28 外の世界へ④ 帰り道
「ねぇ? ミート止まってくれる!?」
「アウ?」
「なんじゃ?」
肩に乗っているアゼリアが突然ミートに呼びかけた。後ろを気にしながらそう呼びかけたアゼリアは、ミートが走るのをやめると急いで降ろしてもらう。そこで二人もウィルが傍にいないことに気が付いた。
「ウィル!」
アゼリアは地面に足をつけると来た道を戻り、彼の名前を呼びながら必死に走った。後ろから追いかけたリッカーとミートは暗闇の中で倒れたウィルを抱きかかえるアゼリアに追いつく。
「大丈夫。ちゃんと息はあるわ。よかったぁ――」
「わはは。途中から黙ってると思ったら、きつかったんだな」
「ミートォ」
「お? そうだな。笑い事じゃないな。あれだけ矢が刺さっとったんじゃ。傷がないとはいえ、きつかったろうに」
リードレ率いる団員が来る直前から、全ての決着がつくまで気絶していたアゼリアには何のことかわからなかった。それでもウィルが自分の為に必死になってくれたのは起きた瞬間からわかっていた。ウィルは心身ともに限界に達して倒れていた。
リッカーがミートの肩から降りようとした時、森の上空にあるエルフの郷がゆっくりと地上へ近づいていることに気づいた。
「しっかし馬鹿でかいの」
「何があったのかしら?」
彼女に抱きかかえられたウィルが目を覚ます。リッカーが最初に気づき、ふと聞く
「『何もない森』はどうだった?」
「そりゃ隠したくなる‥ぜ。俺のかわ‥いいアゼ――」
「ウィル! もう。こんな時までふざけて」
「わははは! こんな時まで女のこととはね。さぁ、行こうか。ミート。旅人を運んでやれ」
「ミート」
「お願いね。ミート。ありがとう」
「アウ」
アゼリアをとても気に入ってることがリッカーにはすぐにわかった。今までに見たことのないミートだった。それがリッカーには嬉しかった。歩きながらリッカーとアゼリアが会話をする。
「アゼリアはずっとこの森に住んどったんか?」
「いえ。この森ではないわ。森の上のあの街よ」
「おお。そうか……いいのか? その――」
「ええ。あれくらいじゃ被害はほとんどないもの。それに皆避難してるみたいだし」
ゆっくりと地上に降りてくるエルフの郷を振り返りリッカーがいう。
「これからどうするんじゃ?」
「うふふ。私、この人と一緒に世界を旅するわ。それで、いろんなものをこの目で見て、口で味わって、鼻で匂いを嗅いで、手で触って、足で歩いて、空気を感じて、心で受け止める」
「わはは。当たり前のように聞こえるが、お前さんからしたら大事なことなんだろうな?」
「あら。リッカーは世界をもう見て回ったの?」
「うん――。そういわれるとそうだな。まだ全部の酒を味わってないな」
「ミートは?」
「アウ。ミートォ」
「ね? ミートはたくさんの食べ物を食べる。リッカーはたくさんのお酒を飲む。みんなにとって世界は広いわ」
人間のウィル
エルフのアゼリア
ドワーフのリッカー
ジャイアントのミート
四人は一晩中歩き夜明け前に目的の場所へと辿り着く。崖の上、ねぐらにしていた洞窟から荷物をまとめ『何もない森』から離れ小さな村、街から街へと世界を旅して冒険を繰り広げることとなる。
■別作品:魔女の森6にて 繋がりあり
本当はこの数年をちゃんと書きたかったんですけど……ちょっとコメディ要素前回別バージョンで書いてます。収束点は一緒なので。そっちはのんびりかもですが!




