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言われてみれば

「お前を治す手立てはないのか……?」


技術者らがひめの<筋繊維アクチュエータ>を調べている間、市長室に戻ってきたひめに、舞華(まいか)が縋るように尋ねた。


それに対してひめは、淡々と、


「おそらく、難しいと思われます……」


と応える。


すると舞華は、


「……」


がっくりと肩を落とした。


しかし……


「しかし、可能性は低いですが、確認してみたいことがあります」


ひめはそう告げた。


「なんだ……?」


彼女の口ぶりに、やはり縋るように視線を向けた舞華にひめは言う。


「地熱発電所の地下に、ロボットが残されている可能性があります」


「…! なんだと!? それは本当か!?」


ひめの思わぬ言葉に、舞華が思わず掴みかかりそうになる。


無理もあるまい。失われた技術はすべて永久凍土の中に秘められていると思ってきたものが、自分達の足下にあるかもしれないと言われれば。


そんな舞華にひめは説明する。


「この折守(おりかみ)市の基となる都市が建設された時には、おそらくロボットがまだ残されていたはずです。


その時点ですでに新しく製造する技術は失われていたとしても、私のフルメンテナンスが行われたのも同じ時期であるとするなら、少なくとも部品が残されていて、それを交換しメンテナンスする程度のことは行えたわけですから、私以外にもロボットがあり、それが地下都市建設に使われた可能性が高いと考えるのが自然でしょう」


「言われてみれば…そうかもしれん……しかしなぜ発電所の地下に……?」


「はい、私もこの折守(おりかみ)市を検索させていただきましたが、やはりロボットが残されていませんでした。これは逆に不自然ではないでしょうか。


ただ、その理由を推測することは可能です。この街にはロボット用メンテナンス施設も残されていませんでしたから、恐らく建設時にはこちらには設置できるだけの環境が整わなかったのでしょう。そのため、凍土内にその施設があったのだと思われます。しかしやがてメンテナンスも行えなくなり、次々起動できなくなってメンテナンス施設に放置されるようになった。


これが理由だと私は推測します」


「なるほど…だがそれが発電所の地下にロボットが残される理由になるのか?」


「はい。蒸気が充満した過酷な環境で人間が作業をするのは大変な危険が伴います。ですので、地下での作業はロボットが担当していたと考えるのが自然です。となれば、故障し回収もままならなくなったロボットがそのまま残されている可能性もあると私は考えました。


その確認のためにも、再度、発電所の地下に行かせていただけますか? 前回はまだ浅い部分でしたので、さらに深いところにまで行けば回収されなかったロボットが残されている可能性もあると思うのです」


「おお……」


ひめの申し出はすぐに承認された。さっそく地熱発電所へと赴き、耐熱防護服を借り受け、右手だけでそれを器用に身に着けて、ひめは再び発電所の地下へと赴いた。


前回よりもさらに深いところまで。


蒸気配管を設置するために作られた坑道を下りつつ、ひめは思った。


『以前、<海>に行った時に見た構造物から推測するに、あの向こうにも何かがある可能性はありますが、現時点でその調査をするのは、あまりにも危険すぎます。水深は深いところで数百メートル。


船を造って乗り出すとしても、万が一にも転覆すれば、水に浮かない私は再び陸上に戻ることは適わないでしょう。防水は完璧でもあくまでそれは日常レベルの話。水深数百メートルレベルの潜水作業は想定されていません。


そもそも、あの過冷却された水で船を走らせれば、途端に周囲が凍り付いて身動きが取れなくなる可能性が高いですし……』


なので、可能性があり、かつひめが行動可能な場所となれば、後はここ、地熱発電所の地下しかなかった。


しかも、蒸気の漏れはなくなったために温度はかなり下がっており、二百度まで上がっていたところも五十度程度に収まっていて、念のために耐熱防護服を身に着けてきたもののその必要もないくらいだった。しかしこれでも、現折守(おりかみ)市住人にとっては危険な温度である。


しかも下に下りれば下りるほど、温度も上がっていく。


そして遂に……


「ロボットを発見しました。レイバーギアと呼ばれるタイプのロボットです。私の修理に利用できるかどうか、確認します」


ひめからの無線が届く。


「おお~っ!」


管理棟で待っていた仁左(じんざ)天振(あまふり)らがどよめいた。


だが……


「結論から申し上げますと、今の私で降りられる最も深いところまで降りましたが残念ながら私の修理に使えそうなロボットは発見できませんでした。そこまでに五体のロボットが残されていたもののユニットの互換性がまったくなかった上に、長期間、高温多湿の環境に放置されていた影響で材質の劣化も進んでいました。ですが、今後の研究の資料になる可能性がありますので、比較的状態の良い物については一部回収していきます」


とのことだった。


その報告に舞香も、


「そうか……」


と消沈したが、ひめは、


「結果としては残念なものでしたが、しかしこれでやはり皆様が今後も存続を続けられる可能性は<上>にしかないと改めて確認できました」


回収したレイバーギアの精密作業用サブアーム四本をテーブルの上に置きながら言ったのだった。



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