集合体
「これはいったい、何がどうなってるんだ?」
「回路や回線はどうなってる?」
「信号はどうやってやり取りしてるのか?」
ひめの分解された左腕と取り出された<筋線維アクチュエータ>を熱心に覗き込みながら、技術者達は口々にそんなことを言っていた。無理もない。何しろ彼らが想像していた構造とは、まるで違っていたのだから。
以前発見されたものの完全に壊れていて動くことのなかった<メイト>、いや、メイトギアは、構造を調べる為に解体され、その時に得られた構造と確かによく似てるのだが、あちらは動作している状態が確認できなかった為、本当に動くものなのかどうなのか、調べた当時の技術者ら自身が半信半疑だったというのもあった。
ちなみに、発見されたメイトギアのうちの一体は、折守市の地熱発電所の敷地内にある倉庫に、廃材と共に捨て置かれていたものである。それらを技術者達は熱心に調べてきた。
しかし今、こうやって現に動作しているひめの構造に触れたことで、それが判明するどころか余計に理解できなくなってしまったのだ。
彼らにとって<機械>とは、非常に複雑な構造で無数の回路が繋がりそうして成り立っているものだという認識だったのだが、ひめのそれは、骨格に当たるフレームと、それを覆う<筋線維アクチュエータ>という非常にシンプルな構造であって、無数のコードが中を縦横無尽に駆け巡ってるというのとはまるで違ったのである。
だから分からない。これで一体、どうやって複雑な動きをする為の信号を送っているのかが。
だがそれは、完全に発想の違いによるものだった。シンプルに見えるのは、それぞれが非常に複雑な構造を持ったユニットになっていて、最終的にそれらを集めて意味のある形にしているからなのだ。
「この<筋線維アクチュエータ>そのものが、小さなロボットなのです。これ自体に微小な制御回路が組み込まれていて、互いに信号をやり取りし、連携して動作する。その小さなロボットの集合体が、私というメイトギアと言えるでしょう」
というひめの説明に、技術者達は茫然とするしかなかった。この小さな筋肉の模型のような部品そのものが一つのロボットであり、それぞれが完結し独立した機能を持っているのだと言われても、自分達にはそんな発想すらなかったからである。
かつて、<筋線維アクチュエータ>ももちろん分解されたが、一見しただけでは、こちらも金属的な光沢を持ちながらも樹脂製らしき繊維の集合体だということは分かるものの、繊維の一本一本に何らかの複雑な細工が施されているようにも見えるそれが何を意味するものなのかが皆目見当も付かないという状態だった。
しかしひめの説明で、その<複雑な模様>ものものが回路であり、極めて微小な部品の集合体であるということが判明したのだった。




