死霊使い
「失礼…します」
「なッ!」
凜々とアリカはとんでもないものを目にした。
「あら?もう見つかっちゃったの。思ったより早かったな」
中肉中背の男が神或の胸に腕を突き刺していた。話し方に特徴はあるものの、オネエな感じは、まったくない。
「もうここには用はないわ。じゃね」
「待て!」
「なによ。あたしにだって時間はないの」
「貴様…何者だ!」
「んー。そうだなぁ。あなたも勘づいてると思うけど、【陰の不死英雄】よ、あたしは。その中の一人、『死霊使い』。ネクロマンサーよ。名乗るならアブラメリンね」
最も来てはいけない人が来た。それを言ったら…
「だったら!あなたのその力を使ってお祖父様を蘇らせて!」
「やなこった。なんで殺した本人がやんなきゃなんないのよ」
「ふざけるな!エクスカリバー!」
大剣が出現。
「うおおおおお!」
「愚か者。いや、『愚者』程ではないか」
グサッ。
「…!」
凜々が刺したのは、神或だった。
『凜々…』
「国王…!」
「あたしが『死霊使い』だってこと忘れたの?つい2分前くらいよ?」
「あんた!よりにもよって国王陛下を使うなんて!」
「なによ、あんた。急に出て来て。近くにあるんだから使わない手はないでしょ」
ドサッ……。
神或が倒れ、凜々が下敷きになった。
「これで邪魔はいなくなったわ。じゃあね」
靄がアブラメリンの周囲に現れ、包んだ。
靄が晴れると、アブラメリンが消えていた。
「アブラメリィィィンッッ!!!」
「もう…いいですよ。アリカ。お祖父様は死んでしまった…。でも、相手の情報は得られた。それでいいです」
神或から抜け出し、そう言った。
「でも…!」
「諦め悪ぃな、アリカ。本人がそう言ってんだから良いだろうが」
ガインはいつの間にか戻ってきていたらしい。
「あと、凜々。こんなものを見つけた。読んでみろ」
凜々はそれを受け取り、読み上げた。
「『ありきたりだが、これを読んでいる時、私はこの世にはいないだろう。これは魔法をかけていたから奴らに見つからないようにしていた。所謂【陽の不死英雄】の君たちにしか見つからないように。さて、本題だ。お前の持ってる物はエクスカリバーじゃない』。ってどういうこと…?」
「先を読み進めてみればわかる」
「『もちろん、『勇者』の力を引き出すことは出来るが、最大の能力は引き出せない。本物のエクスカリバーは円卓の部屋の更に奥のラボにある。パスワードは同じだ。行ってみるといい』」
読み切ると、凜々は壁にかけて行った。
『einherjar』とパネルに打ち込むと、壁に通路が出現した。
「おお、すげえな」
凜々が走って行ったので、ガインたちもついて行った。