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私と魔女 −再会−  作者: 彩花-saika-
第一章 白銀の魔女
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23 魔女③ 袋を被った謎の男

 団員やシエナ、シルヴェールが最強と言われるリードレ団長と対決する人間の勝負の行方を息をするのを忘れるほどに夢中になり見守っていた。


「いくぞ」


 リードレがそう言った直後。旅人は驚いた。


 うお。これは加護に感謝だな……


 旅人が使う加護の空間の中ですら物凄い速さで移動してくるリードレ。剣を抜きかけ旅人の近くまで来る。体からパリパリと雷が細く小さく出ている。そして旅人に近づくほどゆっくりになっていくリードレから剣を奪うと、旅人はあることに気づいた。


 こいつ!? 視線が俺を追ってるぞ! なんて奴だ――

 

 そして「まぁ死にはしないだろう」と思いっきり腹を殴った。後ろへ吹き飛び始めると、初めはゆっくりどんどん加速するリードレを尻目に加護を解除する。空間が戻ると中の動きの反動もあり周囲にそれがはじけ飛ぶ。同時に団長は一瞬で吹き飛び遠くにある岩にめり込んだ。旅人は死んだかな?と殴った加減に後悔する。ここまでは旅人だけが知る世界だ。 


 他の皆には「いくぞ」と言ったリードレが謎の空気の衝撃と共に突如消えた。そして何かがその後方へ吹き飛んだようだった。直後、足元の草が焦げて吹き飛ぶ。順番がおかしかった。


 いつの間にか旅人が団長の剣とシルヴェールの剣を二刀流で持っている。それが何よりも勝負の結果を物語っていた。消えた団長を探そうと見渡すと、離れた岩にめり込む姿を発見する。


「ははは……」

「嘘でしょ……」


 シルヴェールとシエナが目を見開き震えながら言った。他の団員は皆「え?」という中、突如訪れる旅人への恐怖におののく。岩にめり込んで気絶している団長の顔は笑顔だった。ただ、弓持ちにした命令だけは生きている。「もしも俺が負けたら、弓全員で射殺せ」という命令だ。


「ふう。さっきといい、今と言い、連続はきついな……」


 少し鼻血を垂らした旅人がそれを拭う。その場の皆がリードレによるものだと思っていたが、本当は加護の連続使用によるものだった。彼女を受け止めるときとリードレに一回。旅人は少し頭痛を感じた。


「なぁ、お前ら! さっきのが一番強いんだろ? 帰ってくんないかな? 男と女の密な時間を邪魔しちゃ野暮だぜ! な? シエナちゃん?」


 旅人に指差されながら言われて、ふと自分が握りしめたシルヴェールの手を胸に押し当てていたことに気づく。気づかなかったのはシルヴェールも同じで、二人とも顔を赤くした。シエナは旅人に声をかけようとした時に矢が放たれようとしていることに気づく。


「あぶない!」


 シエナは敵であるはずの人間の旅人に思わずそう叫んだ。旅人はシエナの視線と雰囲気から弓を持った奴が何かしてきたのだと受け取った。すぐに弦の音が聞こえる。そして、振り向きざまに片足で回転し確認しながら矢を捌こうとしたが、足に刺さった。


「ってぇ。この雰囲気の中、そういうことする? お前、絶対に友達いないだろ?」


「うるさい! 命令だぞ! やれ! 逃がすな!」 

 

 最初に矢を放った団員が叫ぶと、弓を構え皆、矢を放つ。シルヴェールは怒りを覚えたが何もできなかった。何より、旅人は両手に持った剣で矢を捌き続けている。自分に何かできないかと、あたりを見回すと苦しそうな白い髪の彼女を見つける。


「シエナ! 彼は彼女を守っていた。お前が助けてやれ」


「はい!」


 彼女の元へ駆け寄ったシエナは驚いた。姫様によく似た白い髪のエルフがいたのだ。だが、中身が違っていた。旅人を助けたいが仲間を傷つけたくないシルヴェールは団長の元へ向かった。正々堂々と闘い完勝した旅人へ、もしかしたら恩赦を与えるかもと思ったのだ。シエナは彼女の安定に魔力を注ぐ。そして「何これ!?」と言い放つと、その場に気絶した。


 次々と放たれる矢を凌ぎ続ける旅人の周りには勢いよく落とした矢が地面に刺さったり、落ちたりしている。捌ききれなくなってきた矢が一本、また一本と静かに彼の体へと刺さる。苦痛の表情を悟られないように耐えながらも致命傷を避け次へとつないでいた。


 そして、同時に矢がたくさん飛んできたタイミングで加護をまた使った旅人。それはわずかな時間しか使えず、矢を数本見極めて落とすには役立った。しかしさらに大きな代償を伴い、混濁する意識と鼻血がかえって状況を悪くする。


「うおおぉぉ!」


 矢が尽きるまで、あと少し――


 矢を放っている団員達の方が、その迫力に押されるほど旅人の技と気力は凄かった。いつスキをついて反撃されるかわからない恐怖と混乱によって放たれた矢の一本が彼女の元へ飛んでいく。


 旅人はその一本の矢が大切な人へと向かっていくのに気づいた。それは悲しくも彼女の美しい顔へと突き刺さろうとしている。矢じりが眼の下、頬のあたりに到達する。旅人は必死に加護を使った。

そして、彼女の顔に刺さろうとしていた矢を掴む。


 同時に、噴き出るように鼻血がさらに増え、片方の膝が完全に地面へと落ちる。すぐさま、トス、トス、トスと鈍い音を立てその腕に何本か矢が刺さる。旅人は彼女と傍にいるシエナに当たらないようにさらにその身を挺して庇おうとした。



 絶望的な状況の中、それは起こった。



 ドスン!! 


 突然、上空から大きな岩が落ちてきた。旅人と放たれた矢の間に割り込んできた岩は全ての矢をはじいた。岩の陰に入った旅人は何が起きたのかわからず周りを見る。そして、そこには久しぶりに会う小男の姿があった。その姿を見た瞬間、その小さい体の何倍もの大きさの安心感を得られた。


「よお、旅人。間に合ったな」


「カハッ。よお、リッカー」


「ミーーオォォー!」


 遠くで叫ぶ声も聞こえた。旅人は笑おうとしたら鼻血と口の中の血でむせてしまった。そこへシルヴェールが駆け寄ってくる。旅人が飛んでくる矢からシエナの身も庇ってくれた様子を見ていた彼は、感謝の気持ちしかなかった。それと「え! ドワーフ!?」とだけ驚いた。言葉は分からないがシルヴェールの表情を見て「悪いか?」と返すリッカー。


「じゃぁ、後半戦いきますか……ここが男の見せ場ってね」 


 膝をついて息を切らしていた旅人は剣を地面に刺すと、それを支えに立ち上がろうとした。ミートは何人かを倒していた。突如現れたジャイアントに混乱しているようだった。


 旅人は彼女達を矢から守った岩の陰から出て、右手にリードレの剣、左手にシルヴェールの剣を持ち仁王立ちする。岩の陰ではリッカーがシルヴェールに問いかける。


「お前なんで参加しないんだ? 敵か? 仲間か?」


「いやぁ助けたいんですけど、仲間を傷つけるのは」


「じゃぁ――」


 お互いに言葉は分からなかいが概ね会話は成り立っていた。リッカーが腰から袋を取り出すと、急いでナイフで穴を二つ空ける。それを片膝でしゃがむシルヴェールに被せた。「くさっ」っと言ったがリッカーは「お前は、誰でもない。だろ?」そう言い、親指を立てる。シルヴェールはリッカーが望むことがわかり、しばし黙る。



 岩の横で剣を構えて立つ旅人に並んでリッカーが立ち上がる。


「よおし。元気もり……もりだぜぇ」


「無理をするな。旅人」


「そうですよ」


「え!? びっくりした。誰お前!?」


「誰でもないです」


「わははははは」


 突然、布の袋を被ったシルヴェールがこもった声で出てきたことに驚いた旅人。エルフの言葉を喋った旅人に一瞬驚くリッカーだったが、それも含めて後で飲みながら聞こうと思い大声で笑う。先に立った二人に最後の一人が加わった。


 体中に矢の刺さった謎の強い人間

  

 突如現れたドワーフ

 

 袋を被ったエルフ


 旅人は横にいる二人と遠くで暴れる一人に元気をもらう。しかし旅人の体には矢が刺さり、危ない状況に変わりはなかった。岩から出てきた三人に気づいた弓持ちがこちらへ矢を放つと、旅人がそれを剣で斬り落とした。「じゃあ、よろしく」とリッカーは彼女を守るように岩に戻った。


 旅人が袋を被ったシルヴェールに剣を返す。そのまま袋を被ったシルヴェールは剣持ちの元へ向かう。その手に戻った自分の剣が今までにないほどの状態になっている事に気づいたシルヴェール。自分が辿り着く目標を、手に残る感覚を忘れないよう腕に刻む。


 戻った戦場ではミートが槍を持った敵に苦戦している。その様子に気づいた旅人が剣を投げその槍持ちに膝をつかせた。そしてミートに叫ぶ、


「槍を!!」


「アイ」


 ミートが槍を奪い旅人にそれを投げる。槍を受け取ると慣れた様子で構える。彼の目的は一番使い慣れた武器を手にすることだった。そして、弓持ちに向かう。矢をよけ、弾きながら一人、また一人と倒す。


「俺は、剣より槍が得意なんだよ! やっと手に入れたぁ。やっぱしっくりくるなぁ」


「ホントですか? それ」


 袋を被ったシルヴェールがこもった声で呆れていた。そんな中、無理をした旅人は片膝を地面に着けているところを、三人の弓に狙われていた。そして放たれた矢は旅人が気づくことなく背後から頭、肩、腹部へと矢じりが彼に食い込んでいく。ゆっくりと――

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― 新着の感想 ―
[一言] そっか…外見的に自分の所の姫さまとそっくりでもエルフは魔力でも個人を識別するんですね。 力を使い過ぎると命縮めそうで…嫌ですね。今後悲しいことになりそう… 槍!槍いいですよね♪ 弓ぃ……
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