ましいその光景には喜びの方が大きかった。


「おばあさん! クレアが来たよ」


 おばあさんは長く濃い色の髪をお団子にしている。クレアが玄関から勢いよく入ってくると駆け寄ってくるクレアを受け止める準備をした。


「こらこら、クレア。何日か前にも来たばっかじゃないか」


 その様子に父親が心配そうに声をかける。


「えへへ。いいのっ!」


 おばあさんは自分より小さい5歳になったクレアを幸せそうに見つめながら抱きしめている。クレアも両手と体とその顔を埋めておばあさんに抱き着いている。


「ねぇ、おばあさん? 今日は何をするの?」


 父親がその間に台所のテーブルに腰掛けた。しばらくして周りを見回すといつもするように家の外へと出て、薪割りをしたり、家の補修を始めた。


「そうだ。あのね。この前のおまじない。ちゃんと覚えたよ」


「そうかい。じゃぁ、忘れないように毎日寝る前に口にしないとね」


「うん。わかった!」


「いい子だね。それじゃ今日はこのかまどを使って一緒にお菓子を焼こうかね」


「うん!」


 二人は台所を白く汚しながら楽しい時間を過ごした。クレアは背が低く台の上で。おばあさんはゆっくりと的確に。クレアが失敗や白い粉をたくさん飛ばしてもすごく楽しんでいる。


「あ、そうだ。ノアおばさんからこれをもらったの」


「どれどれ……どんな味かな?」


「うんとね。甘い。甘いけどちょっと辛い!」


「はっはっは。水をどうぞ」


「あぁ。ノアおばさん、そんなこと言ってなかったのに」


「そうか甘くて辛いか。じゃぁ今晩は魚を焼いてそのソースを使おうか?」


「わかった。おとうさん!!」


 家の中から大声で呼ばれた父親が手袋をはめたまま台所の窓を開くと、外からクレアに声をかけた。


「なんだい? クレア」


「あのねお父さん。今日はノアおばさんからもらったこれを使うの」


「これ?」


「そう。あまくてからぁーいソース」


「ははは。それで?」


「おばあさんが、今日はそれをお魚に使うって」


「なるほどね。じゃぁ、じゃぁ身の大きい魚を捕まえてくるよ」


「うん!」


 そう言い手袋を外しながら薪割り台まで行くと、斧と手袋を元あった場所に戻す。銛を手に取り準備をしその足で近くの川へと向かった。


 家に残ったクレアとおばあさんはお菓子が焼きあがると、まずは持ち帰る分とエレノアとその家族にあげる分を袋に詰めた。そして、残ったお菓子を食べながらクレアがおばあさんに聞く。


「おばあさん、今日のお話はなぁに?」


「そうだねぇ。もう五歳になって大分経つねぇ」


「そうよ。もう怖いのだって平気。泣くのを我慢できるようになったの」


「はっはっは。それはいい」


「今日もね、小鹿が熊に襲われそうだったの」


「うんうん」


「それでね。わたしまるで熊に狙われてる気持ちになって。すごく怖くて、涙がどんどん出てきて」


 おばあさんがクレアの手を取って優しく耳を傾ける。


「でも、目をそらさずにちゃんと逃げなかった。涙は我慢できなかったけど。それで結局熊はそのまま気づかずにどこかへ行ってしまったの」


「うんうん。クレアは鹿とがんばったんだね」


「うん。でも、あの熊もおなかをすかせてたみたい」


「はっはっは。どっちも大事なんだねクレアは」


「うーん。そう! どっちも大事!」


「わがままだね」


「わがままかなぁ。あはは」


 おばあさんはクレアの頭を優しく撫でると一緒に立ち上がり、お腹いっぱいになったクレアを連れて外に出る。屋根の下にある揺り椅子へと移動した。


 クレアはおばあさんと一緒に座るのが大好きだったが、成長するにつれ小さく感じるおばあさんに少しずつ遠慮も覚えた。甘えられるうちに甘えようとその幸せをおばあさんごと抱きしめる。


「今日は森の魔女のお話をしようかな」


「森のまじょ?」


「そう。この世界には『光と闇の魔女』がいるよ」


「こわいの?」


「はっはっは。怖いのはみんな同じさ。人も動物も怒れば誰かを怖がらせる。ただね、闇の魔女は本当に恐ろしい」


「闇の?」


「そう。魔女の違いは覚えたかな? クレア」


「うん。えーっと、街のまじょと森のまじょ」


「ほお。えらいね」


「えへへ。街のまじょは人間で、街に住んでて……何か役に立つものを作る。それと魔法使いを育てる!」


「そうだね。それで森の魔女には『光』と『闇』の魔女がいるんだよ」


「わかった。じゃぁ、今日はそのやみのまじょのお話ね」


「そう。じゃぁ始めるよ」


 柔らかい風と太陽の木漏れ日の中、揺り椅子に座った二人は魔女の話を続ける。

■ 森のおばあさん おばあさん。長い髪を団子にしてる。お菓子の家の人ではない


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