進路
「もう、大丈夫なのか…?」
五日ぶりに自分の前に姿を現したひめに、始閣がそう問い掛けた。その彼の横には、彼と一緒に残土の回収の作業に就いていた九縁と宗臣も立っている。彼らの瞳は、あどけなさも残しながら真っ直ぐにひめを捉え、彼女のことを案じていたのを隠そうともしていなかった。
「お心遣い、痛み入ります。ですが応急修理は無事に終わりました。従来に比べれば出力が下がってしまいましたが、作業を行うことだけなら十パーセント未満のロスで済みます。作業の効率化を図ることで補える程度で済むでしょう」
こともなげにそう言うひめに、子供達の間でホッとした空気が広がるのが分かった。
怪我などはそれこそ日常茶飯事だし、指を失ったりしていくらか作業に影響が出るという程度のことなら珍しくもないので、ひめが負うことになったハンデを深刻に捉えるという感性もなかったのだろう。
ともあれ、これで作業再開である。
ただ、始閣と宗臣、そして午後の作業を担当している蓮杖と角泉については、今週いっぱいでこの作業から外れることになる。四人は学舎を卒業し、それぞれ正式に仕事に就くことが決まっているからだ。
四人がこの作業を離れれば、始閣の妹である九縁が繰り上がりで子供達のリーダーとなり、新しい子供達四人が新たに作業に就くことも決まっていた。
ちなみに、始閣、宗臣、蓮杖はかねてからの目標であった砕氷を目指し、角泉は母親と同じ発掘品の調査・解析・保存の仕事に就くことになった。実は角泉と釈侍は、ひめが掘り当てた居住スペースの調査チームの一人、研果の娘であった。
母親と違って砕氷を目指してはいたが、母の同僚である石斗のことも尊敬しており、彼女が行っている美術品などの調査保全について関心を持つようになったことで、進路を変更したという訳だ。砕氷を目指していたのも元々は、埋もれた美術品などを発掘したいという目標があってのことだったのである。
こうして四人はそれぞれ進路を決めて、その道に進むまでの最後の時間をここで過ごす形になったということだ。
「それでは、行きましょう」
ひめがそう声を掛けると、始閣がトラックの運転席に、九縁と宗臣が助手席に、ひめが荷台に乗り込んで、坑道へと出発したのだった。




