懸念
渋詞らによってシールドマシンが発見されたことは、本日の掘削を終えて浅葱の家に戻ったひめにもさっそく伝えられた。
「シールドマシンですか…?」
「そうだ、このシールドマシンが使えれば、お前が坑道を掘らずともそちらで掘ることができる! しかも聞けば全自動だと言うではないか! 光明が見えたきたな!」
テレビ会議でそう興奮気味に話す市長の舞香だったが、ひめはあくまで冷静だった。
「それでは明日、私もそちらのシールドマシンについて確認しに行ってよろしいでしょうか?」
「おお、おお! 是非とも確認してくれ! どの程度で使えるようになるものか分かるとありがたい!」
「分かりました。それでは明日、さっそく確認させていただきます」
そう言ってテレビ会議を終わらせたひめが部屋の中で佇んでいると、不意にドアがノックされた。
「いいか…?」
浅葱だった。『入っていいか?』と訊いているのだ。
「はい。どうぞお入りください」
立ち上がりながらひめが応えるとドアを開けて浅葱が顔を出した。そして問い掛ける。
「話は聞いた。氷窟を掘る為の機械が見付かったそうだな…?」
「ええ、そのようです」
ひめが静かに応えると、浅葱は「そうか…」と呟いた。しかしその表情から伝わってくるものは、決して舞華のそれのように興奮しているとか喜んでいるとかというそれではなかった。
「何か、気になることでもあるのでしょうか?」
浅葱の表情に気付いたひめが気遣うように尋ねる。
「……」
やや視線を落としすぐには応えなかった浅葱だったが、ひめが穏やかに見詰めながら待っていると、やがて何か意を決したかのように言葉を発した。
「その機械があれば、私達のような砕氷は要らなくなるんだろうか…?」
それは、浅葱の正直な疑問だった。ひめが氷窟を掘り始めた時にも感じたことだったが、それでもひめ一人ならまだ自分達がすぐ不要になるとまでは思わなかった。だが、氷窟を掘る為の機械まで見付かったとなると、その為の機械ではなかったひめでさえ自分達とは比べ物にならない速さと正確さで氷窟を掘るのだから、それこそ必要なくなってしまうのではないかと感じたのだ。
「浅葱様……」
不安のような、悲しみのような、何とも言えない表情で自分を見詰める<少女>に、ひめは静かに首を横に振った。
「いえ、心配には及びません。何故なら、その機械はおそらく使えないからです……」
「…え……?」
ひめが口にした意外にな言葉に、浅葱の表情はさらにあどけない子供のようになったのだった。




