新技術への挑戦
ところで、この世界に残っている技術の保存については、ひめが回収したタブレット<ニュート>が大変活躍していた。ニュート自体がAIであり、実に丁寧に操作方法を説明してくれるので、技術者達の間を渡り歩いて、情報の全てを記録していった。そして一日の仕事を終えたひめに手渡され、家に戻ってからニュートがデータを書き込んだメモリーカードを自らに装着し、読み込んだ。
こうすることでメモリーカード、ニュート、ひめがそれぞれデータを保存する。これで万が一のことがあっても失伝を防ごうということだ。
ひめにとってはあまりにも稚拙と言っていい技術だが、逆にその所為で知らないものも数多くあり、ひめが本来持っている技術がここで再現できない以上は、今ある技術の継承を確実にすることが望まれていた。
それと同時に、技術者達は、それぞれが持つ技術を結集し、シールドマシンの復活を計画した。
ひめが解析したシールドマシンの基礎的な構造をメモリーカードに書き込み、それをまたニュートで読み込んで技術者達に提示した。ニュートがリンクできるプリンターがあれば早いのだが、残念ながら現在のプリンターにはまったく接続できない為、技術者達は自ら模写し、それを基に再設計を始めた。
しかし……
「くそ…! 構造が全く理解できない」
「どうしてこんな回路が成立するんだ?」
「この部品はどういう働きをしているのか?」
などと初手から躓き、頭を抱えた。だが、ニュートやひめのアドバイスを受けながら一つ一つ解析していく。
それはもう、小枝を組み合わせて本物の<城>を築こうとするかのような果てしない作業だったが、彼らとてこの世界においては<優秀>とも称される技術者であるが故に、先人達が到達した域に少しでも近付きたいと熱意を燃やした。
そうやってシールドマシンの構造を解析するチームがあるかと思えば、それを動かす電力を生み出す為、地熱発電所の出力を増加させる計画に就いた者もいる。こちらは、先だってひめより提案された、小型のタービンを複数増設し、不具合のある従来のタービンと置き換えるという計画をさらに進めて、大型タービン一基分に相当する複数の小型タービンを増設することとなった。
だがその為には、蒸気をタービンに送る為の配管も増設しなければいけない。幸い、それに使えそうな高品質の配管は既に発見されており、こちらに充当される。
これらはみな、何十年という時間を費やすことになるであろう遠大な計画であるが、旧来の技術を何とか維持することによって延命を図ってきただけの彼らに、<新しい技術>に積極的に挑戦するという気持ちを起こさせたことが大きなことであったのだろう。




