寂しい思い
<地下都市>を掘り当てたことで、圭児と遥座は<英雄>として称えられることになった。それは彼らに対する当然の褒賞だった。
何しろ、その地下都市を成立させる為に設置された様々な制御装置の多くが再利用可能な状態だったのだ。これにより、折守市の機能が格段に向上する可能性が高まった。
加えて、ニュートと同規格のタブレットが多数発見され、これを各重要拠点に配置。加えて無線給電機も配することで、無線通信ネットワークが成立した。無線給電機は、無線通信の中継器も兼ねていたのである。数に限りがあるのでさすがに各家庭にまでは行き届かないが、それでも情報の伝達速度は飛躍的に高まったのである。
この功績は、浅葱が発見したひめとメモリーカードのことすら霞むほどのものだっただろう。
しかし浅葱はそれを妬んだりするようなメンタリティを持っていない。ただただ二人のことを祝福していただけだった。
だが同時に、二人の発見に伴い、ひめの<休日>がなくなってしまったことについては、心のどこかで残念に感じていたこともまた、事実だろう。
殆ど完全に剥がれ落ちてしまった人工表皮の修復にはさすがに時間がかかるので、二日間、メンテナンスカプセルの中で眠ることになった以降は、ひめはまったく休みなく坑道を掘ることとなる。
『確かに休む必要はないのかもしれないが……』
頭ではそう思っていても、やはり生身の肉体を持ち必ず休養を必要とする人間である浅葱には理解できないことだった。
『ひめ…お前は本当にそれでいいのか……?』
オプションとして与えられた装備を外し、メンテナンスカプセルの中で眠っているひめの見た目は、みるみる元の美しさを取り戻していく。それを見ながら、浅葱は胸の奥でもやもやするものを感じていた。
本音を言えば、もっとひめと一緒にいたかったのだ。
幼い頃に両親を亡くした浅葱にとっては重蔵が父親代わりではあったが、同じように自分の面倒を見てくれた開螺は、やはり母親というよりは姉のような存在だっただろう。しかし、ひめと共に暮らし始めてからは、決して意識はしていないつもりだったが、浅葱を気遣い優しく接してくれるひめに、母親の姿を求めてしまったとしても無理はなかったのだと思われる。
『私は駄目だな…こんな子供っぽい甘えが抜けきらないなんて……』
『ひめと一緒にいたい』という気持ちが自分の中にあることを自覚させられて、浅葱は自嘲気味に微笑んだ。
するとその時、
「浅葱様のお気持ちは、人として当然のものですよ…」
不意に目を開けて、メンテナンスカプセルの中からひめがそう言った。浅葱の表情や身体的な反応から彼女の<気持ち>を読み取ったのだろう。それがメイトギアの真価とも言うべき能力だった。
この世界の人間達のメンタリティが、ひめの知るそれとは大きく違ってしまっていたので最初は上手く読み取ることができなかったが、これまで一緒に暮らしてきたことで、少なくとも浅葱のそれについてはかなりの精度で読み取れるようになったのだ。
「浅葱様。寂しい思いをさせてしまって申し訳ございません」




