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英雄旅記  作者: 斬緋藍染
第5章:故郷
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帰還

「さっき心当たりがない訳では無いって言ってたけど、誰のこと?」

 アリカがガインにそう聞いた。

「今から向かおうとしている。凛々、故郷に向かおうと思うんだが、大丈夫だよな?」

「ええ。私は大丈夫です」

「じゃあ飛ぶぞ!」

 そう言い切る前に、ガインは窓から光の速さで飛んでいった。

「私たちも行きましょうか」

「そうですね」

 次いでアリカ、凛々と飛んでいった。


「ここが…」

「長閑な場所だろ。キュヴェイルにもこんな所があるんだぜ」

「すごい…ですね。私、こういう高原の雰囲気とか好きなんです」

「そっか。存分に楽しむといいよ」

「ただいま」

 アリカがガインの家に入って行った。

「ああ、おかえり」

 ガインの父、リュエルが出迎えてくれた。

 車椅子に乗っていた。

「そろそろ来るだろうと思っていた」

「なに?」

「この身も昔は【不死英雄】だったからな。なんとなくは分かるんだ」

「おじさん…なんで車椅子に…?」

「ああ、お前らが旅に出た日のことを覚えているか?」

「帝国軍が攻めてきて…」

「そうだ。そこで俺はアリカに『大魔導師』の力を与えた。しかし、それは前期『英雄』のヒトラーに体を侵食されている途中だったから、かなり無理をしたんだ。その影響で体が不自由になったって訳だ。だが、他に日常生活に支障はない。心配するな」

「へぇ。ところで、その二人は?」

 リュエルの後ろには二人の少年と少女がいた。それぞれ10歳くらいだ。

「ああ、この子たちはお前ら【不死英雄】の『支援者』だ。あそこの『勇者』は既に持ってるんだろ?」

「ああ、そいつ等が俺らの“裏”か」

「ほら、自己紹介しなさい」

「ぼ、僕はウコン。ウコン=シュタイネル」

「私はサコン。サコン=ストロエフ」

 少年は気弱そうで、少女は男勝りな感じだ。どちらもとても可愛らしい。いや、恐らくこの世に2人といないほどの至高の顔なのでは?

「へぇ。俺はガインってんだ。よろしくな」

 珍しい。ガインは子供が好きなのか。

「あたしはアリカ。よろしくね」

「ふ、ふん!言っとくけど、私はあんた達に使役される気は微塵もないからね!」

「サ、サコン。ダメだよそんな事言っちゃあ…。僕らの存在意義が無くなっちゃうよ…」

「ウコン…と言ったな。お前は気弱そうだが、強い心を持ってるな。成長したら良い男になりそうだ」

 ガインが頭を撫で、そう言った。

「サコン。お前は抵抗する心があるから相手に押されることはなさそうだ。だが、それは時にいけないこともある。程々にしといた方がいいぞ」

 頭を撫で、そう言う。

「ガイン…お前、子供には優しいんだな…」

「ば、バカを言うな。こいつらが仲間にならなければ大変だからだろ」

「そこらでいいか。ガイン、お前はサコン。アリカはウコンだ。よろしく頼んだぞ」

 早速懐かれたのか、サコンはガインにベッタリとくっついてる。

「サコン、暑苦しい。それに動きづらいからちょっと離れろ」

「こんなにカワイイ子がくっついてるのに、そんなこと言っていいのかな?」

「自分で言うな。気持ち悪ぃ」

「ウコンはいいの?ガインに甘えなくて」

「僕はいいんです。そんな事したら迷惑でしょうし…」

「じゃああたしに甘えなよ。あたしなら迷惑だとは思わないしさ」

「お前たち、こいつらの本来の存在意義を忘れたわけじゃなかろうな。愛玩じゃないんだぞ」

「分かってる。親父こいつ調整ミスってんじゃねぇのか?」

「ウコンを能力が最大限出すようにしちゃったから、サコンは人間性を出来る限り出そうとしたんだが、失敗だったか…」

 ガインが剥がそうとしても剥がれない。

「吸収しちゃえば問題は無い。それに、二人とも性能は究極だ。少しサコンの方が劣っているがな」

 バチバチッ!

「もう邪魔だから吸収するぞ!」

 凛々の時より遥かに早く終わった。ガインの強さか。

「あたしも!」

 バチバチッ────


 アリカは凛々と同じくらいかかった。

「さて、やりたい事は終わったし、長い旅だったろう。外にいる『勇者』も一緒にくつろぐがいい」

「そうだな」

「くつろげるものならどうぞ」

 ドアの方から声が聞こえてきた。

「久しぶりだな。『英雄』に『大魔導師』。外には『勇者』もいたな」

「お前は…『愚者(イカロス)』!」

「貴様、何故ここに…!」

 ガインが怒りを持った声で問う。

「君たちの生活をぶち壊しに来たんだよ」

 ガインは前触れもなく殴りかかった。

「フッ。愚か者めが」

 その拳はイカロスには届かず、虚空で抑えられた。

 と、次の瞬間ガインの体が右腕を軸に回転し、床に叩きつけられた。

「ガッ…!」

「ナイスだ『()()()』」

「な…んだと…?」

 イカロスの隣に女が立っていた。

 透明化していたようだ。それも【神類】の力の一つ。

「こんな所に一人で来るわけないでしょ。と、言うよりわたしが行かせないわ」

 機械の手を開いたり閉じたりしながら女はそう言った。

「名乗りましょうか。わたしは『機械兵』。デウス・エクス・マキナ。マキナと呼んでください」

「凛々!」

 パリーン!

 窓ガラスを割り、凛々が飛んできた。

 腕を剣に変え、マキナに突進した。

「っ!」

 二人は反対の窓に突っ込み、外へ出て行った。

「親父!あんたは逃げろ!」

「そうはいくか。俺も手助けするよ」

 イカロスの足元に魔法陣が展開された。

 次の瞬間、イカロスは部屋の中から消えた。

「外に移動させた。早く行かないと『勇者』が死んじまうぞ?」

 聞くより早く、二人は窓から飛び出して行った。リュエルが考えることなど分かっているというように。


「はぁァァァ!」

 エクスカリバーと同化した腕を振るいながら凛々はマキナに斬りかかっていた。

 対するマキナは機械の腕で攻撃を受けている。ダメージはほとんど負っていないようだ。

「効きませんね!私の体は絶対防御。本気を出さないと殺せませんよ!」

「本気を出さずとも殺して見せます!」

「凛々!あまり一人で突っ走るな!」

 ガインが叫ぶ。

「いいのか?他人(ひと)に気を回していて!」

 イカロスが後ろからナイフで奇襲してきた。

 しかしそれはアリカによって展開されたシールドによって防がれた。

「コンビネーションはバツグンか。なら…」

 マキナの近くにイカロスが寄って行き、

「こっちも二人で戦うまでだ」

「凛々、お前はイカロスとやれ。お前なら相性がとても良い」

「どういうこと?」

「お前は戦士の精神を重んじるだろ?だったらその心に聖遺物が答えてるはずだ。ここから先のことは実戦で見つけてみろ」

「何ごちゃごちゃ言ってる?こっちも本気出すから、本気で来いよ!」

 そう発したと同時にマキナが咆哮した。

「うおおおおォォォ!!!」

 体に纏ってる機械が反応を示し、巨大化していった。

「これはこの前の…」

「王都を襲った巨人じゃないか!」

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