センターは私よ!!
並ぶのは、3 VS 3。
それはもう、戦争と言って良い。
現実世界で良くある戦争がここにある。
「ちょっとさぁ」
「なぜここで会う?」
左、
村木望月。
対する右、
槌谷実麗。
「そっち、傷だらけだけど。どーしたの?」
「いかんなぁ。お前等もだろ?合コンのつもりか?合戦してたように見えるぞ」
中央、
山寺沙耶。
対する中央、
木見潮朱里咲。
「化粧、どうしたんですか?」
「してる。血化粧だよ」
右、
柳葉姫子。
対する左、
槌谷美咲。
一体、何がこの6人にあった?
◇ ◇
こちらの発端は
「私達は合コンをするのよ」
「は?」
「へ?」
その話は一昨日から始まる。
村木に呼び出されたのは、沙耶と姫子の2人。
意外な組み合わせである。
「お前さ、僕や姫子とは、同じ出身じゃないだろ?なんの呼び出しかと思えば」
「清金とパピィはどーしたの?保坂とか」
正直、二人共。なぜに村木に呼ばれたのか分からない。しかし、理由は簡単。合コンだから。
「沙耶。あなたの頬の火傷。私の可愛さと対になるから。私がもっと可愛く綺麗に見えるでしょ?」
「は?」
「姫子。あんたは男にそこまで興味ないでしょ?認めたくないけど、可愛いし、話もできるし。盛り上げ役をお願い!」
「へ?」
今、超失礼な事を言ってきた。
「帰る。気分悪い」
「面白くない」
席を立つ、沙耶と姫子であったが。村木は引き止める。
「ちょっとちょっと。私のために恋のキューピッド役をやりなさいよ。数時間の間よ!幹事はやるから!いくらでも食べなさい!」
「ATM男を捜してるだけだろ」
「当て馬なんてやらないわよ」
しかし、村木はなんとか二人を説得する。今回の合コン相手は、超エリート大学の男達なのである。将来、有望な男達。
◇ ◇
そして、こちら側。
実はかなり急な合コンだった。ほぼ当日のことだ。
ビル内にある、一つのお店に集まったのは
「さて、合コンをする」
未婚の30代……
「今言った奴、死刑!」
「撲殺!!」
「捻り殺す!!」
年齢不詳の女性教員3人。木見潮、槌谷姉妹の3人は合コン相手を待つ。
優良会社のエリート軍団との合コン。(槌谷姉妹曰く)
「それでだが、誰がセンターだ?彼等が来る前に決めておこう」
「ごほっ、私でしょう。美咲。幹事と企画もしたんだから」
「姉さんは病弱で、唐突に血を吐くんだから端の方がいいわ」
「いかんなぁ、お前等姉妹は端。私が中央に座ることで収まりがいいだろう」
言い忘れたが。
木見潮達も、村木達も。とんでもねぇ身体能力を有する”超人”
美人女性という外見ではあるが、危険人物。女が男に求めるステータスがあるように、男だって女に求めるステータスがあるものだ。
ドゴオォォッ
「センターは殴り合いで決めるぞ!!」
「人数合わせの朱里咲さんがでしゃばるなぁ!!」
「お姉さんに逆らうとどうなるかー!げほぉっ!ごほぉっ!」
実麗の吐血もそうだが、3人の乱闘は自らの血だけでなく、店を大きく揺らし、騒がした。
壁も天井にも破壊の跡。というか、店があるビル全体が揺れるほどだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「なーに?この揺れ。地震じゃないでしょ」
そー言いながら、村木はめっちゃ化粧をして臨む、合コン。明らかな主役面。
「だりぃ」
完全な当て馬であることが分かっており、沙耶は迷彩服という女子らしからぬ格好。自衛隊員っぽく見えるが、頬の傷が修羅場を潜っていると伝えている。
「あんたの化粧の方が、なに?って訊きたいんだけど。盛りすぎじゃない?」
姫子もちょっとやってきました程度のお化粧。合コンの飯だけでなく、あとで別の店を奢れという要求を村木に掲示して引き受ける。目当ての男以外を惹きつけ、周りを盛り上げる役。
「ところでよ、席順はどーなってんの?」
「あんた、やる気なの?端よ端よ!」
合コンの数合わせに対して、とんでもねぇ事を言う村木。しかし、沙耶は別に動じない。この格好で分かる通り、合コンなどさせる気がないのだ。居心地が悪いから
「僕は3人全員、びびらせてやろうと思ってな」
お店のメニューを手に取ると、握る力のみでメニューを押し潰す。丸めたティッシュのように
「止めなさいよ、あんた!」
そーいう村木はオシボリにあるだろう、極めて小さい水分の全てを搾り出して、テーブルを濡らす。
「そーよ。一発芸大会じゃないでしょ」
ドンッ
その音。一番店内で響いて、注目を集めた。姫子は爪楊枝が入った円状の箱を、テーブルに全て突き刺した。当然、逆向きだ。テーブルに剣山ができた。見事な出来。
「盛り上げ役をやるんだから、私がセンターでいいよね」
「え?私好みの男を上手く、中央に座らせれば良いじゃない!第2、第3の候補が来るのよ!印象は大事!」
「合コンで位置が重要か?姫子の意見の方が理に叶ってる。端で喋れ。そもそも男が群がる女じゃねぇーよ、村木は。可愛くねぇーじゃん」
「うっせーな!ミンチにすんぞ、沙耶!!焼かれた雌ブタ!!」
「やんのか!?お前が僕に勝てるわけないだろ!!ペテン師女!!」
衝突しかける村木と沙耶。
「はぁ~、あ。私が中央に座るわ。あんた達、喧嘩しないで」
「な~~にぃぃ」
「口出しすんな!」
ドシンッ
村木と沙耶の両の拳を浴びる姫子。
「………あんた達」
口が切れて、血が出ると
「ふざけんのも大概にしろ!!」
姫子は素早く、村木に膝蹴り!沙耶に肘打ちをかます!!
「もう、こうなりゃ、バトルロワイヤルだ!!」
「生き残った奴が男を決める!いいねぇ!!」
「興味ねぇけど、この殺し合いは大歓迎だよ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
さらに揺らすビル。逃げ惑うお客さん達。警報の音すら聞こえず、6名はこのビル内で。合コンの位置取りというだけで、暴れる。
それは20分以上も
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
そして、
ドガラシャアアァァァッ
終わった。
ビルは崩壊し、合コンは中止となった。




