表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/129

辿り着いた空間

「……」


その日圭児(けいじ)は、不可思議な予感に自分の胸が湧きたつような気分を覚えていた。こんなことは生まれて初めてである。ついつい焦ってしまいそうになるのを抑えるだけで手一杯というほどだった。


氷窟を掘る手応えがこれまでと違う。明らかにその先に空洞がある手応えだった。音も違うのだ。


彼もこれまでに二度、凍土内の空間を掘り当て、遺物を発掘してきた。その一つが、彼が持つ超振動ナイフであった。


それを発見した時以上の手応えを感じるのだ。


そしてその予感は、現実のものとなった。


「これは……」


非常に硬い人工のパネルにぶち当たり、バールなどではロクに傷も付かなかった為、圭児(けいじ)はこの時とばかりに超振動ナイフを取り出し、パネルに当ててスイッチを入れた。用意した最新式のバッテリーでも使える時間は僅か三分ほど。その間に侵入経路を確保しなければならない。


独特の、聞こえるような聞こえないような<音>を立てつつ、ナイフがパネルを切り裂いていく。バッテリーの残量が心許なくなった頃、ようやく、人一人が通れそうな<穴>を開けることができたのだった。


その暗闇に照明を差し込み、中を照らす。


「うおっ!?」


そんな声が思わず漏れた。


なにしろそこに見えたのは、<建物>だったのだから。地下の空間の中に、建物があったのだ。更にありったけの照明を持って中に入り、照らし出す。


しかし、普通に一部屋くらいなら十分に生活できるほど明るくなる筈の光量にも拘らず、中の空間はごく一部しか照らせなかった。


「街…じゃねえか……」


そう。照明の灯りにぼんやりと浮かび上がり、彼の目の前に広がっていたのは、高さ数十メートルはあろうかという<ビル>が立ち並ぶ、奥行きはどこまであるのか見当も付かない、<地下の街>だったのである。


彼が呆然とそれを見詰めていると、遠くの方で物音がした。


「!?」


何事かと身構える彼の視線の先で、突然、<地面>から何かが突き出し、開いた穴から僅かに光が漏れるのが見えた。圭児(けいじ)のいる場所からは二百メートルほど離れているだろうか。それを見た瞬間、彼はピンときていた。


遥座(ようざ)…か?」


彼の直感は正しかった。地面から突き出たのは、遥座(ようざ)のハンマードリルであった。


地面、いや、明らかに<道路>として整備されたそこを小走りで駆けより、僅かに空いた穴から覗く顔は紛れもなく遥座(ようざ)だった。


圭児(けいじ)…!?」


驚いたのは遥座(ようざ)も同じだった。ようやく穴が開いたと思ったらそこに圭児(けいじ)の顔が見えたのだから。


圭児(けいじ)遥座(ようざ)は、ほぼ同時に同じ地下空間に辿り着いたのである。


「バッテリーを貸してくれ。こっちから侵入経路を開けてやる」


「お、おう…!」


遥座(ようざ)のバッテリーと自らの超振動ナイフを繋ぎ、道路を切り裂いていったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ