日常の業務
自分に甘えようとする浅葱を受け入れつつ、ひめは坑道の掘削を続けた。もちろんそれは、始閣、九縁、宗臣、蓮杖、角泉、釈侍ら六人の子供達に手伝ってもらってである。
まず水平に掘られたそれは最終的に奥行き五十メートルに達した。
『ここまで掘れば大丈夫ですね』
ひめは自らのセンサーを最大限に活用して人間達が暮らす地下空間に与える影響を計測した。それによれば本来なら二十メートルも掘れば十分だったものを安全マージンを考慮して倍以上確保した。そしていよいよ、垂直に上に向かって掘り進める。その為に必要なものも手配してもらった。
トラックによって運んできたそれは、坑道内に設置する梯子と滑車とワイヤーだった。
梯子はもちろん、坑道を掘る際の<足場>として設置するものだ。そして滑車は、ひめが坑道を上り下りする時に使う。と言うのも、十メートルや二十メートルなら梯子を使って上り下りしてもいいのだが、それ以上となってくると時間がかかってしまう為、坑道の上部に滑車を設置し、それにワイヤーを掛けて重りを繋げ、それに掴まって上下するのだ。
下りる時は掘削した凍土を入れた残土袋を持って重りより重くして下りて、それを下で固定し、上る時はワイヤーを掴んで重りによってひめを引き上げるという訳だ。簡易のエレベーターとも言える。
人間が利用するには危険極まりない方法だが、彼女はロボットなのでその辺りは人間よりずっと緩くても問題ない。万が一があったとしても彼女なら対処できるからだ。壊れてしまう訳にはいかないが、多少のことなら怪我もしない。
「それでは、行きます」
坑道の<壁>に固定した梯子を足場にして、ひめは天井部分の掘削を始めたそれによって出る残土を、午前の担当である始閣、九縁、宗臣がシャベルで残土袋に入れ、坑道の外に運び出す。すると外には、ここまでの間に市の技術者らによって設置されたコンベアがあり、そこに乗せれば林の外の残土集積所に搬出されるということである。それは坑道内にも延長され、いちいち担いで坑道の外まで搬出する必要もなくなる筈だった。
完全に、ひめの坑道掘りが日常的な<業務>となっていたということだ。
その一方で、市の技術者達は、先日発見されたシールドマシンの復活に向けて挑戦を開始していた。と言っても、まずはその構造を把握するところから始まったが。
ひめもさすがにシールドマシンの構造を詳細に知っている訳ではなかったからである。




