オプション
『お前はどうしてそこまでするんだ…!?』
ひめにそう問い掛けた浅葱だったが、その浅葱自身も、凍傷によって左手薬指を新たに失っていた。人間の為に己を犠牲にして尽くすひめに負けまいとして少し無理をしてしまったことが原因だった。それでも浅葱も砕氷としての仕事を辞めようとしない。
結局、それと同じことなのだ。それを自らの役目と思えばこそ、浅葱もひめも自らの体が壊れようとも<辞める>という選択はなかったのである。
だが、ひめの場合は人間と違って<オプション>という形で、失われた体の機能を補うことができた。
技術者達が、ひめの為に創意工夫して、新しい装備を開発してくれたのだ。
それが、彼女の背にあるオプション用のジョイントを用いて接続されている、バックパック型の機械である。
坑道に入り、子供達が見守る前で、ひめはその<装備>を作動させた。するとそのバックパックに沿う形で折りたたまれていた<副椀>が伸ばされ、坑道の壁を捉える。
細く長く、先にアンカーの役目もする爪を備えた四本の副椀を伸ばしたその姿は、どこか<蜘蛛>を思わせるものでもあった。しかも副椀で坑道の壁を捉えて自らの体を支え、かつそれを器用に動かして<三点支持>を維持しつつ坑道を上ったりもするから、ますます蜘蛛に見えてくる。
それは、かつてひめが地熱発電所の地下から回収してきたレイバーギアのサブアームを再利用して作られたものだった。
「これは…見た目はともかく非常に便利ですね」
技術者達が提示したそれが形になったものを背中に装備して実際に動かして見た時に、ひめはそう言って微笑んだ。事実、そのオプションを装備したことで、坑道内での作業効率が上がり、遅れていたスケジュールを取り戻しつつあったのだった。
二年で約二千メートル進むはずのところを千五百メートルしか達成できていなかったものが、これを使ってからはペースが大きく上がったのだから。
それだけではない。市長の舞華の号令の下、さらに技術者達はそれぞれの技術を磨き、なんとシールドマシンを作動させることにさえ成功してしまったのである。早くとも数十年かかると目されていたものを、たった二年で実現してしまったのだ。
もっとも、今はまだ電力不足で完全には動作せず、坑道を掘るところまではいっていない。だが、無数のケーブル類が繋げられかなり不格好になったとはいえ、機能を取り戻しつつあるシールドマシンがその能力を発揮することも、既に夢物語ではなくなっていたということであった。




