痛々しい
『このシールドマシンを再度使用できる状態にすることは極めて困難と判断するしかありません』
ひめのその判断は、彼女だけのものではなかった。ひめの言ったことを検証する為に派遣された技術者も、
「正直、今の我々では手に負えない代物だ…」
と結論を出すしかできなかった。
「…そうか……」
その報告を受けた市長の舞香の落胆ぶりは、痛々しいほどだったという。だが同時に、技術者達はこうも言った。
「今現在の我々ではどうすることもできないが、これからもという意味じゃない。ひめだけに任せて我々はただ彼女に助けてもらうだけでは技術者の名折れだと思う。我々に時間を与えてくれ。挑戦もせずに諦めるのは死んだも同然だ」
こうして、ひめが地上に向けての坑道を掘る一方で、シールドマシンを甦らせる計画がスタートした。
はっきり言って、ひめの予測では実現の可能性は限りなく低いと算出されたものだった。
『私に任せておいてくだされば結構ですのに…』
そんなことも思うが、人間がそうするというのだから彼女にはそれに異を唱えることはできなかった。
『私は私の役目を果たすのみです……』
そう考え、ひめは坑道を張り進めた。
それ自体は非常に順調だったが、手袋をしていてもひめの手は見る間に傷んでいった。表皮の部分が剥がれ落ち、人間の真皮に当たる層が剥き出しになっていく。
表皮の部分はあまり強くないが、それを支える真皮の部分は高い強度を持っていて、それについては簡単には傷まなかった。ただし、表皮の部分が人間的な温かい色合いになるようにピンク色に染められたそれは、見た目にも皮膚が剥がれたように見えてしまって痛々しい印象を与えた。
「痛くないのか…?」
坑道の掘削により出た残土を搬出する役目を任されていた子供達のリーダーである始閣が、一日の作業を終えて帰る時に手袋を取ったひめの手を見て、そう訊いてきた。心配しているのだとすぐに分かった。
「心配していただいて、ありがとうございます。ですが、私はロボットです。痛みは感じません。私の機能は現在、ほぼ百パーセント健全です。皆さんのおかげで作業も順調です」
そう言って微笑む彼女に始閣達は安心したが、家でひめを出迎えた浅葱は必ずしもそうではなかった。
「それはつまり壊れてるっていうことだな…?」
機能には問題がなくても、本来の健全な状態ではなくなっているのなら、それはやはり<壊れている>と言えるだろう。浅葱はそう言っているのだった。




